見出し画像

【SF小説】灰色の死神 第4話『侵攻の代償』

前回こちら!

 アッシュは、イリーナから送られてきた敵位置の最新情報を確認すると、敵の位置を示すビーコンは、少し開けた大通りを、2番、1番、3番の順で、進んでいるところだった。

 恐らく、先ほどまでオルカヌスがいた地点を目掛けて慎重に進んでいるのだろう。

「はぁ、あれがFAの動きなの?期待外れもいいところだわ。あたしの後輩の方が、もっとマシな動きするけど。あれじゃあまるで、奇襲を掛けてくださいと言っているようなものじゃない。ザイレクの兵士はお粗末ばかりね。」

 イリーナが憤りと嘲りを込めて、吐き捨てるように言う。

「…そうだな。…接近する。」

「何か言いたいことでもあるわけ?」

 一瞬の逡巡を嗅ぎ取ったのか、イリーナがムッとした声を出し、突っかかってくる。

「何でもない。」

「何でもないなら、何か言いたげな雰囲気出さないでくれる?………だって、許せないじゃない。…あいつらさえ来なければ……。」

 後の方は尻すぼみで何を言っているかわからなかったが、悔しそうな雰囲気は感じた。

「…行ってくる。」

「えぇ、行ってきなさい!………攻め込んできたことを後悔させてやるのよ。」

「あぁ、………わかってる。」

 オルカヌスは、先ほどよりも少し広い道を、先ほどよりも速い速度で距離を縮めていく。

 その轟音は、相手に恐怖を植え付けるには十分だった。


 そんなバカな!

 先程、後方狙撃支援のため、別行動を取り始めたライナーの機体反応が消失し、その瞬間爆音が轟いた。

 まさか、エリオットのように狙撃されたのか? 
 相変わらず熱源感知には反応はなく、レーダーにも映らない。
 それでも迫り来る敵影を感じ、背筋が薄寒くなる。

 あのFAがいた地点まで、ここからそう遠くない。
 恐らく、あと1分もすれば接敵するだろう。

 が、頭の中の何処からか、このまま進めばとんでもないことが起きるかもしれないと、警鐘が鳴り響いている気もする。

 自身の判断に明確な確証を持てなくなった、そんな気がしてしまうのだ。

「なぁ、隊長!ライナーがやられちまったぞ!!どうすんだよ!このままでいいのか?!」

 ダリオの声は、少し恐怖に上擦っている様子だ。
 パニックの一歩手前なのだろう。

 当然だ。
 これほどの短時間に、2機のFAを落とすなど聞いたこともない。

 俺たちは、既に奴の狩場に迷い込んでしまっている。
 ここで引き返しても、逃げ切るのは不可能だろう。

 それに、あれを生かしておくわけにいかない。
 あれを帰してしまえば、ザイレク軍にとんでもない被害が出ることになるだろう。

 その結果だけは、何としても避けなければならない。
 あれは、膠着状況を一気に崩しかねないバランスブレイカーだ。

「落ち着け、ダリオ。相手もFAである以上、必ず熱源感知には引っかかる。焦って動こうとするなよ?」

「あぁ、………わかったぜ。とりあえずこのまま索敵しながら進めばいいんだな?……あんたの言うとおりにする。」

 すると、後ろでマルクスが、恐慌状態に陥った声で、金切り声を上げる。

「た、隊長!!後ろから、信じられない速度で何かが迫ってきます!!!……来る、来るなぁああああああ!!!?」

 マルクスの示す方へ向き直ると、確かに何かが急速にこちらへ迫ってくるのがわかる。
 あれは、先程エリオットを狙撃したFAか!

 マルクスの機体が、ライフルを腰ダメ撃ちで乱射する。が、敵機は左右上下にブーストで振り、全く当たる気配を見せない。

 そんなことをしているうちに、瞬く間にマルクスへ接近され、上下真っ二つに両断されてしまった。
 マルクスの機体もまた、激しい爆発を残し、金属残骸へと化してしまう。

「貴様ぁぁぁぁああああ!!!!」

 マルクスを両断した機体は、勢いを殺さず、我々を通り抜け、あり得ない慣性制御で振り向き、両肩からミサイルを撃ち放ってくる。

「おい、……おいおい、聞いてないって!!こんな化け物がいるなんて聞いてな、」

 ダリオからの通信も途絶え、爆発が起こる。

 何なんだ、一体。
 俺たちが何をしたと言うんだ。

 なぜ、こんなにも簡単に、無惨に命を奪われなければならない?

 これは、戦闘などではない。
 一方的な虐殺だ!!

 帰ったら、あいつらと酒を飲む約束をしていた。
 そうだ、こんなのが現実であっていいわけがない。
 目が覚めたら、侵攻作戦の前…………そうか、俺たちが侵略者だったか。

 気がつくと、敵FAは目の前まで迫っており、恐怖に腕がすくみ、コントロールハンドルから手を離してしまう。

 すると敵機は、あろうことか、コックピットにライフルを突き立ててきたのである。

 眼前に迫る超大口径ライフルの銃口は、俺の身長よりも大きい。
 目の前に突如現れた死のトンネルは、鼻が曲がるような硝煙の臭いがした。

 死の気配に全身に極度の震えが走る。
 頭を抱え懇願するように叫ぶ。

「嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!死にたくない!!!」

 次の瞬間、俺は侵攻の代償を払うこととなった。



「さっき、あんなこと言ってたあたしがいうことじゃないと思うけど、……あんた、やることえげつないわね。血通ってないんじゃない?」

「……あぁ、そうだな。」

 アッシュを非難し、煽るような物言いだったが、彼は無感情に答え、その様子にイリーナはつまらなそうに、そして悔しそうに呟く。

「まぁ、敵地を犯すんだから、当然の報いだものね。……本来ならあたしが…。……はぁ、もういいわ。…アッシュ、輸送機を送るから帰還しなさい。」

「…あぁ。」

かくして、アッシュ・クローヴィスとイリーナ・ストラウスの初陣は、作戦の成功とともに幕を閉じた。


普段は、考察系のnoteを投稿しています!
こちらの記事、おすすめなのでもし良かったら、是非ご覧ください!
スキ・フォロー・コメントお待ちしております!

いいなと思ったら応援しよう!