XLRケーブルの謎③
☆プロローグ
前回の「謎②」は、導体数、コネクターの構造について扱い、最後に、XLRケーブルの1番ピンとシェルを短絡させることは、90年代のNeil Muncyが提唱した”PIN 1 problem”を経た後の機器には有効ではなく、無用なのではないかと疑義を呈して終えた。
ケーブルのコネクター内の1番ピンとシェルを短絡した状態で機器と接続すると、機器の1番ピンとレセプタクル外周との間で小さなグラウンドループができる。おまけに、日本製のオーディオ機器の大半がACアースを接続しない構造になっている。こうなると、シールドはノイズが流れているのに機器の端子の直近でグラウンドループができており、さらに、ACアースのような機器外部への排出口がない、というノイズの掃き溜めのような状況ができあがるのではないだろうか。また、電源を入れっぱなしでXLRケーブルを抜き差ししたいと思う人が、1番とシェルを短絡させるのは勝手にしろなのであって、一般化するのはおかしい。
今回は1号機の自作。音はなかなか良い。が、満足な音質ではなかった。また、いくつか発見があった。1号機はシールドをシェルにも1番ピンにも繋がなかった。
☆自作XLR 1st
1号機を制作した。今のところ2号機で完成度を高めて3号機をホンちゃんにしようと思っていたが、はて。
1号機は制作から1日電源を入れっぱなしにした試聴では、最初は驚いた。1.5mペアで導体6本、コネクター4個、シールド2組等の直接的な材料費は4000円程の試作品なのだが、かなり素晴らしいのである。ジュンフロン線の薄くカチッとしたフッ素被覆と、純銀メッキの効果だろう。
まず制作手順を。誰でも安く作れる、ノンシールド高音質3芯XLRケーブルの詳細。
部材
芯線:
ジュンフロン被覆銀メッキ単線(直径0.5mm)x1.5mx6本
コネクタ:
MC3FXX(2個) & MC3MXX(2個)
シールド:
TBC(1.25SQ) x1.5mx2本
外装チューブ:
ノイズリダクションチューブ(3.5SQ)x1.5mx2本
他:
熱圧縮チューブ、0.5mm幅のシルク紐、帯電防止テープ、フッ素テープ
手順
①芯線の長さを揃える
お店で切り分けてもらっても、自分で測定し直す。普通、お店は少し長めに切らざるを得ない。必要な長さにぴったり合わせるのは客の仕事。左右で長さが違えばステレオイメージを醸成するための対称性が崩れる。また、XLRの場合、ホット(通常は2番)とコールド(通常は3番)の芯線の長さが違えば、±0になるべき差動伝送の条件としての対称性が崩れる。
②シールド、外装に芯線を通す
今回、平編み組シールドやPETチューブの張力のみで芯線の形態を保持するという、ストレスフリーを目指す。通常、市販されているXLRケーブルの大半は撚ってある。大半は2芯シールドなので、シールドの内側でホットとコールドが束ねられ、一定のピッチで捻られている。この目的はノイズ対策だが、他にも曲げた時の応力の分散とか色々とあると思われる。しかし、①で述べたように、第一に重要なのは対称性である。ホットとコールドの撚りの対称性を維持し、さらに、左右でもその対称性を維持できるような道具と腕前がないならば、音質の向上を狙ってその真逆に着地すること請け合い。
市販のケーブルは分厚い外装シースで内部の撚った芯線を硬くまとめている。ゴム系の硬さで導体を抑えつけるのが、音質上好ましいことであるとは思えない。私たちの1号機はこのゴム系のぶよつく固定の仕方の真逆へ、抑圧のない自由へ向かいたい。しかしまた、自由が対称性を壊すとも言える。そこで、平編み組銅とPETチューブを、抑圧ではなく、フィットさせる、しなやかに適切に寄り添わせる、ために、ジャストなサイズにすることが重要であった。
芯線を、ぴったりの平編み組シールドとPETチューブに通すだけ。それ以上でも以下でもない状態にする。そのためには、芯線をテープで固定して、太い針金状の糸通しを装着して、シールドと外装チューブに通す、だけ、である。
ここで、「部材」のシールドと外装チューブの長さを見てほしい。芯線と同じ長さ、1.5mで用意した。これは間違いだ。どれだけ横に伸ばすかの問題でもあるが、最初に切る長さは少なくとも10%は上乗せ、つまり今回でいうと最低でも165cmにはしないとシールドや外装チューブの長さが足りないことになる。シールドをほぐして撚り直して1番ピンに繋ぐならば、もっと残しておいたほうが良いのかも。

③コネクタ接合部の加工
使用するコネクタの適正ケーブル外径に合わせて、太径化する。また、フッ素テープのような摩擦係数が低いものにしない。太く滑らない状態でクランプする。

④半田づけ
オヤイデのSS-47を使った。鉛フリーの銀入りハンダである。加工が難しいという人もいる。私は経験が浅く分からない。とにかく、さっと、ぱっと、やるのが大事。高音設定のコテを押し付け続けると、メッキはダメになるし、樹脂もやられる。



☆試聴と2号機の構想


1号機のPros:
・艶がある。生々しさを感じる。
・S/N比は抜群で、凛とした響き。トランジェント特性が優れており、自然で違和感のない繋がりの良さで、ぱっと音を立ち上げる。
・うざったさと無縁なクールさで、すっと抜けの良いハイスピード系。特有の明るい表現は、音抜けの良さに起因しているように思われる。虚飾のないネアカの楽の音だ。
1号機のCons:
・低域の持続音があっさりしすぎている。
・後方定位が弱い。ずんずんと伸びる推進力を伴いながら強力な後方定位がないので、サウンドの薄さを感じる。爆音にするとサウンドステージ全体が少し浮き上がり、音像も、構造や組成がよく見える解析力が上がったのではなく、ただ音像が大きくなった、つまり、ただのデカい音になっている印象を受ける。
・3日間の試聴だが、一度も、震えるような感動は覚えなかった。なかなか良い音だな、とは思ったが。







さて。改善策を練るべきだが、これまで聴いた中で最高レベルのS/N比の高さから、シールドは絶対に必須ではない、撚り合わせも必須ではない、と推測できる。少なくとも、シールドには電流が流れるのだから、経路はシンプルにしないと改悪になるとは言えるか。また、細線はフラットに上から下までとはならないが、細い単線は変に減衰させずにすっきりした仕上がりとなる、、、といったことは分かった。だが、定位が弱いと感じた。爆音にして音像が大きく感じたり、低音が薄く感じたり、綺麗だが最後の一押しがなく、グッとこない。定位の薄弱さだけは絶対に解決すべきだ。
ケーブルを変えて、何か問題が発覚した場合、ケーブルがダメかもしれないし、システムやセッティングの詰めの甘さをケーブルが教えてくれている可能性もある。
定位の甘さは、スピーカーセッティングの甘さかもしれない。しかしまた、1号機のホットとコールドの整合性と左右ケーブルの整合性の片方、ないし、両方がダメなのかもしれない。これがダメならば定位が良くなるはずはない。基本的にケーブルとセッティングやチューニングは盛るのではなく、機器の性能を貶めないパッシブなものであるべきことは心得ている。しかし、1号機の導体間の、また、L/Rケーブル間の位相的整合性は我ながら自信がない。
うーむ。



