XLRケーブルの謎②
☆プロローグ
前回このテーマで書いて以来、だいぶ時間が経ったが、XLRケーブルについての見識が深まったわけではない。しかし、『謎①』で示したように、バイアンプを導入する。
以下は、『謎①』の未来図。(注: 以下、謎①の時点でスピーカーケーブルだけ芯線数で表示していたのを修正した。ラインケーブルの話なのでどうということはないが、念のため。)
オリオスペックPC = SOtM tX-USBx10G
↓
MAY DAC KTE
↓ ↓
プリアンプC-02
↓ ↓ ↓ ↓
左パワーアンプS-02 右パワーアンプS-02
↓ ↓ ↓ ↓
Lch Hi Lch Lo Rch Hi Rch Lo
この図のDACより上流が、オリオスペックPCをホストとし、ターゲットにDST-0とするDirettaによるLAN伝送を核とするシステムとなっており、また、DACとはI2Sで接続するシステムに変わっている。そこで一番上の矢印はUSBケーブルからHDMIケーブルとなる。
さて、残りの10本の矢印のうち、6本がXLRケーブルとなる。ESOTERICのパワーアンプ、S-02は純然たるステレオパワーアンプなのである。モノラル化できない、この素朴さを私は気に入っている。だが、2台の出力アンプを使うには、2本ラインケーブルを使うことになる。そのパワーアンプを2台にするので、プリアンプ→パワーアンプ間で4本使うことになる。
現在、DAC→プリアンプ→ステレオパワーアンプの間で4本のアコースティックリバイブのXLRを使っている。優れたケーブルであり、メーカーのノウハウが詰まっている。これを6本にするのはかなりのコストになるので、ここは自作するとしよう。
☆導体は2、3、それとも4?
XLRケーブルは、ホットとコールドの2芯を使うバランス伝送である。しかし、ピンは1番、2番、3番、と3つある。そう、1番ピンは「グラウンド」にあてがわれている。しかし、この「グラウンド」とは何のことだ?シグナルグラウンドなのか?シャーシグラウンドなのか?その両方、シグナルグラウンドとシャーシグラウンドなのか?こうした1番の謎を解決する前に、もう一つ謎がある。ケーブルのシールドだ。シールドに電流が流れている。この電流の少なくとも一部はシールドが遮蔽したノイズである。ノイズは勝手に消えはしない。
市販されているメーカー製のXLRケーブルは多くは2芯シールドケーブルになっている。ケーブルメーカーにとってはRCAケーブルと兼用で販売したいところだろう。大半のXLRケーブルは2芯シールドの構造をとっていることと無関係ではない。しかし、経済的な事柄がたしかに関係しているのだろうが、昔々はシグナルグラウンドとシャーシグラウンド、そしてACアースが混同されており、きちんとした区別がなかったという時代背景こそが大きいのであろう。新旧の機器やプロ用とホームユースが入り混じったケーブルの選択の自由が、リスクになっている。


上のSwitchcraftのコネクターが、1番、2番、3番、そして4番目の結線としてシールド/シェルを、それぞれ個別に接続できる仕様になっているのが画像から分かるだろう。


上のNeutrikも、基本はプロオーディオ用で、導体4本までを想定した構造である。ここで私の工具箱で眠っていたオヤイデのFocus 1もご紹介しておこう。今回、自作するにあたってFurutechを値段の問題で除外した結果、Focus 1が最も高価なコネクターとなった。まだ使っていないが、本命である。シンプルで剛性が高く、自作しやすい構造だ。強いて苦言を呈するならばブッシュだろうか。




SwitchcraftやNeutrikほど明示的ではないが、導体を4本、つまり3芯シールド、を使える構造にはなっている。
だが、3芯シールドという切り売りラインケーブルは見たことがない。だからもし、自作するならば導体3本とシールドを用意するしかない。


☆1番ピン問題
XLRの「1番ピン問題」とは、本来ノイズを遮蔽するためのシールドに流れる電流が、機器内部の音声回路へ入り込んでしまうことで発生する問題を指す。これは1990年代に音響エンジニアの Neil Muncy が体系的に指摘したもの。ネット上でプロオーディオ向けの記述を読めるので、興味があるむきは参照されたい。また、シグナルグラウンドとシャーシグラウンドについては『オーディオ用アース研究①〜③』にて扱っているので参照されたい。
バランス伝送において、音楽信号そのものは2番ピンと3番ピンの差動電圧として伝送される。ところが実際には受信回路の基準電位や入力回路のバイアスのために、わずかな共通モード電流や基準電流の帰路が必要になる場合がある。その帰路として1番ピンには回路動作に必要な電流だけを流し、シールドに流れるノイズ電流は別経路へ逃がせばよいはずだ。つまりシャーシである。。。
今書いたばかりの基準電位とシャーシを区別しようという話が導体4本、つまりコネクター内の1番ピンとシェルの区別を生むのだが、今更言うようだが、また推測だが、この発想は古い。どれくらい古いのかは分からないが、Neil Muncy以前の問題意識の産物なのではないだろうか?
というのは、シールドはシャーシに直結すべきだ、そこから、1番ピンはケーブルのシールドと機器のシャーシを繋ぐピンとすべき、というのがMuncy以後のスタンダードであろう。
しかし、既に述べたように、XLRケーブルは2芯シールドが標準で、これまた今に始まった話ではない。そこから、1番ピンとシェルを短絡するという発想が出てくる。端子があると繋ぎたくなる、、、しかし繋ぐものがない、、、短絡。
☆1番ピンとシールドの短絡
次の記事はオヤイデの自作キットの紹介ブログから。
何が普通なのか?オーソドックスな構成とは?と、初心にかえるならば問わざるを得ない。
1番ピンとシェルを短絡させるならば、そこにいくつかの不要なルーブを作り、グラウンドの構成をケーブルが決めることになる。プレーヤーなりアンプなりを買ってきて、いきなりケースを開けて、シェルと接続する端子外周のリングなりラッチなりと1番ピンをショートさせようとしなくてよいだろう。そもそも、多くの機器は両者ともシャーシに接地されているのではないのか?そうであれば、なおさらケーブルのコネクター内で1番ピンとシェルの短絡は無用なのではないか?
まずは、自分の機器のグラウンドを調べるしかないと思う。1番ピン問題を経た今どきの機器の1番ピンはシグナルグラウンド直結では、ない、はずだ。ケーブルの1番ピン=シェルの短絡は、その裏面のグラウンドリフトと同様に、プロオーディオが対応しなければならない多様な環境への必要な対策であったのだろうが、今では各種のアナクロや勘違いが絡んでいるのだと思われる。昔々の機器は1番ピンにシグナルグラウンドが直接に来ていたのだろうが、問題は自分の接続機器である。
後記:
1番ピンとシェルを短絡する意味は、シェルにアースを与えるということだろう。ところでシールドを1番ピンに繋ぐのは、機器のシャーシとの接続でシールドの防御力を高めて、かつ、シャーシをバッファとして活用することだろうね。シールドとシェルを繋ぐことで、シールドなりシェルの防御力が高まるわけではない。仮にそうしたいならば、シールドを何十mにするとか、シェルを何Kgにするとかしないとだよね。ホームユースでは、現実的にシェルやシールドに効力を与えるのは、第一に、それらが繋がるシャーシの質量と構造だよね。そういうことならば、シェルを1番ピンと短絡する意義はどこにあるのか?前提や条件の脱落が、オーディオの言説の哀しい性になっている。
謎③に続く
