【建築のタネ】円というカタチ
円というカタチ
─「円」という形が持つ意外な特性とは?─
No.006 #造形論_bn #詳細解説_bn #動画解説_bn
今回は、「円」という形が潜在的に持っている特性とその制約についての話をします。
「まる」です。まるの話をします。
■ 円の特徴
円はどこから見ても均一であり
外周全体が「壁」となりながらも
「流れ」を受け流す柔軟性を持つ形です。
「表」と「裏」がなく、「辺」や「角」も存在しません。
そのため、円は完全な自己完結型の形状といえます。

この「隙の無さ」こそが、円の持つ最大の特徴なのです。
■ 円のデザインを使う際の注意
しかし…
この「隙の無さ」がデザインにおいては思わぬ制約になることもあります。
例えば
都市に開かれた公共施設の形として円形の平面が提案されることがありますが、それは本当に「開かれた形」なのでしょうか?
あくまで、これは造形そのものの性質の話ですが
円は外部との明確な境界を持つため、意図せず「閉鎖的な印象」を与えることもあります。視線の抜けや、開口部の設計次第では、外部と内部のつながりが希薄になる場合もあります。
■円が閉鎖的にならないように対策しよう
円形のデザインを採用する際には、以下のような点を慎重に検討する必要があります。
断面で対処する:庇を伸ばすなど、断面を工夫することで対処可能
動線の工夫 :円の中心をどのように使うか
入口の配置 :円の一端を崩す
※巻末のデータベースで詳しく解説します
■まとめ
「円」は完結した形であるがゆえに、適切に扱わなければ「閉じる」力が強く働く形状です。デザインの意図に応じて、どのように開くかを意識することが重要なのかもしれませんね。
▶関連記事
断面方向での対処方法を知るには軒の特性を知ることが大切です。
次のコラム(No.007~009 )から詳しく解説します。
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■動画解説

BEAVERではYouTubeに解説動画も用意しています。
「円というカタチ」とその「おまけ」までご覧ください。
■詳細解説
実例による解説(動画の内容の解説)

SANAAが設計した「金沢21世紀美術館」は「円形」であることに加え、軒を伸ばさずにストンと断面を切り落とす造形をとっています。
造形のみを見れば、これは明らかに「閉じた造形」なのです。
そこで「閉じた状態」を断面方向で緩和する方法を考えます。
この場合は、少し軒を伸ばすことで建物付近に寄り添うきっかけを与えることが可能です。

また、軒の影の中はガラス面の光の反射を抑えるため、内部への視界がよりクリアになる副次的な効果もあります。これによって内部への求心力は増すことでしょう。

SANAAの案件にて、全体は円形ではありませんが、「ロレックスラーニングセンター」の断面も切り落とすような造形です。しかしここでは…


建物全体がうねるように起伏ある造形をしているため、その下をくぐるように建物へアプローチすることが可能になっています。
動画の末尾を「SANAAの隙の無い設計」と結びましたが、
その後の「グラングリーン大阪 の大屋根」(2024)の案件など、軒の中間領域を利用して「円形」に対して明らかに隙を与えるような設計をしており、まさに「円」のような隙の無い設計になっているのも驚きです。
以上、「円というカタチ」の解説でした。

