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グループホームのBCPが抱える、固有の課題[4-5]

グループホームは小規模だから、BCPも簡単だと思っていませんか。

特別養護老人ホームや障害者支援施設と比べると、グループホームは小規模な単位で運営されていることが多く、そこで生活する利用者の人数も限られています。

そのため、「規模が小さい分、災害時の対応も考えやすい」と感じるかもしれません。

しかし、グループホームのBCPを考えるとき、まず確認しなければならない前提があります。

それは、夜間に職員が建物内にいるとは限らないということです。

前回までの特養や障害者支援施設では、「今いる人数で何ができるか」という問いが重要でした。

しかし、グループホームでは、その前に確認すべきことがあります。

「そもそも今、建物の中に職員がいるのか」という問いです。

この違いを理解しないまま、特養や障害者支援施設のBCPをそのままグループホームに当てはめると、災害時の初動を誤って想定する可能性があります。


基本の配置は「起床から就寝まで」が基準

共同生活援助、いわゆるグループホームの基本的な人員配置は、世話人や生活支援員について、「起床から就寝まで」の時間帯を基本に考えられています。

ここで重要なのは、就寝後から起床までの夜間帯が、基本報酬における配置要件の対象外となっていることです。

つまり、基本の人員配置だけを見れば、夜間に職員が建物内に常駐していることが前提になっているわけではありません。

夜間の体制を確保する場合には、「夜間支援等体制加算」を算定するという仕組みがあります。

これは、夜間における支援体制を確保している場合に、一定の要件のもとで評価される加算です。

しかし、ここで注意が必要なのは、夜間の体制が、すべてのグループホームで同じ形になるわけではないということです。

夜間支援等体制加算を算定するかどうかという選択があり、その体制も、事業所の運営形態によって異なります。

夜間に職員が常駐する体制もあれば、複数の共同生活住居を支援する巡回型の体制もあります。

この違いは、BCPを考えるうえで非常に大きな意味を持ちます。

特養や障害者支援施設では、少なくとも夜間の配置基準に基づく職員が、施設内にいることを前提に考えることができます。

一方、グループホームでは、夜間に職員が建物内にいること自体が、必ずしも前提ではありません。

自事業所のBCPは、夜間の職員配置を「いるもの」として考えていないでしょうか。


「その瞬間、建物に職員がいない」という現実

夜間支援等体制加算の仕組みでは、夜間支援従事者が1人で複数の共同生活住居を支援する場合があります。

この場合、夜間支援従事者は、少なくとも一晩に1回以上、各住居を巡回すればよいとされています。

つまり、1人の職員が複数の住居を順番に回ることになります。

この体制では、職員が巡回している間、別の住居には職員がいない時間帯が生じます。

これは、制度上想定されている運営形態です。

ここに、グループホームのBCPの大きな特徴があります。

特養では、夜勤職員が施設内に配置されることを前提に、限られた人数で何ができるかを考えます。

障害者支援施設でも、施設入所支援の基準に基づく夜間の体制を前提に、役割分担を考えます。

しかし、グループホームでは、「その瞬間、建物内に誰もいない」という状況が制度上あり得ます。

したがって、災害時の初動を考えるときも、「職員がいるから対応できる」という前提から始めることはできません。

職員が巡回中かもしれない。

別の住居に向かっているかもしれない。

すぐに戻れないかもしれない。

その時間帯に災害が発生する可能性もあります。

だからこそ、グループホームのBCPでは、前回までの「今いる人数で何ができるか」という問いのさらに手前にある、「そもそも今、建物に職員がいるのか」という問いが重要になります。

職員が不在の時間帯に災害が発生した場合、最初に誰が異常を把握し、どのように連絡が始まるのかまで整理されているでしょうか。


小規模だからこそ、判断の空白を考える

グループホームでは、施設全体を管理する管理者や、日常的に利用者を支援する世話人などに、さまざまな判断が集中しやすいという運営上の特徴があります。

これは、グループホームの規模が小さいからこそ生じる側面でもあります。

職員数が限られている場合、日常の支援だけでなく、利用者の状態把握、家族との連絡、関係機関との調整など、複数の役割を少数の職員が担うことがあります。

そこに、夜間の巡回型の体制が組み合わさると、職員が不在となる時間帯に、判断や対応の空白が生じる可能性があります。

もちろん、これはグループホームの運営が不十分だという意味ではありません。

巡回型の体制には、限られた職員で複数の住居を支援するという合理性があります。

問題は、その体制を前提としたときに、災害時の対応をどのように設計するかです。

職員がいない時間帯に、誰が異常を確認するのか。

連絡を受けた職員は、どのように状況を把握するのか。

巡回中の職員は、どの住居を優先するのか。

管理者がすぐに判断できない場合、誰が次の判断をするのか。

こうしたことを、平時から整理しておかなければなりません。

「職員が来れば対応できる」という計画では、職員が来るまでの時間が抜け落ちてしまいます。

グループホームのBCPでは、職員が到着した後の対応だけでなく、職員が到着するまでの時間をどうつなぐのかが重要になります。

職員が不在の時間帯に発生する「判断の空白」を、自施設のBCPはどのように埋めているでしょうか。


グループホームのBCPを考えるとき、「小規模だから簡単」という発想は、必ずしも正しくありません。

むしろ、夜間に職員が建物内に常駐しているとは限らないという制度上の前提を理解する必要があります。

夜間支援等体制加算を算定する場合でも、職員が1人で複数の共同生活住居を巡回する体制であれば、その瞬間、建物内に職員がいないことは起こり得ます。

この構造は、特養や障害者支援施設とは異なります。

「今いる人数で何ができるか」と考える前に、「今、職員がいるのか」を確認しなければならないのです。

職員が「いない」時間帯があり得るという前提に立って、何を、誰が、いつ確認するのかを設計することが、グループホームのBCPの出発点になります。

巡回型の体制を前提にするからこそ、連絡方法、初動の確認、判断の代替者、職員が到着するまでの対応を具体的に整理する必要があります。

次回は、訪問介護・居宅系サービスのBCPが抱える、固有の課題について考えます。これまで扱ってきた特養・障害者支援施設・グループホームは、いずれも「利用者がいる建物」を前提にしていました。

しかし訪問介護には、そもそも利用者が集まる建物という前提がありません。利用者が地域全体に分散しているという構造が、安否確認や職員配置の考え方をどう変えるのかを考えます。


参考資料
本記事の内容は、以下の一次資料に基づいています。
・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000100171

・令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00009.html