XLRケーブルの謎⑤
☆プロローグ
2号機の報告をした前回の『謎④』を公開した時点で実は既に3号機は、コネクタを付ける寸前でバラして、今一度組み上げた上でコネクタを付けていた。したがって3号機は機器に接続して、通電から7日間以上経った。1号機と2号機は2週間ほど試聴したが、3日で安定して、その後の音質の変化は感じられなかった。今のところ、3号機も同様のようだ。
☆3号機を試して
試聴した感想だが、満足である。自分だけなら、ここでおしまいにするかもしれない。
自分だけなら?
1号機から3号機にかけて、ホットとコールドの対称性、及び、左右の対称性、そして信号線以外の誘電物質を極力減らし、シースや絶縁材に使われる樹脂の悪影響を削り込みながら、しなやかさを保持する、というのを基本的な目標にしてきた。今後はさらに精度を上げる、かつ、安定させる、そしての核心の一つである、差動ペアと左右ペアのマッチングもはかる。
ケーブルは、音楽家と聴く者とを繋ぐ技術、語源的な意味での、art、だ。この記事は「XLRケーブルの謎」と題している。バランス伝送の歴史は100年だろうか?オーディオで使われるXLRケーブルの歴史は、ITTの「キャノン」を起点にしても、70年。これだけの歳月の果てにいったい今更なぜケーブルに謎が残るというのか?残るのだ。繋ぐ機器が違うから。しかし、謎の未決に拍車をかけている業界に自分の人生の音楽体験を譲るつもりはない。



3号機の試聴の感想を書いておく。
後方定位の威力が格段に上昇した。これは、推測の通りならば、さらに上げることができるが、その上限は、
①機材:
・DST-0オリオdeスペシャル
・TOPWING、Ultra Slim I2S
・HoloAudio、May DAC KTE
・アコースティックリバイブ、XLR-1.0TripleC 1.4 x 1.8mm 導体仕様
・Esoteric、C-02&S-02
・ACROLINK、7N-S1400Leggenda(切り売りSPケーブル)
・B&W、800D3
(自作XLRケーブルはC-02とS-02の間を接続)
②セッティング
③ルームチューニング
④電源
という4つの要素の総合となる。3号機を改修した場合の後方定位の威力のマックス値の話だ。3号機よりも、上記の4要素の総合はまだ勝っているように思えるので、XLRケーブルの改善でまだ上がる余地があると思うということ。
ぐっと低いところから構造的にどっしりと構えた形で展開されて、鮮烈なインパクトで迫りくる音の虚焦点は深い。オーケストラではオケの配置もだが、マイクの置き場が見えてくる。また、ピアノは、もう少しで、左右の手の奥行方向の明確な位置と移動が見える。
帯域は細径と比べて広い。中高域の満足度は細径と変わらない。艶やかな煌めきをもち、弱音の幽けきを再現する。声の濃密な表現も好ましい。低域は、やはりというべきか、もっとも拡張された。等身大の鮮烈なエネルギー感を伝え、部屋の空気分子を大きな手で掴んで、揺さぶってくる。分子の振動が全身の体表にはっきりとアプローチして、巨大な波が何度も押し寄せる。圧倒的である。
このケーブルが優れているのは、上記①〜④を反映する、その追従性の高さである。
☆次と謎
測定を徹底的に行う。3号機は組み上げる前にバラしたという話をした。測定が甘いと思ったからだ。市販のケーブルの大半はバルク品としてのケーブルに端末処理とその他、魔法の処理をしたものである。このケーブルがシースの内部で撚ってある場合、導体がホットとコールドで同じ長さとは限らない。左右ペアにしたら、外シースの長さは同じかもしれないが、導体の長さは数mm違うかもしれない。間違いなく言えるのは、シース内部の導体の状態、それは知るすべがない、ということである。
いや、すべはある。ラインケーブルの導体を不可視にしてしまうシースは、固有の振動を加えてしまい、誘電性まで持つ。シースは柔軟な保持には役立つが、デメリットが多い。厚いシースをやめる。少なくとも信号線から遠ざける。これが、一連の試作の基本的なアイデアであり、シースに埋もれて、大切なのに測りようがない哀れなラインケーブルの導体を、正確に測る。
差動であろうと左右であろうとペアならば当たり前だと思わないだろうか?高級なアンプは計測してマッチングをする。しかし、高級なケーブルは?導体の長さを測るのは、当たり前だし、魔法のような音質改善効果を生むものではない?
理由はここでは書かないが、また、システムの精度の問題も関わるので多少複雑なのだが、魔法のようだが魔法ではない音質改善効果を、優れた機器やセッティングやルームチューニングから得るには、導体の長さを測定する必要がある。
しかし、導体はたわむ。測定しようとすると、跳ねあがり捻れバラつくのだ。真っ直ぐに伸ばさなければならない。強く引っ張っても意味がない。丁寧に伸ばして、その状態を保持して、組み上げなければならない。信じがたいほどの手間だが、押さえたまま伸ばして測って組むしかないのだ。
これが測定の第一の局面である。測定の第二の局面は、完成品の電気的特性である。長さを合わせても、半田付けの精度、シールドの当たり具合、また、ランダムで局所的な応力などの要因によって、ケーブルは対称性を喪失する。こうしたことをコントロールしながら作製しコネクタや外装まで含めて対称性を保持しなければならないし、そうなったかどうかを測定しなければならない。
まず、4端子測定ができる測定器具を購入することにした。ケルビン測定とも呼ばれる4端子測定は、電流±と電圧±の4端子であり、風袋を除いて測定対象の実質をより精緻に調べることができるだろう。ケーブルの差動ペアの対称性と左右の対称性をチェックし、マッチングを客観的に行うことができるだろう。
しかし、この種の測定器はテスト棒やワニ口クリップが標準的な手先であるので、調べたい対象が完成品としてのコネクタ付きケーブルならば、相応の治具を作らなければならない。
しかし、完成したXLRケーブルの各ピンに安定した、また、形式的に一貫したやり方で、かつ、最短の配線でプローブを当てる治具は、XLRであれば簡単だと思う。
①レセプタクル(XLRソケット)をオスとメスを1つずつ用意
②ソケット裏の各電極を拡張して、例えば1番と3番に同時にケルビン仕様のワニ口を付けらるようにする。素早く簡単に2番と3番に切り換えられるような余裕のある状態にするのは、ソケット裏に単線を3cmくらい出せば十分だろう。
③XLRソケットを固定する。バイスやクランプや金属板に固定する場合は接触部を絶縁。絶縁テープやナイロンネジやナイロンスペーサーを使えばよいだろう。
次回は、XLRケーブル測定用の簡易治具を紹介できるだろう。
ケーブルは4号機を作る。もう一度、シールドをする。質量を上げる。3号機はコモンモードチョークを試す。アコースティックリバイブが扱っているFINEMETビーズを入手した。これをコネクタ内に搭載してみる。これで、シールドケーブル(4号機)とコモンモードフィルタリング機能付き(3号機改→5号機)とを比べて、ノイズの乗り方を調べる。その上で必要なものを選別して、洗練された6号機を2本作り、マッチングも取る。
試作機が増える可能性は否定しないが、そうなるのは、3号機が既に素晴らしいからである。素晴らしいものをさらに素晴らしくするのは難しい。
この「XLRケーブルの謎」シリーズで試作を重ねているケーブルを「ゴータXLR」と名付けた。正しくはGåta XLRという。スウェーデン語で、gåtaは謎を意味している。これをエントリークラス帯の値段で販売する予定だ。ケーブル、それは確かに音楽とリスナーの絆だ。そして尋常ではない手間をかけて仕上げているが、ケーブル単体で超絶の体験を約束する逸品というよりも、DACやアンプ等の機材、そのセッティング、そしてルームチューニングの出来を反映する、そういう純粋な企図を理解してもらえたらと思う。その名に反してゴータXLRには謎や秘密はない。今更XLRケーブルに関して秘密を語るつもりなどない。
風呂敷を広げるのはここまでだ。完成を待たれたい。
☆オリオスペックのウィスキー
測定器を秋葉原に買いに行った。久しぶりにオリオスペックに行った。試飲会をやっていていた。





