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長寿命化計画と災害リスクは、連動している[3-5]

長寿命化計画と災害リスクは、連動している

あなたの施設の長寿命化計画は、BCPと連動していますか。

病院や福祉施設、公共施設では、建物や設備を長く安全に使い続けるために長寿命化計画が策定されていることがあります。設備の更新時期を整理し、修繕費用を平準化し、将来の投資を見通していく。そうした役割は施設運営にとって非常に重要です。

しかし、その計画は災害対応やBCPと結びついているでしょうか。

長寿命化計画は「いつ更新するか」を決める資料としては使われていても、「災害時に何を守るか」を考える資料として十分に活用されていないことがあります。平常時には問題なく動いている設備が、非常時には最初に弱点になることがあります。そして、その多くは災害そのものより、「更新の考え方」と深く関係しています。

設備の更新は単なるコスト管理ではありません。非常時の継続性をどう確保するかという、BCPそのものの設計課題でもあります。


長寿命化計画が「コスト管理」として作られ「リスク管理」として使われていない問題

長寿命化計画を作る際、多くの場合は更新費用や修繕時期が中心になります。何年後に更新するか。どの程度の費用が必要か。優先順位はどうするか。もちろん、限られた予算の中では非常に重要な視点です。

しかし、その設備が止まった場合に施設全体へどのような影響が出るかまでは、十分に整理されていないことがあります。実際には、同じ設備更新でも重要度は大きく異なります。停止しても代替手段がある設備もあれば、止まった瞬間にケア継続へ影響する設備もあります。

厚生労働省が示す医療施設・社会福祉施設向けの長寿命化計画(個別施設計画)策定ガイドラインでも、老朽化状況を「安全面」「機能面」「環境面」の3つの視点で評価することが求められています。しかし、個別施設計画の策定率は、医療分野で全体の3割以下、福祉分野でも施設種別によって27〜53%とばらつきがあり、令和2年時点でおおむね4割前後にとどまっており、そもそも計画自体が十分に浸透していないのが実情です。長寿命化計画が費用管理だけに留まると、設備ごとの重要度の違いが見えにくくなります。

あなたの施設の長寿命化計画には、設備が止まった時の影響度という視点が含まれているでしょうか。

老朽設備が通常時は動いていても非常時に最初に止まる構造的理由

「まだ動いているから大丈夫」。設備管理ではよく聞く言葉かもしれません。実際、平常時は問題なく稼働している設備も多くあります。

しかし災害時には状況が変わります。停電、電圧変動、振動、断水、急激な負荷変化。通常とは異なる条件が同時に発生します。老朽設備は、日常運転では問題がなくても、こうした負荷変化への余裕が小さくなっていることがあります。

前回・前々回で取り上げた非常用電源や給排水設備の実態調査でも、点検不足や試運転不足による不具合が報告されていました。設備の弱点は日常では見えにくいものですが、非常時には、その余裕の差が一気に表面化することがあります。

災害は新しい故障を作るだけではありません。もともと存在していた弱点を見える形にします。

あなたの施設で「まだ動いているから大丈夫」と判断されている設備は、本当に非常時の負荷にも耐えられるでしょうか。


長寿命化計画の更新優先順位にBCPの視点を加えると何が変わるか

もし長寿命化計画へBCPの視点を加えたら、設備更新の優先順位は変わるかもしれません。更新時期だけではなく、「停止時の影響度」を加えるのです。

例えば同じ更新対象設備でも、停止しても影響が限定的なものと、施設機能全体へ波及するものがあります。非常用設備、給排水設備、空調設備、通信関連設備などは、他設備との連動が大きい場合があります。

厚生労働省の個別施設計画策定ガイドラインでは、「施設劣化度」(老朽化の程度をA〜Dの4段階で評価)と「施設重要度」(利用状況や避難所指定の有無など)を掛け合わせたマトリクスで、修繕・更新の優先順位を検討する考え方が示されています。劣化度が高く重要度も高い設備ほど優先度が上がる、という整理です。

そうすると、「古い設備から更新する」という考え方だけではなく、「止まると困る設備から見直す」という考え方が生まれます。設備更新の優先順位は、年数だけでは決まらないのかもしれません。

あなたの施設の更新計画には、劣化度と重要度をかけ合わせた優先順位づけがあるでしょうか。


長寿命化計画・設備更新・BCP改訂を連動させる仕組みづくり

設備は常に変化しています。更新工事、機器入替、運用変更、用途変更。施設は少しずつ姿を変えていきます。

しかし、長寿命化計画だけが更新され、BCPがそのままになっていることがあります。逆にBCPだけ見直され、設備情報が古いままになっていることもあります。小さなズレでも、災害時には大きな影響になることがあります。

厚生労働省のガイドラインでは、個別施設計画について「施設の現状は毎年最新の情報に更新し、5年程度を目安に全体を見直す」という運用方針(PDCAサイクル)が示されています。大切なのは、長寿命化計画とBCPを別々に動かさないことです。設備更新時にBCPも確認する。長寿命化計画見直し時にリスクも評価する。そうした流れができると、計画そのものが現場に近づいていきます。

あなたの施設では、長寿命化計画の見直しとBCPの見直しは、同じタイミングで行われているでしょうか。


設備更新は、古くなったものを新しくする作業ではありません。何を優先して守るのか、何が止まると施設機能へ影響するのか——その視点が加わった時、長寿命化計画は単なる予算資料ではなく、組織の継続性を支える設計図へ変わります。設備の寿命を延ばすことと、施設機能を守ることは、本来別の話ではありません。


次回

次回は、さらに具体的に「老朽設備の災害リスクを、どう評価するか」を掘り下げていきます。

劣化度評価の具体的な項目や、災害時の負荷変化に耐えられるかどうかをどう見極めるか、実務的な視点から見ていきます。


📚 参考資料

本記事の内容は、以下の公的機関による一次資料に基づいています。

・医療施設におけるインフラ長寿命化計画(個別施設計画)策定のためのガイドライン|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2015/04/dl/tp0416-01-01.pdf

・社会福祉施設等に係るインフラ長寿命化計画(個別施設計画)策定のための手引|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/topics/2015/04/dl/tp0416-01-02.pdf

・個別施設毎の長寿命化計画(個別施設計画)の策定率60%未満の施設に対する所管府省の対応について|内閣官房
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/infra_roukyuuka/k_dai9/siryou2-3.pdf