【SF小説】灰色の死神 第2話『カルン侵攻作戦』
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一度はアルヴェリアに領土奪還を許したザイレクだったが、兵力に差が生まれなくなった今、戦況は膠着している。
強さイコール資金の差である戦場では、ヴォルカに全面的な支援を貰っている、我が国の方が圧倒的な力を持っているのは言うまでもないだろう。
その為、奴らに奪還された領土へ再侵攻をかける判断を行うのに、そう時間は必要なかった。
しかし、我々は思い知ることになる。
時に、資金以上に技術力がものをいう場面が来るということを。
アルヴェリア南部、山岳地帯の森の上を、低空で飛行する輸送機が一つ。
その輸送機には、ザイレクの国旗が描かれており、見る人が見れば、侵攻作戦の始まりが近いということがわかる。
かつてはアルヴェリアの領土であったこの地帯も、現在はザイレクの占有地だ。
その為、機内に漂っているのは、敵地を飛ぶという緊張感ではなく、「今度こそ叩き潰す」とでも言いたげな、妙な自信と高揚だった。
本部隊の構成は、隊長のヴィクターを中心に、ダリオ、ライナー、マルクス、エリオットの5人で構成されており、全員がフレームアーマメントを駆るエリート部隊である。
「では、ブリーフィングを始める。本作戦の要となる都市カルンは、初期の交戦で現在廃都市となっている。倒壊している建物も多く、視覚確保は困難だ。」
ヴィクターがそう切り出すと、マルクスが答える。
「えぇ、それでこの熱源感知カメラを使うんですよね?」
「あぁ、そうだ。」
「熱源が感知できたってことは、もしかしたら一般人もいるかもしれないですよね?どうしたらいいんでしょう?」
新人のエリオットが、おずおずと問いかける。
「一般人だぁ?んなもんいるわけねぇだろ!大体なぁ、出撃前にドローン映像しっかり確認してなかったのか?あそこには軍人しかいねぇ。だから、見つけ次第一斉掃射だろが。ですよね?隊長!」
ダリオがエリオットを嗜め、ヴィクターへ同意を求める。
「その通りだ。エリオット、映像は確認したのか?」
「はい、一応確認はしたんですけど。一般の服を着た人もいたので、ちょっと確認したくて。」
「わからないことを質問するのはいいことだ。しかし、疑問は出撃前に聞いて欲しかったな。」
「す、すみません!」
「次回からはそうしろ。軍人が一般人の振りをするのはよくあることだ。覚えておくといい。」
「見分け方はあるのでしょうか?」
「……身のこなし。あらゆる所作に出る。」
ライナーが間に入り答える。
「なるほど、……実際にはどんな感じなのでしょうか?イメージが湧かなくて。」
「…………経験を積めばわかる。」
「…経験ですか。…………わかりました。」
「お前、全然わかってねぇだろ?なんというか、節々に軍人らしいキビキビ感が出てるんだよ。見てりゃわかんだろ、見てりゃあ。」
「お前達、そろそろ作戦行動区域が近い。準備をしろ。敵のFAも待機しているだろう。まずはそこを探り次第、見つけたら周辺ごと吹き飛ばせ!各自警戒を怠るなよ!!」
「「「「「サー!!!」」」」」
各々が返事をすると、大型輸送機に積まれたそれぞれの機体へ乗り込んでいく。
森を抜け、FAが降りられる場所へ辿り着いたのち、5機のFAが投下され、作戦が開始された。
廃都市カルンまで到達するには、さほど時間は掛からなかった。
しかし、熱源カメラで索敵を行うが、熱源反応が見当たらない。
ステルス性能が格段に上がっている現代では、かなり接近をしないとレーダーに反応しないが、念の為レーダーを使ってみるも、やはり反応はない。
「隊長、おかしいです。反応が全くありません。」
訝しげな声をあげるマルクスに、ヴィクターは答える。
「あぁ、何かの罠かもしれん。迂闊に近づくな!」
すると、エリオットが焦ったように叫び出す。
「隊長!あそこ!上空にFAがいます!どうすれば、」
そこでエリオットの通信は途絶える。
何が起きたのかと、エリオットのいた方を確認するまでもなく、大きな爆発音と、爆風が部隊を襲った。
「エリオットォォォオオ!!!」
叫びも虚しく、あたりはFAだった残骸が散らばっている。
この様子では助からないだろう。
先ほどFAが出現した地点を目視するも、もう姿はない。
あの地点から、恐らく4km程はあるだろうが、ここまでの精密射撃を実現するなど、人間の所業ではない。
通常、フレームアーマメントの装甲は、大口径のライフル弾でも弾くほどの強度を持っている。
更にはあの距離である。
弾の威力は減衰しているだろうに、一撃で撃墜されるということは、装甲の薄い部分に直撃させたとでもいうのだろうか。
そして、薄い装甲を貫かれたと言って、爆発するとは思えない。
この場での現場検証は困難だが、これが偶然なのか、はたまた必然なのか。
どちらにしろ、油断など一切できない相手だ。
「クソ!!あの野郎!ぶっ殺してやる!!!」
「待て!ダリオ!陣形を崩すな!!」
「でも隊長!エリオットがやられたんだぜ?!黙ってられるか!!それに、ここじゃアイツのいい的だぜ!!」
「確かに、そうだな。よし!お前達、カルンに入るぞ!遮蔽物を利用しながら侵攻しろ!索敵を怠るな!」
「「「「サー」」」」
俺たちはまだ知らなかった。
数の優位とは、技量で一瞬で崩れるものだと。
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