見出し画像

Escape from Tarkov ― 7.62x39弾④

シリーズ初回はこちら: Escape from Tarkov ― 弾丸の歴史

装甲への対応 ― PP弾・BP弾・MAI AP

前回の記事では、7.62×39弾の中でも特殊な用途を持つ弾薬として

  • T-45M1(曳光弾)

  • US(亜音速弾)

を紹介した。
これらの弾薬は、弾道確認や静音任務といった戦術的な用途に対応するために設計された弾薬である。
しかし戦場環境の変化は、弾薬に対して別の要求も生み出していく。
それが
防護装備への対応
である。


PP gzh ― 貫通能力を高めた弾薬

PP gzh は、7.62×39弾の中でも 貫通能力を高めることを目的として設計された弾薬である。
名称の「PP」はロシア語の
Повышенной пробиваемости
(Povyshennoy probivayemosti)

の略であり、
「貫通力を高めた弾丸」
という意味を持っている。
この名称が示す通り、PP弾は従来の7.62×39弾よりも
障害物や装備に対する貫通性能の向上を目的として設計された弾薬である。


戦場環境の変化

7.62×39弾が採用された1940年代当時、
歩兵が装備する防護装備は現在ほど発達していなかった。
戦場で想定されていたのは主に

  • ヘルメット

  • 軽装備

  • 木材や土嚢などの遮蔽物

であり、小銃弾に対する本格的な防弾装備はまだ一般的ではなかった。
そのため当初の弾薬設計では、
極端な装甲貫通能力よりも

  • 歩兵戦闘に必要な威力

  • 信頼性

  • 大量生産性

といった要素が重視されていた。
PS弾のような鋼鉄芯弾は、そのような環境の中で
十分な性能を持つ弾薬として広く使用されていた。


防護装備との技術競争

しかし時代が進むにつれて、戦場環境は徐々に変化していく。
1960年代以降、各国の軍隊では
個人防護装備の改良が進み、

  • 防弾ベスト

  • 強化ヘルメット

  • 各種装備品

など、弾丸の貫通を妨げる要素が増えていった。
こうした状況の中で、従来の弾薬よりも
より高い貫通能力を持つ弾薬の必要性が意識されるようになる。
PP弾は、こうした要求を背景として開発された弾薬である。
弾丸内部の鋼芯の形状や材質が調整されることで、
従来弾よりも障害物に対して強い弾丸となっている。


BP gzh ― 本格的な装甲貫通弾

PP弾は貫通能力を向上させた弾薬ではあったが、
本格的な装甲貫通弾として設計されたものではなかった。
防護装備の発達や戦場環境の変化が進むにつれ、
さらに高い貫通能力を持つ弾薬の必要性が認識されるようになる。
そこで開発されたのが
BP gzh
である。
BPはロシア語の
Бронебойная пуля
(Broneboynaya pulya)

の略であり、
「装甲貫通弾」
を意味している。


BP弾の構造

BP弾では弾頭内部に
硬化鋼の芯
が使用されている。
弾丸が目標に衝突した際、弾頭が過度に変形せず
エネルギーを一点に集中させることで、

  • 防弾装備

  • 金属障害物

などに対しても侵入しやすくなっている。
これは防護装備の進化に対応するために生まれた設計である。


MAI AP ― Tarkovに登場する高貫通弾

Escape from Tarkovでは、
さらに高い貫通能力を持つ弾薬として
MAI AP
が登場する。
名称に含まれる AP(Armor Piercing)
英語で「装甲貫通」を意味しており、
この弾薬が高い装甲貫通能力を想定して設計された弾薬であることを示している。
ただし MAI AP は実在するロシア軍の制式弾ではなく、
ゲーム内で設定された弾薬
である。
Tarkovでは実在弾薬をベースとしながらも、
ゲームバランスや装備の多様性を考慮して
独自の弾薬が設定されている場合がある。
MAI APはそのような弾薬の一つであり、
ゲーム内ではBP弾よりもさらに高い貫通性能を持つ弾薬として扱われている。


弾薬の進化

ここまで見てきた流れを整理すると、
7.62×39弾の弾薬は次のように発展してきた。

  • PS弾
     標準弾(鋼鉄芯)

  • PP弾
     貫通能力を高めた改良弾

  • BP弾
     本格的な装甲貫通弾

そしてゲーム内では、その延長線上の存在として
MAI APのような弾薬が登場している。


攻撃と防御の競争

軍用弾薬の発展は常に
防護装備との技術的な競争
の中で進んできた。
防弾装備が強化されれば、それを貫通する弾薬が求められる。
そして弾薬が強化されれば、再び防護装備が改良される。
このような競争の中で弾薬技術は進化してきた。
PP弾やBP弾は、まさにその流れの中で生まれた弾薬であり、
7.62×39弾という弾薬体系が長い年月の中で改良され続けてきたことを示す例と言える。


このような競争の中で弾薬技術は進化してきた。
PP弾やBP弾は、まさにその流れの中で生まれた弾薬であり、
7.62×39弾という弾薬体系が長い年月の中で改良され続けてきたことを示す例と言える。
しかし、ソ連軍の弾薬の進化はここで止まるわけではなかった。
冷戦が進む中で、世界の軍隊では小銃と弾薬の設計思想そのものが大きく変化していく。
特に1960年代以降、各国では 小口径高速弾 という新しい考え方が注目されるようになった。
この流れの中で、ソ連もまた新しい弾薬体系の研究を進めていくことになる。
それが後に AK-74の弾薬として採用される 5.45×39弾 である。
次のシリーズでは、この5.45×39弾がどのような背景の中で誕生し、
従来の7.62×39弾とはどのように異なる思想で設計された弾薬なのかを見ていきたい。

次作はこちら: Escape from Tarkov ― 5.45x39弾①

※ この連作で扱っている内容の背景や実際のプレイ感については、
毎週金曜日に配信している配信内でも触れています。
文章とは少し違った形での理解の助けになると思いますので、
興味があればこちらも覗いてみてください。
▶ 配信はこちら: B.K. Gaming チャンネル
▶ Twitch はこちら: kaz_the_minotaur チャンネル

いいなと思ったら応援しよう!

kaz the minotaur 読んでくださってありがとうございます。 サポートは、今後の制作を続けるための大きな力になります。 無理のない範囲で、応援していただけたら嬉しいです。