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⏱️タイムトラベルフォトブック|振り返り✈️バリ島 サヌール Griya Santrian a Beach Resort & Spa旅の記録

旅の記憶というのは、不思議なものです。時間とともに少しずつ輪郭があいまいになり、景色も感情もどこか霞がかっていきます。でも、ふと一枚の写真を見返した瞬間、その場所の空気や光、当時の会話までもが驚くほど鮮やかに蘇ってくることがあります。

このエッセイでは、そんな写真の力を頼りに、記憶の奥にしまい込まれた旅のひとときを掘り起こしていきます。このエッセイシリーズも第6回を迎えました。今回振り返るのは、2015年の5月ゴールデンウィーク、妻とふたりで訪れたバリ島・サヌールでの旅です。

旅の準備を進めていた当時、インドネシアにまつわるあるニュースが世間を騒がせていました。日本が長年にわたり構想し、調査を重ねてきたインドネシアの高速鉄道計画を、最終的に中国に奪われたというものでした。JICA主導で地質調査まで行い、着実に積み上げてきた日本の提案が、最後の最後で“財政負担ゼロ”という破格の条件を提示した中国案にひっくり返される形で退けられたと知り、なんとも言えない思いになったことを思い出されました。

「まじめに積み上げたものが、最後に勝てるとは限らない」――そんな現実が、なんとも切なく、そして心細くも感じられたのです。かつて“誠実であること”が評価されていた時代を思えば、国際社会での日本の存在感が少しずつ色あせているような気さえして、寂しさを覚えたのを今でもよく覚えています。

そんな複雑な気持ちを抱えながらも、私たちは予定通り旅に出ることにしました。行き先は、バリ島南東部にあるサヌール。空港から車で30分ほど、クタやヌサドゥアほどの華やかさはないものの、落ち着いた大人のリゾート地として人気のエリアです。朝日が美しく、長く続く遊歩道沿いにはローカルのワルン(食堂)や小さなカフェが点在し、どこか懐かしさを感じさせる雰囲気に包まれています。

初めてのバリ、初めてのサヌール。訪れてみると、そこには政治の駆け引きも、大国同士の競争も、何もなかったかのように、ただ穏やかな風と波の音がありました。そして何より、出会ったバリの人々の気さくで温かい人柄に、心がほっとほどけるのを感じました。

今回の旅は、アクティブに観光地を巡るようなものではなく、どちらかというとホテル滞在を中心に、ゆったりと過ごす時間を大切にしたものでした。そのため、旅程として特筆すべき「出来事」は正直あまりありません。ただ、サヌールの空気感やホテルの雰囲気を少しでも感じ取っていただけたらうれしいなと思いながら、こうして記録を綴っています。

「なんだ、あまり動きのない旅だな」と思われるかもしれませんが、そんな静かな旅だからこそ見えてくる景色や感じたこともありました。

そして実は、何気なく過ごしていたこの旅の終盤、最終日にある“衝撃的な出来事”を目の当たりにすることになります。思いがけず、それは強く記憶に残る体験となりました。

それでは、そんな静かでどこか忘れがたいサヌールでの旅の記録、本編へとまいりましょう。


バリ島・サヌールの記憶 〜初日〜

2015年5月1日|旅のはじまりは羽田空港のJALラウンジから
2015年5月1日。旅の幕開けを告げる一枚の写真には、羽田空港のJALラウンジで食事を楽しむ様子が写っていました。振り返れば、いつもながら旅の出発前は、ここでしっかりと“腹ごしらえ”をするのが我が家の定番です。

この日も例に漏れず、テーブルにはお寿司が数貫と、香り立つJAL特製カレー。滑走路を見渡す窓際の席で、飛行機の離着陸を眺めながらいただくそれは、旅気分を一気に高めてくれる一皿です。特にこのカレー、どこか懐かしさのある味わいで、機内食よりもむしろ「これを食べなきゃ旅が始まらない」とさえ感じるほど。

日常から少しずつ解き放たれ、非日常へと心が切り替わっていくこの時間。空港のラウンジは、“旅の序章”にふさわしい静けさと期待感が漂う場所です。さて、ここから、バリ島サヌールへの静かな旅が始まります。

中トロとボタン海老の寿司
定番のJALカレー

バリ島・サヌールの記憶 〜2日目〜

2015年5月2日|早朝のジャカルタ経由、そしてバリ島へ
日付が変わって迎えた5月2日、飛行機はまずインドネシアの首都・ジャカルタに到着しました。写真に残っていた時刻は「6時53分」。これは日本時間での記録なので、インドネシアの現地時間に直せば、ちょうど朝の4時53分ということになります。普段からカメラの時刻設定を現地に合わせる習慣がないため、こうして旅の記録を振り返るときには、時間のズレがちょっとした謎解きのようになります。

ジャカルタでは乗り換えを済ませ、次の目的地バリ島へ向かう便へ。再び空の旅を経て、バリ・デンパサール国際空港に到着したのは現地時間で午前10時5分ごろ(日本時間ではお昼の12時5分)。空港の出口を出た直後に撮られた一枚の写真には、強い南国の陽射しと、旅のワクワク感がにじんでいました。

長時間のフライトと乗り継ぎの疲れを感じながらも、「ようやくバリに来たんだ」という実感がじんわりとこみ上げてきたのは、空港の外に出て肌で感じたあの温かい風と、どこかスパイスのような香りが混じる空気のおかげだったかもしれません。

バリ空港に到着直後

空港からホテルまでは、おそらく乗り合いのミニバスで向かったのだと思います。

今回宿泊先に選んだのは、サヌールのリゾート「Griya Santrian a Beach Resort(グリヤ・サントリアン・ア・ビーチリゾート)」。サヌールのビーチ沿いに静かに佇むこのホテルは、バリらしさを感じられる伝統的な建築と装飾が随所に施され、どこか懐かしさすら感じる落ち着いた雰囲気が印象的でした。

緑豊かなガーデンの中にヴィラタイプの客室が点在し、敷地内には3つのプールとビーチ直結のレストラン。派手すぎず、でも上品な佇まいが、大人のリゾートといった趣です。スタッフも穏やかで、丁寧ながらもどこか肩の力が抜けた接客が、サヌールという土地の気質を映しているように思えました。

チェックインの手続きを終えて、南国らしい花の香りと静かな風に包まれながら、ようやく「バリに来たんだな」と実感したのを覚えています。ここから、ゆったりとした時間の流れがはじまります。

ホテルWebサイトのGalleryより
ホテルWebサイトのGalleryより
部屋も広々

荷物を軽く整理したあとは、もう迷わず水着に着替えてビーチへ向かいました。グリヤ・サントリアンはビーチフロントのホテルなので、部屋を出てほんの数分で白砂の海辺にたどり着けるのが魅力のひとつです。

南国の陽射しはすでに高く、砂はほんのりと熱を帯びていて、裸足で歩くたびに旅先の実感がじわじわと足元から湧き上がってきます。

ビーチに並んだデッキチェアに腰を下ろし、ただ潮風に吹かれながら、波の音をBGMにしてごろりと横になれば、あっという間に体も心も“リゾートモード”に切り替わっていきました。

気がつけば、何をするでもなく、ただ空を見上げたり、海をぼんやりと眺めたりしながら、ゆるやかに時間が流れていきます。そしてそのまま、日が傾き、空がゆっくりとオレンジ色に染まるまで、私たちはずっとビーチにいました。

何もしない贅沢。旅の初日から、それを思い出させてくれるような時間でした。

夕暮れのビーチでのんびり過ごしていると、さすがにお腹が空いてきました。日差しと潮風に包まれていると、体力以上にエネルギーを使っているようで、空腹感もどこか心地よく感じられます。

いったん部屋に戻り、シャワーを浴びてさっぱりと汗を流し、軽く着替えを済ませたら、夕食をとるためにホテルの外へ出かけることにしました。

向かったのは、ホテルから歩いて数分の場所にあった小さなワルン。観光客向けというよりは、地元の人もふらっと立ち寄るような素朴な佇まいで、灯りの温かさがどこか安心感を与えてくれます。

バリ島に来たら、こうしたローカルの食堂でごはんを食べるのが旅の楽しみのひとつ。値段も手ごろで、何より素朴な味つけが好きです。

ワルンの素朴なテーブルに腰を下ろし、メニューを開くと、見慣れた言葉がちらほら。英語とインドネシア語が入り混じったメニューを指さしながら注文したのは、目玉焼きと焼き鳥の照り焼きがのったナシゴレンと、大ぶりの海老がどんと添えられたシーフードナシゴレン。

こういうローカル飯を、あれこれ話しながらゆっくり味わう時間は、レストランのコース料理にはない、旅ならではの贅沢だなと改めて感じます。

腹ごしらえを済ませ、少しだけ賑わいの残る通りを歩いてホテルへ戻るころには、空もすっかり夜の色に染まっていました。サヌールで迎えた最初の夜は、こうして穏やかに更けていきました。

バリ島・サヌールの記憶 〜3日目〜

2015年5月3日|静かな朝とホテルの風景
この滞在中、写真を見返しても、朝食の様子が残っていませんでした。どうやら今回は、朝食なしの宿泊プランを選んでいたようです。

そのぶん、朝はゆっくりと目を覚まし、あわてずに一日の始まりを迎えました。特に予定を詰め込まず、ただのんびりと過ごす旅にしたかったのかもしれません。

身支度を整えたあとは、ホテル内のプールへ向かいます。宿泊していたグリヤ・サントリアンの敷地内は、バリらしい伝統的な装飾や石像、緑に囲まれたガーデンがほどよいバランスで配置されていて、歩いているだけでも気持ちが落ち着きます。

特に急ぐこともなく、気に入った場所を見つけては立ち止まり、写真を撮ったり、ただ眺めたり。リゾートというより、静かな庭を歩いているような感覚でした。こういう何気ない時間が、あとになって思い返すと一番記憶に残っていたりします。


プールでは、特に何をするでもなく、ただのんびりと過ごしていました。水に入ったり、デッキチェアに寝転んだり、本を読んだりと、思い思いのスタイルで時間が流れていきます。リゾートらしいこの「何もしない贅沢」は、旅先ならではの醍醐味かもしれません。

気づけば、時計はもう13時を過ぎていました。さすがにお腹が空いてきたので、ホテル内のレストランでランチをとることに。ちょうどプールとビーチの間にテラス席があり、潮風を感じながら食事ができるロケーションになっています。写真を見返すと、テーブルの上にランチが並び、海を眺めながらゆっくり食事を楽しんでいる様子が写っていました。派手さはないけれど、こうした穏やかな時間が旅の記憶に深く残るのだと、今になってあらためて感じます。

ランチに選んだのは、ソフトフランスパンのサンドイッチと、目玉焼きが挟まったハンバーガー。どちらも気取らないメニューですが、旅先で食べると不思議と満足感があります。

ランチを終えたあとは、再びプールへ戻り、のんびりとした時間を満喫しました。水に入って涼んだり、デッキチェアで寝転んだり。日差しはやわらかくなりはじめ、午後の光に包まれながらのひとときは、なんとも心地よいものでした。

しばらくしてから、気分転換も兼ねてホテル周辺をぶらぶらと散策することに。サヌールはクタのような賑わいとは違って、ゆったりとした空気が流れる落ち着いた街です。通りを歩いているだけで、どこか旅の実感がじんわりと染みてきます。

この日の最後の一枚は、ホテルのエントランス前に立つ看板の前で撮った記念写真でした。きっと、何気ないけれど「今ここにいる」ということを残しておきたくなったのでしょう。

周辺散策後にホテルの看板前で記念撮影

バリ島・サヌールの記憶 〜4日目〜

2015年5月4日|ただただ、のんびりと
この日も、特に予定は立てず、朝からプールとビーチを行ったり来たり。日陰を見つけてはゴロリと横になり、ときには陽に当たりながら本を開いたり、ただ目を閉じて風の音に耳を澄ませたり。

ふと気がつくと、小さな鳥がプールの縁にとまり、水面でパシャパシャと水浴びをしていました。その様子をただぼんやりと眺めるだけでも、どこか贅沢な気分になれるのがリゾートの不思議なところです。

こうして書き残すほどの出来事はなかったけれど、だからこそ心からリラックスできた一日だったように思います。本当に、何もしていません。でも、それがとてもよかったのです。

鳥が時折水浴びに

午後も引き続き、気ままに過ごしました。さすがにずっとプールサイドでのんびりしていると、少し身体がうずうずしてくるものです。そんなときは、ホテル周辺を軽く散策。サヌールの街並みは派手さこそないものの、小さな雑貨店やカフェ、地元の人たちの暮らしを感じる風景が広がっていて、ぶらぶら歩いているだけでも不思議と落ち着きます。

ひっそりとスターバックスはありました。

歩いているうちに自然とお腹も空いてきたので、夕食はまた地元のワルンへ立ち寄ることにしました。この日のチョイスは、香ばしく焼かれたサテと、スパイスの香りがしっかりと効いたバリカレー。
こうした素朴で温かい料理が、旅先での食事としてはちょうどいい。ゆったりとした空気の中での食事は、味だけでなく時間そのものを楽しんでいるような気分になります。

バリ島・サヌールの記憶 〜帰国日〜

2015年5月5日|見逃してしまった朝焼けのことと、最後の衝撃
いよいよ帰国の日を迎えました。長いようであっという間だったサヌールでの滞在も、これで終わりかと思うと、名残惜しさがじんわりと湧いてきます。
写真を見返していて、ふと思い出したことがあります。このホテルの前に広がるビーチは、朝日が美しいことで知られている場所でした。妻は旅行前からそのことにインターネットで調べていて、「滞在中に一度は早起きして見に行こうね」と言っていたのを覚えています。

そして、その言葉どおり、妻は本当に早起きをして、まだ空気の冷たい時間帯に一人でビーチへ向かったようです。写真には、水平線から静かに昇っていく朝日と、柔らかな光に染まる海辺の風景が収められていました。
一方の私はというと…というと、起こしてもらったにもかかわらず、布団の誘惑に勝てず、ついに起きられずじまい。あとから妻にそのことを言われて、「あのとき、妻はちょっと不機嫌だった」当時の空気を思い出しました。

特別な観光地を巡ったわけでもない、ただ静かな滞在だった今回の旅。でも、こうしたちょっとしたすれ違いや思い出こそが、あとから振り返ると旅の色彩を豊かにしてくれているような気がします。

帰国日とはいえ、飛行機の時間まではまだ少し余裕がありました。名残を惜しむように、この日もぎりぎりまでプールサイドでのんびり。最後の太陽を浴びながら、バリでの滞在を静かに振り返っていました。

そんな中、妻が「帰る前に、マッサージを受けたい」と言い出し、せっかくなのでランチも兼ねて街中までタクシーで出ることにしました。

ランチには、ハンバーガーとフルーツ、そしてメロンの生絞りジュースをが写真で残っていました。何気ないメニューでしたが、バリという空気がどこか特別に感じるものです。

こうして、残された時間をゆるやかに楽しみながら、いよいよ帰国のときが近づいてきました。

​帰国の準備を整え、最後にもう一度だけビーチを歩こうと足を運んだそのとき、目の前に広がっていたのは、それまでの穏やかで美しい光景とはまったく違うものでした。波打ち際から浜辺にかけて、大量のゴミが打ち上げられていたのです。あの静かで清潔感のあったサヌールのビーチが、一夜にして無残な姿に変わっていたのは衝撃的でした。

ホテルのスタッフに尋ねてみると、「ときどきこういう日があるんです」と、落ち着いた口調で教えてくれました。特に雨季や季節風の影響で、近隣の島々や海から大量の漂流ゴミが一気に押し寄せることがあるのだそうです。そうした日には、ホテルのスタッフ総出で清掃にあたり、可能な限り元の美しさを取り戻す努力をしているとのことでした。

ふと思ったのは、もしこの光景が私たちの滞在初日に広がっていたら、きっと旅の印象はまるで違ったものになっていたかもしれないということです。幸運にも私たちは美しい海を楽しめましたが、あのビーチがいつもあの姿とは限らないという現実に、複雑な気持ちになりました。

そのときのことを思い出しながら今回の記録を書いているうちに、今のバリ島はどうなっているのだろうと気になり、少し調べてみました。

現在、バリ島では年間およそ160万トンもの廃棄物が発生しており、そのうち約20%がプラスチックゴミといわれています。適切な処理体制がまだ十分とはいえず、観光客の増加も相まって、海洋汚染や生態系への悪影響が問題となっています。

インドネシア政府はこの状況を受けて、海洋プラスチックゴミを2025年までに70%削減するという目標を掲げ、対策を進めているそうです。また、バリ島ではすでにビニール袋の使用が禁止され、環境に配慮した宿泊施設の導入など、持続可能な観光地を目指す動きも見られます。

ただ、こうした取り組みだけではやはり限界があるとも感じます。私たちのような観光客一人ひとりの意識と行動も欠かせません。ゴミは持ち帰る、使い捨てを減らす、環境にやさしい選択をする──ほんの小さなことかもしれませんが、積み重ねが大事だとこの光景を見たからこそ思えます。

美しい自然を、次の旅人たちにちゃんと手渡していくために。旅を通して自然と触れ合うたびに、そんな気持ちを忘れずにいたいと、改めて強く感じた出来事でした。

最後に思いがけない光景を目にすることにはなりましたが、そんな出来事も含めて旅のひとつの思い出として胸に刻みながら、サヌールでの滞在は静かに幕を閉じました。荷物をまとめ、名残惜しさを感じつつ、私たちは空港へと向かいました。

無事バリ空港に到着。

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