【建築のタネ】シニフィエとシニフィアン
シニフィエとシニフィアン
─言語と認識の違い─
No.056
スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュールが提唱した「シニフィエ(概念)」と「シニフィアン(音や文字)」という構造は、単なる言語学の話にとどまりません。私たちが世界をどのように認識し、表現するのか——その“切り口”を探るヒントにもなります。

程度に覚えていれば役に立つかもしれません
■「パピヨン」という概念
たとえば、フランス語で「パピヨン」は一般的に「蝶」を意味しますが、蛾の意味も持っています。意味合いとしては、蛾を「夜の蝶」と言い表すようです。しかし、日本語では「蝶」と「蛾」を名前できっちり分けて捉えます。さらに言えば、パピヨンという「犬」もいますよね?これはどういうことなのでしょうか?
この違いは、言葉の響き以上に、文化の背景や自然観のズレを映し出しているのかもしれません。
■建築デザインにも潜む“認識のズレ”
この「切り口の違い」は、建築においても無縁ではありません。日本の鳥居を例に説明します。
≪鳥居の“意味”と“かたち”≫
・シニフィエ(意味・概念)
:神聖な領域への入口、境界を示す構造、儀礼的な通過点など
・シニフィアン(音や文字)
:「とりい」という音、「鳥居」という文字表現
これを英語にするとたいてい「torii gate」になります。でも「gate(門)」という語から連想されるイメージは、西洋の城門やアーチのようなものだったりして、私たちの思う「鳥居」とはちょっとズレが生じます。鳥居には聖域を示す大事な役割を持っています。
この小さな“翻訳の誤差”が積もると、空間の意味の伝わり方まで変わってしまうかもしれないのです。「gate」というシニフィアンにだけにとらわれることなく、この背景にある文化的な意味(シニフィエ)を正確に捉えないと、その認識に間違いが生じるのです。

これを「ゲート=門」と読むと完全に見誤りますよね
■「ヒュッゲ」というシニフィアン
また、デンマークの言葉で、「ヒュッゲ」という単語があるのですがご存じでしょうか?

詳しくはいずれ解説しますが、
「ヒュッゲ(hygge)」というのは、北欧・デンマークの言葉で、日本語にははっきり訳せない“居心地のよい時間や空間”を表す言葉です。
日本語には「くつろぐ」「ぬくもり」「まったり」といった言葉があります。 でも、「ヒュッゲ」はそうしたひとつひとつの感覚がぎゅっと束になったような言葉で、 しかもそれが、「人と過ごす関係性」や「季節」「場所」などと結びついている。かなりふわっとした言葉だったりします。
ニュアンスとしてはわかるのですが、この「意味と単語の結びつき」は文化圏によって異なるのです。この差異は海外事例に取り組み際に、かなり重要になってくる場合がありますので、ぜひ覚えておいてください。
■異文化の視点をデザインに生かす
シニフィエとシニフィアンの関係を意識することは、他者の視点を設計に取り込む切り口の1つでもあります。 極端な話で例えれば、海外のプロジェクトで鳥居的な要素を取り入れるとき、本質的な意味(シニフィエ)をどう表現するか、(シニフィアン)を工夫する必要があります。鳥居=「ジャパニーズ・ホーリー・ゲート」の方が伝わるのでは?ということですね。
■まとめ
建築とは、意味を空間に翻訳する行為とも言えます。だからこそ、言語の構造と向き合うことは、設計の奥行きを深める大切なきっかけになるのです。
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もう少ししっくりくる言い回しがあればまたいずれ
記事を書こうと思います。
