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マーケティングをゼロから学ぶな。私がP&Gを起点にした理由

マーケティングを学び始めた頃、私は「自分なりの正解」を探そうとしていた。

しかし、今振り返ると、それはかなり効率の悪い学び方だったと思う。

マーケティングの本質に自力でたどり着くには、膨大な数の仮説を立て、実行し、失敗し、その結果を振り返らなければならない。

実務で使える時間も、予算も限られている。

だから、最初からゼロベースで正解を探す必要はない。

最初に決めるべきなのは、

「何をいったん信じ、どの方向から実験を始めるか」

である。

私にとって、その起点がP&Gだった。

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■ なぜP&Gから学び始めたのか

[自己紹介記事]でも触れた通り、私が本格的にマーケティングを学び始めた理由は、会社からの評価を結果で覆すためだった。

私には、売上という誰にも否定しにくい成果が必要だった。

当時の私の中で、

「マーケティングに優れた企業はどこか」

と聞かれて、最初に思い浮かぶ企業がP&Gだった。

だから私は、P&G出身者の書籍や記事を読み漁ることから始めた。

最初のきっかけは、森岡毅氏の

『マーケティングとは「組織革命」である。』

だった。

本の中で描かれていた低迷期のUSJの組織は、当時の私の会社と重なる部分が多かった。

そして、そこには単なる広告や販促の手法ではなく、

「組織の中で、どのように革命を進めるのか」

が描かれていた。

何を考え、誰を動かし、どの順番で変えていくのか。

マーケティングを使って成果を出すまでのイメージが、初めて具体的に見えた。

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■ P&G出身者に共通していた三つの軸

その後、複数のP&G出身者の書籍や記事を読んでいくと、表現や方法論は違っていても、共通する価値観があることに気づいた。

それが、

・目的志向
・消費者起点
・オーナーシップ

の三つだった。

中でも、私に最も大きな影響を与えたのは、

「目的から考える」

という姿勢である。

何をやるかではなく、何のためにやるのか。

施策の前に目的を置く。
会議の前に目的を置く。
資料の前に目的を置く。

言葉にすると当たり前に見える。

しかし、実際の組織では、手段が目的化することが驚くほど多い。

会議を開くこと。
広告を出すこと。
新しい施策を実行すること。

それ自体が目的になってしまう。

P&Gのワンページメモが優れているのも、単に情報を一枚にまとめるからではないと思う。

目的から逆算し、

・何が問題なのか
・何が事実なのか
・何を決める必要があるのか

を明確にするからこそ、意思決定が速くなる。

私も、目的と市場調査の結果を一枚に整理して提案するようになってから、意見が通りやすくなった。

声の大きな人の主観ではなく、

「目的を達成するために、最も需要が高い施策は何か」

を示し、そこにリソースを集中させる。

議論を、

「誰の意見が正しいか」

から、

「何が目的達成に近いか」

へ変えられるようになった。

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■ 「コンシューマー・イズ・ボス」が判断基準を変えた

もう一つ、私の判断基準を大きく変えたのが、

「コンシューマー・イズ・ボス」

という考え方だった。

社内の人がおもしろいと思うものと、消費者がおもしろいと思うものは、必ずしも同じではない。

私は、過去のコンセプト調査スコア、商品認知度、売上の関係を分析した。

その結果、コンセプト調査スコアと売上の間に、非常に強い関係があることを示すことができた。

そこで、

・調査スコアが高い
・しかし認知度が低い

という商品に広告費を集中した。

社内の感覚ではなく、消費者の反応を基準に施策を選んだ結果、売上は大きく変わった。

「コンシューマー・イズ・ボス」は、上司に反抗するための言葉ではない。

自分の意見も、上司の意見も絶対視しない。

最終的には、市場からのフィードバックに従う。

そのための考え方である。

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■ 優れた企業は、失敗も資産にする

私がP&Gを尊敬する理由は、優れた考え方を持っていることだけではない。

それを、個人の心構えで終わらせず、組織の仕組みにしていることだ。

たとえばP&Gでは、失敗もレポートとして残し、世界中の組織が参照できるようにするとされている。

失敗を、個人の傷や反省で終わらせない。

次の意思決定に使える、組織の資産へ変える。

これは、AI時代にはさらに大きな価値を持つと思う。

AIそのものは、多くの企業が利用できる。

しかし、

・長年蓄積された市場調査データ
・成功と失敗の記録
・意思決定と結果の組み合わせ

は、その企業にしか持てない。

AI時代の競争力は、AIを使えるかどうかだけではない。

AIに何を参照させられるかによって、大きな差が生まれる。

また、ブランドマネージャーがPL責任を負う仕組みも秀逸だと思う。

自分の判断が、売上や利益として返ってくる。

市場からのフィードバックを自分の責任として受け止めるからこそ、

・オーナーシップ
・リーダーシップ
・戦略的思考

が、実戦の中で磨かれていく。

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■ P&Gは「正解」ではなく、信頼できる出発点だった

私は、P&Gの考え方をすべて正しいと思っているわけではない。

しかし、マーケティングを学び始めた当時、

「何を信じて実験を始めるか」

という問いに対して、P&Gは最も信頼できる起点だった。

そして実際に、

・目的から考える
・消費者の声を集める
・市場の反応を基準に意思決定する
・結果から学ぶ

という姿勢を実務で試すと、高い確率で成果につながった。

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ゼロから正解を発明する必要はない。

マーケティングで本質にたどり着くには、おびただしい数の実験が必要になる。

だからこそ、最初から手当たり次第に試すのではなく、世界中で何度も試されてきた優れた考え方を起点にした方がいい。

まずは、信頼できる巨人の肩に乗る。

その上で、自分の市場で試し、結果から学び、自分なりの型に変えていく。

私がP&Gを尊敬しているのは、正解を知っている会社だからではない。

正解に近づくための考え方と、学習を積み重ねる仕組みを、組織として持っているからだ。

マーケティングを学び始めた人に伝えたい。

最初から独自性を求めなくていい。

まずは、信頼できる思想を選び、そこから実験を始めればいい。

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