Escape from Tarkov ― NATO弾②
シリーズ初回はこちら: Escape from Tarkov ― 弾丸の歴史
Warmageddon
Warmageddon は NATO の正式採用弾ではない。
名前だけ見ると物騒すぎるが、この弾が生まれた背景を知ると、納得する部分が多い。
この弾は主に、
対テロ作戦
市街戦
民間人が近くにいる可能性が高い状況
といったシーンを想定して設計された弾丸だとされている。
特徴は非常に明確で、
貫通力を意図的に抑え
弾が人体内でエネルギーを放出しやすくする
ことで、「貫通させない代わりに、人体への損傷を最大化する」 という思想を持っている。
つまりこれは、
「当たった相手を確実に止める」
「弾が貫通して第三者に被害を出さない」
ことを最優先した弾だと言える。
名前の物騒さも、
「戦闘をできるだけ早く終わらせる」という意味で考えれば、
あながち誇張とも言い切れない。
AP 弾と混在させれば最強なのでは?
ここで素朴な疑問が浮かぶ。
AP 弾で装甲を抜き、
その後に Warmageddon を当てれば、
ダメージが最大化されるのでは?
実際にこの疑問を ChatGPT に投げてみたが、
現実世界の軍事運用では、そのような混在は基本的に行われない らしい。
理由は単純で、
弾道や挙動が異なる
役割が明確に分かれている
ためだ。
AP 弾は「装甲を抜く」ことに特化しており、
Warmageddon は「当たった相手を止める」ことに全振りしている。
現実の軍隊では、
AP 弾は AP 弾として使う
Warmageddon は Warmageddon の用途で使う
というように、シーンごとに弾そのものを使い分ける のが基本になる。
この点は、
ゲーム的な発想と現実の運用思想がズレる典型例かもしれない。
Tarkov での位置づけ
ここからは Tarkov 的な話になる。
Warmageddon は、
装甲を着ていない Scav
軽装の NPC
に対しては、非常に効果が高いように見える。
一方で、
装甲を着込んだ PMC
に対しては、
貫通力不足がそのまま不利に直結する 可能性が高い。
用途がはっきり分かれている弾、
という理解が一番しっくり来る。
FMJ(Full Metal Jacket)
「フルメタルジャケット」と聞くと、
映画の影響もあって、なんとなく強そうな印象を持ってしまう。
だが実際のところ、
FMJ は性能を示す言葉ではなく、構造を示す言葉 に過ぎない。
FMJ とは、
鉛の芯
それを覆う銅や真鍮の被覆
という “被覆構造” を指しているだけで、
貫通力が高いとか、殺傷力が高いという意味ではない。
なぜフルメタルジャケットなのか
もともと、弾丸は鉛だけで作られていた時代があった。
しかし鉛だけの弾は、
銃身が汚れやすい
形状が安定しない
高速連射に耐えられない
といった問題が多かった。
そこで、
鉛の芯を金属で覆い、
発射や給弾を安定させよう
という発想から生まれたのが FMJ 構造である。
その結果、FMJ は
民生用弾薬
訓練用弾
基準となる構造
として広く普及することになった。
Tarkov における FMJ
このため、現実世界でも Tarkov の世界でも、
FMJ は基本的に
「特別な性能を持たない、標準的な弾」
という扱いになる。
軍で正式採用されている弾(M855 など)も、
構造的には FMJ 系だが、
性能そのものは別の設計要素で決まっている。
その意味で、
FMJ という表記だけを見て期待しすぎるのは禁物だ。
HP / SP
HP と SP は、名前の意味が分かると非常に理解しやすい。
HP:Hollow Point(先端が空洞)
SP:Soft Point(先端に鉛が露出)
どちらも、
弾が人体内で変形しやすい
貫通しにくい
という特徴を持つ。
主に狩猟用途などで、
獲物を確実に止める
弾が貫通して後方に被害を出さない
ことを目的として使われてきた弾だと理解して良さそうだ。
Warmageddon との違い
ここで再び Warmageddon との違いが気になる。
HP や SP は、
当たった結果として弾が潰れる
という構造的な特徴を持つ弾だ。
一方 Warmageddon は、
最初から「人体を止める」ことを目的に設計された弾
という点で、思想の段階が一段違う。
同じ「貫通しにくい弾」ではあるが、
役割への振り切り方がまったく異なる、
という位置づけになる。
SSA AP
Tarkov をプレイしている人の間では、
SSA AP が最強弾 という評価を受けることが多い。
ただしこれは、
ゲーム的なバランス調整の影響が大きい と考えた方が良さそうだ。
SSA とは Superior Shooting Ammunition という
実在する民間弾薬メーカーの名称である。
重要なのは、
SSA AP は NATO の正式採用弾ではない という点だ。
なぜ民間で AP 弾が流通するのか
現代では、
民間警備会社
法執行機関(SWAT など)
といった組織でも、防弾ベストを装備した敵を相手にするケースが増えている。
その結果、
民間市場でも
「ある程度の貫通力を持つ弾」
への需要が生まれた。
SSA AP は、
そうした 現代の治安環境 を背景に登場した弾だと考えられる。
ゲーム内評価とのズレ
現実の性能を見る限り、
SSA AP は M995 より強い弾ではない とされている。
Tarkov 内で非常に強力に設定されているのは、
入手性やゲームバランス上の都合が大きいのだろう。
このあたりは、
「現実の文脈を踏まえつつ、
ゲーム的に誇張されている部分」
と理解しておくのが良さそうだ。
SOST / RRLP
SOST と RRLP は、
名前が似ているからまとめたわけではない。
この二つには、
AP 弾が抱えていた問題点 という明確な共通点がある。
AP 弾の問題点
AP 弾は、
非常に硬い
壊れにくい
という特性を持つ。
これは装甲を貫くという点では優秀だが、
一方で、
突き抜けすぎる
跳弾しやすい
背後の第三者を巻き込みやすい
という問題を生む。
SOST:市街戦への回答
SOST(Special Operations Science and Technology: Mk318 Mod 0) は、
イラク・アフガニスタン戦争における市街戦の経験から生まれた弾だ。
薄い壁や車両を抜けないと敵に届かない
しかし突き抜けすぎても困る
という相反する要求に対し、
「適度に貫通し、当たったら止まる」
というバランスを狙って設計されている。
この弾は、
米海兵隊の特殊作戦部隊向けに開発されたため、
全軍共通管理の M ではなく
特殊装備用の Mk
改修番号も A ではなく Mod
という管理体系になっている。
RRLP:安全性という別の答え
RRLP(Reduced Ricochet, Limited Penetration: Mk255 Mod 0) は、
戦争用というよりも、
訓練
市街地
安全性
を重視して生まれた弾だ。
跳弾事故や過貫通事故を防ぐため、
硬い物に当たると砕ける
貫通しにくい
跳ねにくい
という方向性で設計されている。
その結果、
Tarkov の世界では「使えない弾」に分類されがちだが、
それは設計思想通り とも言える。
なぜ正式採用されなかったのか
SOST も RRLP も、
全軍正式採用には至っていない。
SOST は用途が特殊であるため、
全軍採用されなかったのは分かりやすい。
RRLP についても、
安全性を重視しすぎると
実戦と訓練の乖離が大きくなる
という理由から、
限定的な採用に留まったとされている。
つまり、
訓練兵が優しい世界に慣れきってしまったら
実戦で使い物にならないだろうがっ!このバカちんがっ!
ということになるらしい。
こうして採用・不採用の理由を追っていくと、
軍隊という組織の独特な考え方が見えてきて、
なかなか興味深い。
次作はこちら: 7.62x39弾①
※ この連作で扱っている内容の背景や実際のプレイ感については、
毎週金曜日に配信している配信内でも触れています。
文章とは少し違った形での理解の助けになると思いますので、
興味があればこちらも覗いてみてください。
▶ 配信はこちら: B.K. Gaming チャンネル
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