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変な時間に起き、朝定食を食う

たまに変な時間に目を覚ますことがある。
あるいは眠れずにその時間を迎えることがある。
その時間とは早朝で、午前5時のことだ。

僕は食事をおろそかにする悪癖があり、食事の時間もバラバラなのだが、たまにこの時間に究極にお腹が減ることがあるのだ。
もはや飢餓とでもいうべき状態で、何か食べないといられなくなる。普段は空腹を耐えるのは簡単なのだが、この時ばかりはどうしようもない。眠ることなんてできないし、何かに集中することもできない。
とにかく腹に何か入れないとヤバいのである。

そういう時、僕は寝間着姿のまま財布を持って外出する。
行先はコンビニではなく、近所にある松屋だ。

知ってる人にとっては常識だが、吉野家や松屋、すき家、なか卯などのチェーン店には朝定食を出している時間がある。朝5時から11時までの間、朝食らしくて安くて美味しいメニューを提供してくれているのだ。
安い居酒屋を福祉と呼称する人がいるが、酒が飲めない僕にとってはまさに朝定食が福祉となる。

とまぁ、朝定食目当てで松屋に向かうわけだが、意図していなくても朝の散歩は心地いいものだ。
昼は蒸し風呂のように暑いから外出を控えているが、朝はまだ生ぬるい程度の温度で、比較的歩きやすいし、風が吹くと少し気持ちがいい。
夜でも朝でもない、曖昧な時間には道に人の姿もなく、道路を独り占めしている感覚も悪くない。

そんなこんなで早朝の散歩を満喫しつつも、早足で松屋に向かう。
なぜなら腹が減っているからだ。もちづきさんほどのダッシュはしないが、頭の中は常に朝定食でいっぱいだ。


ここまでではない

さてここで、朝定食の話をしよう。
松屋には朝定食にも複数の種類、組み合わせが存在する。
目玉焼きとソーセージの定食や、それをダブルにした豪華な定食、いかにも朝食用の食材を使った丼物などさまざまだ。
松屋に向かう道中では、今日はどのメニューにしようかをずっと考えている。たいていは同じ物を頼むのだが。

10分くらい歩くと、目的地の松屋が見えてくる。
車通りも少なく、窓から覗ける店内にはまばらにしか人がいない。
誰もいない時もある。今日は誰もいないから貸し切り状態のようだ。
僕が行っている松屋は定食のご飯おかわり無料なので、リーズナブルに至ることができる。ありがとう松屋フーズ。

さて、入店したら券売機で食券を買うことになるが、僕が買う物はすでに決まっている。
というか、いつもそれしか頼まない。

僕のお決まりのメニューは『Wで選べる玉子かけごはん』だ。
定食とついてないが立派な定食扱いで、この店舗ではご飯おかわり自由だ。
僕はいつも特盛ご飯を2杯たいらげる。
350円で大満腹になるので重宝している定食だ。

松屋公式より引用

基本的にはミニ牛皿と生卵となるが、小鉢の内容は選ぶことができる。
まず1つは、生卵と温泉卵?の選択肢だ。
僕はTKGにして食べるので、その関係で毎回生卵を選ぶ。ここは悩まない。

しかし、悩むのがミニ牛皿の方だ。
なんとこの牛皿、国産のとろろに変更することもできる。
とろろ大好き人間にとっては非常に悩ましい所なのである。

ここの選択次第で、1杯目のご飯のルートが変わる。

牛皿に七味をかけて、甘辛な味でいただくか…
はたまた、醤油をたくさんかけたとろろごとかっこむか…
言い方を変えれば朝からこってりご飯か、朝らしくサラッといけるご飯か…

好みで言えばとろろだが、2杯目のご飯はTKGでいただくことが確定しており、こうなると醤油の味が被ってしまう。
その点、牛丼はなかなか食べないので、牛皿は新鮮な味が楽しめる。
七味をかければ刺激も増すし、ひたひたの玉ねぎでもご飯がかっこめる。

そう、メニューまでは即決なのだが、いつもここで迷うのだ。
とろろか、牛皿か…。
迷った結果、今回は牛皿にして、追加で朝得サラダをつけることにした。
350円にプラス100円かかるが、たまには贅沢してもいいだろう。
このサラダが加わることにより、これまではできなかった新しい挑戦が可能になるのだから。

店内に入る。
ヒヤッとした冷房の空気が気持ちいい。
朝の比較的涼しい時間とはいえ、10分も歩くと汗ばんでくるから、強めの冷房は助かる。

定食を待っている間に、セルフの水を確保する。
松屋は水と玄米茶があるが、どちらにするかはその日の気分による。
その日はなんとなく水にした。玄米茶も美味しい。

誰もいない店内で水をすすっていると、自分の食券番号が呼ばれる。
特盛ご飯とみそ汁と、ミニ牛皿と生卵とサラダ…、最高の朝食である。

トレイを持って席に戻ると、僕はシミュレーションした食べ方の遂行に入る。
まず、調味料の胡麻ドレッシングをサラダに大量にかける。それこそ、家では恐れ多くて使えないような量をたっぷりとかけさせていただく。
ごめんよ松屋フーズ。

そして、胡麻ドレの味でひたひたになったサラダで熱いご飯をいただく。
初の試みだったが、これが想像以上に美味い。
ご飯の熱さがサラダの冷たさで中和されるため、猫舌の自分でも食べやすい塩梅になるのもGOODだ。そもそも、豚しゃぶなんかも胡麻ドレで食って飯をかっこむのだから、サラダでも胡麻ドレ味で飯が食えると思ったが、大正解だった。

たまに味変として、牛皿の小さい肉や玉ねぎでもご飯を食べる。だが、1杯目のおかずの主役はあくまでサラダだ。牛皿の無駄な消費は抑えたい。
こうして、サラダで1杯目のご飯の大半を消費することで、新しい道も見えてくる。

特盛のご飯は3分ほどでなくなり、おかわりをもらいに行く。もちろん特盛だ。今回は2杯目のご飯の食べ方を少し変えていく予定なので、本番はここからである。

まず、お約束通りに小鉢に生卵を割り、少し多めに醬油を垂らしてかき混ぜる。ご飯の中心を箸で凹ませて、そこに生卵を流し込んでまんべんなく混ぜる。綺麗な色になったご飯に、残しておいた牛皿を汁ごと乗せ、そこに七味をかける。

これで、レギュラーメニューにもない『TKG牛めし』が完成する。
これが大正解で、非常に美味かった。
醤油の味はもちろんだが、牛肉と玉ねぎの甘辛い味も非常にTKGに合っているし、アクセントの七味も絶妙だ。スプーンを口に運ぶたびに『Wで選べる玉子かけごはん』への感謝が湧き上がる。

選べる小鉢のなんと偉大なことか。
とろろと卵を1杯のご飯に濃縮して贅沢に楽しんでもいいし、それぞれで1杯ずつご飯を食べてもいい。かと思えば牛皿にして、スタンダードに疑似牛めしを楽しむこともできれば、このように創作メニューを楽しむこともできる。このご時世に350円でこの可能性、選択肢とワクワクが買えるのは嬉しい限りだ。(今回は450円だが)

食事時間は15分くらいだっただろうか。
空腹のせいもあってか、特盛ご飯2杯であっても、いつもあっという間に平らげてしまう。
完食後は、残った水を喉に流しながら店内をぼんやりと眺める。

僕が入店してから食べ終わるまでに、チラホラと客が入ってきていた。
午前5時過ぎ、この時間帯に松屋に来るのは、だいたいがこれから仕事という風情の人たちだ。
会社の制服と思しき格好で、僕が頼んだよりも少し豪華な、目玉焼きソーセージの定食やら焼鮭定食やらにがっついている。
きっと、仕事前のエネルギーチャージなんだろう。

店内にいる全員に心の中で『お疲れ様です』と声をかけてから、食器を片して店を出る。6時台や7時台になってくると、また客層も変わってくるが、僕はこの5時台の店内が最も好きだ。
色んな仕事をしている人が一瞬だけ交錯していて、自分もひっそりと社会の一員になっているような気がするからだ。もう少し若い頃は、その感覚を求めてカプセルホテルに泊まったりもしていたものである。

店を出ると、行きよりも少し空気が暑くなっていた。
これから日が昇ると、また地獄のような暑さが襲い掛かってくる。
なるべく被害を受けないように、そそくさと家を目指した。


とまぁ、7月と8月は生活リズムが崩壊しすぎて、こんなことをする朝が7回くらいあった。早起きしすぎた時も、夜更かししすぎた時も松屋の朝定食を食べていた。

そんなこんなで9月に入ったが、最近はそこまで夜更かしもしていないし、極端に早起きにもなっていない。なので、9月はまだ松屋の朝定食を食べていない。
生活リズムが改善されたのは嬉しいが、松屋タイムがなくなったのは少し寂しいものがある。

そういえば、9月末までのクーポンが残っていた。
これを使えばポテサラとかキムチとかの小鉢が無料でつくのだ。
350円の定食の可能性がさらに広がるに違いない。

しかし、最近は朝5時に飢餓感に襲われることがない。
それはいいことなのだけど、クーポンを使った新しい可能性定食を食べられなさそうなのが、少しだけ残念でもある。

長々と書いてみたが、ここではたと気がつく。
悲しいことに、今年の夏の思い出はこれくらいしかなかったことを。


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