優しい別れを目指して
私は人間関係を切るという行為が非常に苦手です。普通なら速攻で手を切るべき有害な相手、苦手意識を植え付けられた相手とも、なんだかんだでズルズルと関わり続けてしまいます。
優しさではありません。これは私の弱さであり、どうしようもなくダメな部分でもあります。
とはいえ、これまでに私は何度か人間関係をぶっちぎってきました。その手法というのは、ある日突然連絡をすべて断ち、逃げるというものです。人間関係リセット症候群というやつですね。
対象は前職の人間などが該当するでしょうか。ヘラヘラとその場にいた人間が、ある時を境にいきなり消失するので、彼らはビックリしたことでしょう。
私は危害を加えてきたり、ストレスを与えてきたりする人間とも何となく関わり続けてしまうわけですが、どこかで静かに限界を迎えてしまうのです。
本来ならその場その場で指摘すべき、相手の不快な点を放置し、ひたすらに鬱憤を溜め、限界がくると逃げ出してしまうのですから、相手にとっては寝耳に水でしょう。これまでリセットで切り離した人たちに対しては申し訳なく思います。
しかし、どうしてこう、私は中途半端に甘いんでしょうか。理性では離れるべきとわかっていても、なかなかそれが出来ないのです。
私が居なくなった後、相手がどうなってしまうのかを考えた結果、空元気を出して関わりを続けてしまうのです。それがどんなに、相手にとって残酷なことであろうとも、私は反射的に愛想笑いを浮かべてしまいます。そうして、ダラダラと交友を続けてしまうというわけですね。
なんともひどい話です。私が意志を主張していれば丸く収まるかもしれないのに、保留に保留を重ねることで、どんどん取り返しのつかない事態に発展していくのですから。
他人に対する中途半端な優しさは、思い切って捨ててしまうのが得策なのでしょうね。
聞くに、健常な皆さんはこの切るべき人間と切らないでおくべき人間の選別を息をするようにできるそうですね。新しい出会いの回転率が高く、また自分が相手をジャッジできるという、確固とした自信があるからできるのでしょう。私はそういう健常者、少し古臭く言えばリア充に該当する人間が嫌いでした。しかし、人間関係の選別という技術については、学ぶべきところが大いにあると感じました。
私にも、人と適度に距離を置くとか、関係を切るとかの能力が必要なのです。
とまぁ、これで結論は出てしまった訳ですが、実際に人間関係を切るという行為は、私には非常に難しいものでした。
長くいればいるほど、相手への情が形成されていきますし、自分が居なくなった後の相手を想像すると胸が痛むのです。その相手がいかにこちらを傷つけ、心を消耗させ、お金を奪っていったとしてもです。
要は、私は甘いのだと思います。
その甘さに報いてくれて、時にはお返しもしてくれるような相手なら、一生ともに生きようとも思えます。しかし、甘さを利用して搾取する人間とは、長くは一緒にいられません。
仮に搾取した相手が改心したと申告してきても、たぶん私は受け入れられないでしょう。なぜなら私は、そこまで成熟した人間ではないからです。
私を精神障害者にし、金銭を盗み、殴り、家を破壊した兄に対しても、私は受け入れることはできないと思います。
失った信用を取り戻すのは、最初に信用を勝ち取る以上に難しいといいます。私もこの言葉には同感です。
さらに私はそれ以上に、信用をなくした相手に対して、拭いがたい拒否反応を起こしてしまいます。その相手から、かつて受けた被害を匂わされると、心臓が凍りついてしまうのです。
だから私には、一度信用できなくなった人間と元通りになるようなことはできません。
それはきっと、私が優しくない、冷たい人間だからなんでしょう。もっと言えば、悲観的で臆病なのです。
危害を加えてきた人間がいくら改心しても、すべてが直るわけじゃありません。どこかに、私を凍りつかせる要素を持っているわけです。私には、それを指摘して、相手とのすり合わせを行う度量がありません。
スッパリ切ることも出来ず、折り合いをつけることも出来ず、一人で傷を抱えて、ある日突然消えてしまうのです。
なんと卑怯で中途半端で残酷な行為なんでしょうか。この歳になっても直らない悪癖に、自分でも絶望している次第です。
今日も、そんなことを考え続けていました。切るか切らないか、切った場合、自分や相手はどうなるのか、考えがまとまることはついにありませんでした。
しかし、いつまでも悩み散らかしている訳にも行かないのです。
色んな行動を起こし、人と出会うという営為を行うには、先述した技術は必須のものとなります。それに、喫緊で決断する必要のある事柄も存在しています。
今の私はすっかり悲観的で弱り果てていますが、ここからだけは逃げちゃいけないと思っています。
自分のためにも、相手のためにも、優しい別れが必要なのです。
いつになるかはわかりませんが、その時は覚悟を決めたいと思っています。
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