「想定外でした」で終わる人と、目標を達成する人の違い
以前の記事で、私はこう書いた。
売上を伸ばすために最も力を注いだのは、顧客へのマーケティングではなく「社内マーケティング」だった、と。
戦略をつくるだけでは、事業は変わらない。
経営層に戦略の必要性を理解してもらう。
関連部門と優先順位をそろえる。
それぞれの担当者が、同じ方向へ動ける仕組みをつくる。
こうした社内マーケティングがようやく実を結び、私が立案した戦略を、組織として本格的に実行できるようになった。
その初年度。
事業は、過去最高売上を更新した。
普通なら、成功と呼んでいい結果だと思う。
しかし、会社として掲げていた目標には届かなかった。
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■ 過去最高売上でも、私は謝罪した
未達の直接的な原因は、自分たちではコントロールできない外部要因だった。
期中に事業を取り巻く環境が大きく悪化し、それに伴って需要も想定を下回った。
私たちが実行した施策自体は、成果を出していた。
実際に、売上は過去最高だった。
それでも私は、戦略の実行を承認してもらった経営層に謝罪した。
外部要因は、目標未達の「原因」にはなる。
しかし、計画を立てる側にとって、責任を免れる「理由」にはならないと思ったからだ。
市場環境が変化する。
競合が想定外の動きをする。
顧客の需要が予測から外れる。
それらも含めて、事業計画である。
私は翌年、必ず目標を達成すると約束した。
そして、この経験をきっかけに気づいた。
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目標達成に必要なのは、 施策をすべて当てることではない。
施策や前提が外れても、 目標を達成できる計画をつくることだ。
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■ 過去最高売上でも、計画としては失敗だった
前年の施策自体は、大きく間違っていなかった。
顧客調査をもとに優先順位を決め、関連部門を巻き込みながら戦略を実行した。
その結果、売上は伸び、過去最高を更新した。
問題は、施策の内容ではない。
計画の構造にあった。
当時の計画は、暗黙のうちに次のような前提でつくられていた。
・主要な施策が、想定どおりの成果を出す
・外部環境が、大きく悪化しない
・問題が起きたら、その都度対応する
・複数の前提が、同時に外れることはない
一つひとつを見ると、極端に楽観的な前提ではない。
しかし、これらをすべて掛け合わせると、計画は非常に脆くなる。
施策が一つ外れる。
外部環境が少し悪化する。
意思決定が数週間遅れる。
それだけで、目標達成が難しくなる設計だった。
私は「最も起こりそうな未来」に対しては、計画を立てていた。
しかし、想定と違う未来に対する準備はできていなかった。
それは計画というより、
「こうなってほしい」
という期待に近かったのだと思う。
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■ コントロールできないことと、想定できないことは違う
外部要因は、自分たちの力では変えられない。
市場環境。
競合の動き。
天候。
社会情勢。
顧客心理。
事業によっては、さらに特殊な不確実性も存在する。
これらを正確に予測することは難しい。
しかし、
「コントロールできない」
ことと、
「計画に織り込めない」
ことは同じではない。
何が起きるかを正確に当てられなくても、状況が悪化した場合に、売上がどの程度下がる可能性があるかは試算できる。
どの時点で異変を検知するかも決められる。
その場合に、どの施策を強めるかも事前に考えられる。
前年の私は、外部環境が悪化した後に対応策を考えていた。
翌年は、外部環境が悪化する可能性も含めて、計画を立てることにした。
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■ 未来を一つの数字で表すことをやめた
翌年、最初に変えたのは需要予測の方法だった。
それまでは、
「この施策によって、これくらい売上が伸びるだろう」
という一点の予測を積み上げていた。
しかし、未来は一つの数字では表せない。
施策には、想定以上に成功する場合もある。
期待したほど成果が出ない場合もある。
外部環境も、自分たちの計画に合わせて動いてくれるわけではない。
そこで、売上を左右する要素について、複数のシナリオを用意した。
・想定を上回った場合
・最も可能性が高い場合
・想定を下回った場合
それぞれの条件で、最終的な売上がどこに着地するかを試算した。
ここで重要なのは、悲観的な予測をすることではない。
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複数の要素が下振れしても、 目標を達成できる構造になっているか。
それを確認することが重要だった。
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■ 予測ではなく、対応を事前に決める
売上を左右する要素は、大きく二つに分けられる。
一つは、自分たちでコントロールできるもの。
価格、商品、広告、販売時期、予算配分、顧客への伝え方などである。
もう一つは、自分たちではコントロールできないもの。
市場環境、競合、天候、社会情勢などだ。
コントロールできない要素を、計画から排除することはできない。
しかし、それが変化したときの対応は決められる。
・売上が想定を一定以上下回ったら、施策の優先順位を変える
・特定の商品への反応が弱ければ、別の商品へ販売資源を移す
・ある時点で目標との差が開いていたら、価格や広告配分を変更する
こうした判断基準を、問題が起きてから考えるのではなく、計画段階で決めておいた。
未来を正確に当てるのではない。
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未来が変化したときの行動を、 先に決めておく。
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これだけで、計画の強度は大きく変わる。
■ 最もありそうな未来に、すべてを賭けない
多くの事業計画は、「最もありそうな未来」を中心につくられる。
予測売上が100なら、100を達成する施策を並べる。
しかし、すべての施策が予測の中心値で着地することは、むしろ珍しい。
ある施策は上振れする。
別の施策は下振れする。
外部環境も変化する。
それなのに、すべてが平均的に進むことを前提に目標を組み立てれば、少しの誤差で未達になる。
そこで翌年は、
「すべてが想定どおりなら、目標を上回る」
「いくつかが下振れしても、目標を達成する」
という計画をつくった。
単純に施策や予算を増やしたわけではない。
施策の実施時期を早めた。
優先順位を事前に決めた。
効果の低い活動を減らした。
限られた予算を、成果の出やすい領域へ集中させた。
つまり、目標達成のための余白を、追加コストではなく、
「意思決定の順序」と「資源配分」
によってつくった。
結果として、翌年の売上は、当初の需要予測とほぼ同じ水準で着地した。
さらに、コストを当初計画より抑えながら、売上目標を上回ることができた。
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■ 需要予測が当たったことは、結果にすぎない
需要予測がほぼ当たったことだけを見れば、精度の高い分析ができたと言えるかもしれない。
しかし、本当に重要だったのは、そこではない。
仮に予測が外れていたとしても、目標を達成できるように計画していた。
予測精度は、結果だった。
目標達成を可能にしたのは、予測が外れた場合まで含めて、打ち手を設計していたことだった。
予測と計画は、似ているようで役割が違う。
予測は、
「何が起こりそうか」
を考える。
計画は、
「何が起きたら、どう動くか」
を決める。
予測は、天気予報に近い。
計画は、雨が降っても目的地へたどり着くための経路設計に近い。
天気予報が正確でも、雨への備えがなければ意味がない。
反対に、予報が多少外れても、複数の状況に対応できる準備があれば、目的地にはたどり着ける。
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■ 外部要因を、未達の説明で終わらせない
目標を達成できなかったとき、私たちは原因を探す。
市場環境が悪かった。
競合が予想外の動きをした。
天候に恵まれなかった。
社内外で予期しない問題が起きた。
それらは、事実として正しいこともある。
しかし、外部要因を説明しただけでは、翌年の達成確率は上がらない。
必要なのは、さらに一歩踏み込むことだ。
・その外部要因は、どの数字に、どの程度影響したのか
・同じことが起きても耐えられる計画だったのか
・どの時点で、どの対応に切り替えるべきだったのか
外部要因は、コントロールできない。
しかし、
「外部要因によって計画が壊れる度合い」
は、ある程度コントロールできる。
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■ 目標未達は、努力不足ではなく設計不足かもしれない
目標を達成できなかったとき、私たちは施策の反省を始める。
広告が悪かった。
営業が足りなかった。
商品が弱かった。
実行スピードが遅かった。
もちろん、そうした反省も必要だ。
しかし、その前に確認すべきことがある。
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そもそも、その計画は 多少の失敗に耐えられる設計だったのか。
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一つの施策が外れただけで未達になるなら、それは担当者の実行力だけの問題ではない。
外部環境が少し悪化しただけで崩れるなら、予測担当者だけの問題でもない。
計画そのものが、成功を前提につくられすぎている可能性がある。
実務で計画を確認するとき、私は少なくとも次の三つを考える。
・目標達成のために、必ず成功しなければならない施策は何か
・複数の前提が下振れした場合、どこまで耐えられるか
・状況が変わったとき、何を、いつ変更するか決まっているか
この三つに答えられない計画は、数字が精緻でも、強い計画とは言えない。
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■ 目標達成とは、未来を当てることではない
社内マーケティングに成功し、自分の戦略を初めて本格的に実行した年度。
事業は、過去最高売上を達成した。
それでも、コントロールできない外部要因によって、目標には届かなかった。
翌年、需要予測はほぼ当たった。
しかし、この経験から得た最大の学びは、予測手法ではなかった。
未来は完全には読めない。
外部環境もコントロールできない。
施策も必ず成功するわけではない。
だからこそ、最もありそうな未来だけに賭けてはいけない。
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目標達成とは、 正解の施策をすべて当てるゲームではない。
いくつかの判断や前提が外れても、 最後には目標へ到達できる構造をつくる仕事だ。
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未来を当てることよりも、未来が外れたときに壊れないこと。
それが、計画に必要な強さだと思う。
