【建築のタネ】斜めの壁とシークエンス
斜めの壁とシークエンス
─視線が動けば空間も動く─
No.069
私たちは建築の中を歩くとき、無意識に視線を動かしながら空間を体験しています。そんな「移動」と「見え方」の関係に着目すると、空間設計の面白さがぐっと深まってくるんです。

■ シークエンスとは?
建築では「移動することで風景が変化していく体験」のことをシークエンス(sequence)と呼びます。 空間をただ「作る」のではなく、使う人がどうやってその中を動くか、何が見えるかまで含めてデザインする。
視線や動線を意識した設計は、建築の魅力を一段階引き上げてくれます。 ちなみに「シーケンス」と表記されることもありますが、どちらも同じ意味です。BEAVERはひとまず「シークエンス派」とします。
■ 斜めの壁が生み出す視覚効果
たとえば斜めに設けた壁。これがあるだけで、動くたびに視界が切り替わり、まるでカーテンを手で払うように、次のシーンがふわりと現れます。 遮るけれど、全部は見せない。
この"チラ見え"が、空間への期待感を引き出します。奥行きも感じられるし、視覚的なリズムも生まれます。 光の入り方や影の動きまで計算すれば、静かな演出を仕込むこともできるのです。照明計画も大事ですね。
具体例として…
新潟県上越市にある「桝屋本店」(設計:平田 晃久)があります。グリッド状平面というシンプルな構成ながら立面の壁すべてが斜め、というユニークな構成の建物です。右へ左へと歩を進めると壁と壁との重なりが変化し、その奥行き感が常に移ろいます。

(ここは農耕機械を扱う店舗です)
上記URL(東西アスファルト事業協同組合/2021年の平田氏演録)より引用
空間を構成するルールは非常にシンプルですが、そのシンプルさゆえに空間の多様性が引き立っているとも言えます。
■ 注意点──安全性への配慮
ただし、斜めの壁は形状が特殊なため、頭をぶつけるリスクや視認性の問題もあります。 天井との接点を高めに設定する、傾斜の角度を緩やかにするなど、安全面のデザインが欠かせません。 視覚の演出と身体の安全、その両方を丁寧に扱うことで、心地よい建築体験が生まれるのではないでしょうか。

公共建築では後付けクッション材をよく見ますが
あれをやってしまうとデザインの敗北を感じますね…。
■ まとめ ─ 空間を"体験"する設計へ
斜めの壁は、空間を静かに動かす装置です。 使う人の動きに呼応しながら、少しずつ景色が変わっていく。そんなシークエンスを設計の中に取り込んだ空間は、素晴らしい空間体験をもたらしてくれます。
とはいえ、検討するのは非常に難しい要素ですので、なるべく良いシークエンスをもたらしてくれる建物やそんな景色になるべく多く触れることが、一番の近道かもしれません。
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もっと大きなスケール感でシークエンスを考えたのが、下記の「空間体験はどこから?」になります。室内外共にシークエンスは存在するのです。
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