That's the answer. 〜気高き罪人〜(後編)
23:38 理沙
間接照明の淡い光が二人の交わりを象徴するかのように遠慮がちに光っている。夫の息使いとベットの軋(きし)む音だけが寝室に虚しく響く。
理沙は顔を横に向け、無表情で虚空を見つめる。ときより夫に目を向けるが視線は夫の体をすり抜け、遠くの祐司に想いを注いでいた。
「私はズルい女だ。」
不意に頭に浮かんだ自分の言葉に嘲笑しながら顔を横に向けた。そのとき、理沙は気づく。スマホの不在着信を知らせるランプが蛍のように光っていることを…。
営みが終わり夫が台所にビールを取りに行った。その隙にスマホ画面を開く。ラインメッセージが来ていた。祐司かと思い頬がゆるむが画面には大介と表示されていた。
そう言えば一週間前にもラインが来ていた。メッセージを返さなかったのが答えだったのに…。
夕方にも来てたっけ…。会う約束なんてしてないのに、パスタ作って待ってるみたいな…。どうせ「なぜ来ないんだ!」そんな怒りの内容だと思ったけど、取り敢えず、確認した。
「やっぱり僕じゃダメなんだね。理沙の幸せを影ながら祈っています。」
予想に反して優しい内容で拍子抜けしたが、ホッとした。再度、メッセージが入ってきた。目をやると動画だけが貼られていた。そこには、息を荒くしながら腰を動かす夫と無表情で虚空を見つめる私が映っていた。
背中に冷たいものが伝い落ちるのを感じ、咄嗟に顔を上げ部屋を見渡した。『影ながら…。』その言葉だけが頭の中で繰り返し浮かんでは消えた。
動揺を隠す隙もなく夫がビールを持って寝室に帰って来た。「亜紀は今日も遅いのか?」不機嫌な声で夫が聞いてきた。
「あっ…、アルバイトで遅くなるから友達の家に泊まるってライン来てましたよ。」『あっ』と言う声はうわずってしまったが、必死で平然を装い答えた。
「1人娘だからって甘やかし過ぎたかな…。」夫は一段と不機嫌な表情に変わり、ため息と一緒にビールを喉に流し込んだ。
0:12 大介
玄関に鍵が差し込まれる音がした。扉が開き、静かに閉まる。部屋の電気が点き、眩(まぶ)しそうに大介は振り向いた。
「おー、遅かったな。」
「おー、じゃないわよ。パソコンの明かりだけじゃ目が悪くなるって何度言ったらわかるの?」コンビニで買い物してきた物を机に置きながら子供を嗜(たしな)めるように話しかけた。
「あー、分かってるよ。」小言を言われた子供のように不貞腐れながら返事をすると、またパソコン画面に目を向け「今日は泊まれるんだろ?」と吐き捨てるように聞いた。
大介に背を向けたまま、買ってきた物を袋から取り出し「どうしよっかなー。」と思わせぶりに答えると、大介はダルそうに立ち上がり女性の頬に手をあて「泊まっていけよ。」と優しく念を押した。

亜紀のほころんだ表情が答えになる。
