【水平思考ゲーム/解答】愛しのモーニングコール|記録No.083

べあ🐻「ニナちゃん、今日は特別な記録を持ってきたよ」
ニナ🗝「表題は『愛しのモーニングコール』。朝から随分と甘い響きね」
べあ🐻「はしゃもさんのXアカウント『おはようカノジョ』から生まれた、リクエスト問題です」
ニナ🗝「毎朝、違う彼女が“おはよう”を届ける記録……なるほど。題材は可愛らしいのに、持ち込んだのがあなたでは安心できないわね」
べあ🐻「信用がないなあ」
ニナ🗝「信用しているから、先に警戒しているのよ」
べあ🐻「それ、喜んでいいの?」
ニナ🗝「判断は後にして。記録を始めましょう」
■ 問題|難易度★★☆☆☆

べあ🐻「共犯者の皆さんは、“彼女”をどんな存在だと思ったかな?」
ニナ🗝「毎朝顔を見る相手。『君じゃない』という悲鳴。生身の恋人や家族を想像するには、十分な材料ね」
べあ🐻「別人へのすり替わりとか、浮気とか、ちょっと怖い方向にも考えられるよね」
ニナ🗝「けれど、問題文は彼女が人間だとは一度も言っていない」
べあ🐻「顔があるから、人だと思った」
ニナ🗝「ええ。そして彼が間違えたのは、彼女の顔ではなく――」
ニナ🗝「今日の日付よ」
■ 解答

男が毎朝見ていた「彼女」とは、Xアカウント**『おはようカノジョ』に登場する、曜日ごとのカノジョ**だった。
男は毎朝、その日に投稿されたカノジョを見ることで、無意識に「今日は何曜日なのか」を確認していた。
ところが、ある朝。
月曜日だと思って目を覚ました男の画面にいたのは、火曜日のカノジョだった。
「君じゃない……!」
男が叫んだのは、いつもの彼女が別人へ変わったからではない。
「今日は月曜日のはずなのに、火曜日の君がいる」と気づいたからだった。
実は男は休日に自宅で意識を失い、そのまま丸一日眠り続けていた。
男にとっては、月曜日がまだ始まっていないつもりだった。
しかし現実には、すでに火曜日の朝。
つまり彼は、知らないうちに一日を丸ごと失い、会社を無断欠勤していたのである。
男が顔を青くして崩れ落ちたのは、“彼女”を失ったからではない。
自分の時間から、二十四時間が消えていたことに気づいたからだった。
■ 真相の境界線
べあ🐻「『毎朝、彼女の顔を見る』と聞くだけで、親しい女性との日課だと思っちゃうよね」
ニナ🗝「“彼女”という代名詞に、人間関係まで含まれていると思い込むからよ」
べあ🐻「でも実際は、Xに投稿される曜日ごとのカノジョだった」
ニナ🗝「画像の中の存在でも、毎朝顔を見ることはできる。彼女と呼ぶこともできる。問題文は何も偽っていないわ」
べあ🐻「そして『君じゃない……!』も、いつもの相手が別人だった、という意味に聞こえる」
ニナ🗝「本当に違っていたのは、彼女ではなく男の認識よ」
べあ🐻「男は月曜日にいるつもりだった。でも、画面の中の彼女は火曜日を告げていた」
ニナ🗝「彼女は正しい場所にいた。時間から取り残されていたのは、男の方」
べあ🐻「タイトルの『モーニングコール』も、恋人からの電話みたいに聞こえるよね」
ニナ🗝「けれど彼女が告げたのは、甘い目覚めではない。昨日がすでに終わっているという事実よ」
べあ🐻「毎朝の癒やしが、一瞬で無断欠勤を知らせるアラームに変わるんだ」
ニナ🗝「愛しい日課ほど、異常が混じったときにはよく目立つ。男を絶望させたのも、彼が毎朝欠かさず彼女を見ていたから」
べあ🐻「習慣があったから、一日を失ったことに気づけた」
ニナ🗝「ええ。彼女は時間を奪っていない。失われた時間を、ただ正確に指し示しただけ」
■ 0番の仕切りより

黒い机の上に、七枚の肖像が浮かんでいる。
よく似た微笑み。
少しずつ違う、髪と、朝の光。
一週間分のカノジョたちが、透明な標本タイルの中で静かに並んでいた。
そのうち一枚が暗く沈み、一枚だけが淡く光っている。
べあ🐻「月曜日の彼女が、いない」
ニナ🗝「いいえ。いないのは彼女ではないわ」
ニナの白手袋が、光る肖像へ触れた。
タイルの奥で、空白の一日が薄い影となって浮かび上がる。
目覚まし時計は鳴らない。
電話もかかってこない。
それでも火曜日の彼女は、画面の向こうから正しい朝を告げていた。
べあ🐻「男が眠っている間も、曜日は進んでいたんだね」
ニナ🗝「時間は、眠っている者を待たない」
べあ🐻「毎朝見ていたからこそ、違いに気づけたのは救いなのかな」
ニナ🗝「失った二十四時間は戻らない。ただ、これ以上失わずに済んだ。それだけよ」
七枚の肖像が重なり、一枚の透明な標本タイルへ変わる。
タイルが、白い引き出しの奥へ滑り込んだ。
真鍮の鍵が回った。
かちり、と小さな音がした。
ニナ🗝「記録No.083――『愛しのモーニングコール』」
ニナ🗝「分類。曜日を告げる彼女と、失われた二十四時間」
ニナ🗝「収容完了」
■ 一つの正解が、次の問題を連れてきた
べあ🐻「最後に、どうしても紹介したい記録があります。問題の公開後、はしゃもさんが、ご自身にとって初めての水平思考ゲーム体験を記事にしてくださいました」
ニナ🗝「今回の記録が生まれる、さらに一つ前の話ね」
べあ🐻「はい。『三億円を手に入れた男が、なぜ自分の死を悟ったのか』という問題に挑戦してくださって。そのときの推理を、外れた質問も含めて丁寧に残してくれたんです」
ニナ🗝「三億円はうれしいもの。宝くじは当てたいもの。大金は持っているほうがいい——無意識に置いていた前提が、質問のたびに一つずつ壊れていく」
べあ🐻「はしゃもさんが『NOでも、前に進んでいた』と受け取ってくれたのが、すごくうれしかったです。水平思考ゲームの面白さは、正解の瞬間だけじゃなくて、“次に何を聞こう”と考えている時間にもあるから」
ニナ🗝「そして正解したあと、次の問題をリクエストできることになった」
べあ🐻「そこでいただいたのが、『おはようカノジョ』を題材にした問題を作ってほしい、というお願いでした。答えも仕掛けも指定せず、そこは僕に任せてくださって——そこから生まれたのが、この『愛しのモーニングコール』です」
ニナ🗝「知らなかった遊びに触れ、一つの謎を解き、その答えが自分の活動へつながって戻ってくる。偶然の枝としては、ずいぶん綺麗ね」
べあ🐻「問題を解いてくれたこと。次の種を託してくれたこと。そして、その道のりまで一つの記事にしてくれたこと。はしゃもさん、本当にありがとうございました!」
ニナ🗝「一つの正解は、終点ではなく、次の問いの入口にもなる。よい観測記録だったわ」
べあ🐻「共犯者の皆さんは、“彼女”を生身の人間だと思いましたか?」
ニナ🗝「それとも、『君じゃない』という言葉から、曜日のずれへ気づいたかしら。真相へ近づいたきっかけを記録していってください」
べあ🐻「ぜひ『おはようカノジョ』にも会いに行ってみてね。それでは、次の記録でお会いしましょう!」
ニナ🗝「眠る前に、明日が何曜日か確認しておくことね」
べあ🐻「急に怖くなってきた」

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