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〈死の巫姫〉の肖像 #7

  目次

〈「……いや、そういうことではなくてだな」〉
〈「母上は早婚だったし、わたしもそろそろ恋の一つぐらいしていいんじゃないかっていう話?」〉
〈「……う、む」〉
〈「どうだろう。これ、恋なのかな?」〉
〈「さぁ、それは、わからんが……お前はどうも、人と接するのを避けているからな」〉
〈「心配?」〉
〈「余計なお世話だとは思うが……理由を聞いても?」〉

〈一瞬、考える。〉
〈トアンには、もう話してあることだ。ここで父上に話していけないということはないだろう。〉
〈だけど……父上は、トアンみたいな能天気のあんぽんたんではないのだ。まっとうなエルフの常識が邪魔をして、信じてもらえないとしか思えない。〉

〈「別に、なんとなくよ」〉
〈「そう……か」〉

〈あ、気落ちしてる。〉

〈「ごめん、父上。ほんとは理由があるの。でも……やっぱり言えないわ。突拍子もないことだし」〉
〈「いや、無理にとは言わん。しょせん、男親ではわからぬこともあろう」〉
〈「うーん、そういうやつじゃないんだけど……わかった。いつかは話すわ。やっぱり、話さなきゃいけないことだし」〉
〈「そうか。まぁ、気長に待とう」〉

〈少し持ち直したようだ。ほっとする。〉
〈釣り針は動かない。〉
〈ふと、近くの茂みでがさりと音がした。〉

〈「む」〉

〈跳ねるように立ち上がり、幽骨剣を形成、中腰で周囲を警戒。すべてが一瞬のうちに成された。エルフ史上最高峰、と言われているが、それにしてもこの反応の速さはちょっと怖いくらいだ。〉
小縞鹿ダイカーが茂みから飛び出し、駆け去っていった。〉

〈「やれやれ、オークと違って獣は気配をほとんど発さないから困る」〉

〈かぶりを振る父上。〉
〈特にどうということもない出来事。〉
〈だが――わたしは、息を詰まらせていた。〉
〈何か、よくわからないものが見えていたから。〉
〈父上の周囲に、現実の光景を透かして、炎のようなものが揺らめいていたのだ。〉
〈いつか見た、葬礼はふりの色彩。父上を燃料として燃え上がっているかのように、幽世の色彩が周囲に染み出していた。〉
〈炎は少しずつ拡散し、周囲の樹々や、父上の持つ幽骨剣に吸い込まれてゆくようだった。〉
〈それは魔力、ではない。魔力還元の儀で起こる発光現象とはまったく違うものだ。〉
〈ほとんど見えないほど薄まったり、あるいは父上の姿をほとんど覆い隠すほど濃くなったりと、実在感が安定しない。〉
〈だが――見える。確かに見える。死の力がもたらす新たな認識。〉

〈「……どうした?」〉

〈父上の怪訝な声に、はっとする。〉

〈「ううん、なんでもない」〉

〈幽骨の刃が引っ込むと同時に、その幻覚は収まった。〉
〈釣り針は、動かなかった。〉

〈それからわたしは、人体から漏れ出る炎の色彩を見続けた。〉
〈人によって、炎の勢いの強さはかなり差があるようだ。〉
〈どういう基準で強弱が決まっているのかは、すぐにわかった。〉
〈子供はとても炎の勢いが強く、年経た者ほど弱くなる。〉
〈つまり――その人物の、残りの寿命を示している……?〉

【続く】

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