障害者支援施設のBCPが抱える、固有の課題[4-4]
障害者支援施設のBCPも、特養と同じ考え方で設計できると思っていませんか。
前回、特別養護老人ホームでは、夜勤職員の配置基準が入所者数に応じて段階的に定められていることを確認しました。しかし、障害者支援施設の施設入所支援における生活支援員の配置基準は、特養とは異なる構造を持っています。
施設入所支援では、利用者数が60人以下の場合、生活支援員は1人以上とされています。61人以上になると、60人を超えて40人、またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上となります。つまり、60人までは1人以上。61人から100人までは2人以上。101人から140人までは3人以上という考え方です。
特養の夜勤職員配置基準が、25人以下で1人、26人から60人で2人、61人から80人で3人というように、比較的細かな段階で増員される仕組みであるのに対し、施設入所支援では、60人まで1人のまま、その後は40人刻みで増員されます。
この違いは、BCPを考えるうえで無視できません。なぜなら、制度上の基準を満たす人数と、災害時に必要な役割を担える人数は、必ずしも同じではないからです。
60人まで1人、そこから40人刻みという基準
施設入所支援における生活支援員の配置基準は、利用者数60人以下では1人以上です。そして、61人以上になると、60人を超えて40人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上とされています。
この基準を特養と比較すると、増員のペースに違いがあることが分かります。特養では、夜勤職員について、25人以下で1人以上、26人から60人で2人以上、61人から80人で3人以上というように、25人を基本とした段階的な配置基準になっています。一方、施設入所支援では、60人以下は1人以上、61人から100人までは2人以上、101人から140人までは3人以上となります。
この数字だけを見て、「障害者支援施設のほうが楽だ」と考えるのは適切ではありません。基準の違いは、施設の役割や制度設計の違いを反映したものだからです。
あなたの施設では、この配置基準の違いを、単なる数字としてではなく、災害時の体制設計の前提として捉えられているでしょうか。
基準を満たす人数と、災害時に担える役割は別問題である
重要なのは、基準の人数を確認した後です。たとえば、60人の利用者に対して生活支援員が1人以上という基準を満たしていたとしても、災害時にその1人がすべての対応を同時に担えるわけではありません。
利用者の安全確認。施設内の被害確認。避難の必要性の判断。情報伝達。応援要請。必要な支援の継続。これらを同時に行う必要がある可能性があります。しかし、職員の人数は、災害が発生した瞬間に増えるわけではありません。
だからこそ、BCPでは「基準上、何人必要か」だけでなく、「現在の勤務体制で、誰が何を担当するのか」を具体的に考える必要があります。基準を満たすことは、運営上の最低限の条件です。しかし、BCPは、その最低限の人数で何を実行できるのかを考える計画でもあります。
自施設では、配置基準を確認した後、その人数で発災直後に担う役割まで整理できているでしょうか。
昼間の生活介護と、夜間の施設入所支援は別の基準で動いている
障害者支援施設のBCPを考えるとき、もう一つ注意が必要なのが、昼間と夜間の人員基準を混同しないことです。
昼間に行われる生活介護は、日中の活動や生活上の支援を行うサービスです。この生活介護における生活支援員の配置は、利用者数だけでなく、平均障害支援区分も考慮する仕組みになっています。平均障害支援区分とは、利用者の支援の必要度を示す障害支援区分を、利用者全体の状況に応じて平均したものです。つまり、昼間の生活介護では、利用者数に加えて、どの程度の支援が必要な利用者がいるのかが配置の考え方に影響します。
一方、夜間の施設入所支援における生活支援員の基準は、基本的に施設入所支援の単位ごとの利用者数を基礎に、60人以下は1人以上、61人以上は40人またはその端数ごとに1人を加えるという構造です。この二つは、同じ障害者支援施設の中で行われる支援であっても、異なる基準体系に基づいています。
さらに、施設入所支援のサービス管理責任者は、独自に別の配置を求めるのではなく、昼間実施サービスを行う場合に配置されるサービス管理責任者が兼ねる規定となっています。つまり、昼間と夜間の支援は、別々の人員配置として単純に積み上げられているわけではありません。
この構造を理解しないままBCPを作成すると、「昼間はこれだけ職員がいるから、夜間も同じように対応できる」という誤った前提に立つ可能性があります。災害は、昼間に起きるとは限りません。
自施設のBCPは、昼間の体制と夜間の体制を分けて、発災時の役割を整理できているでしょうか。
利用者の多様性は、一律の避難計画を難しくする
障害者支援施設では、利用者の障害特性も施設ごと、利用者ごとに異なります。身体障害、知的障害、精神障害など、必要となる支援の内容は一律ではありません。そのため、災害時の避難についても、「全員を同じ手順で移動させる」という考え方だけでは対応できない場面があります。
移動そのものに介助が必要な人。情報の伝達方法に配慮が必要な人。環境の変化に対して継続的な支援が必要な人。避難後の生活においても、日常と異なる環境への適応を支援する必要がある人。こうした違いを前提に、避難と生活継続を考える必要があります。
これは、利用者の多様性を特別な問題として扱うということではありません。最初から利用者を一律のモデルとして想定しないということです。「利用者全員を避難させる」という計画だけでは、実際の支援に結びつかない可能性があります。
誰が、どの利用者に、どのような支援を行うのか。その役割を、現在の職員体制の中でどこまで実行できるのか。障害者支援施設のBCPでは、施設全体の行動と、利用者ごとの支援をつなげる視点が必要になります。
自施設の避難計画は、利用者の違いを前提にした支援の組み合わせまで考えられているでしょうか。
障害者支援施設の生活支援員配置基準は、特養の夜勤基準と比べて増員のペースが緩やかです。
それは、施設側が主体的に役割分担を設計しなければならない範囲が、より広いということでもあります。
「基準を満たしている人数」と「災害時に必要な役割分担」は、別の問題です。
今いる職員で何ができるのか、昼間と夜間で何が違うのか、利用者一人ひとりにどのような支援が必要なのか。その現実を踏まえて設計することが、障害者支援施設のBCPには求められます。
次回
次回は、グループホームのBCPが抱える、固有の課題について考えます。夜間、職員が「いない」ことが制度上あり得るという、特養とも障害者支援施設とも異なる構造について考えます。
参考資料
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第172号)|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418M60000100172_20230401_504M60000100159
