A Clockwork Audio㉑:音質改善の裏面(その1)
☆プロローグ
Diretta, DST-0によるI2S伝送を核とするシステム上流を磨き続けていて、自作アルミ板ラックを調整してDACまでを設置したところ、高域の特性が革新を遂げて、素晴らしい生々しさを発揮するようになった。また、全システムを超低抵抗リアルアース接続して多重アース化し、さらに、それでも帯電する樹脂パーツを静電気除去テープを細かく貼り付けたところ、パワフルなのに透明で、ダイナミックなのに音像の肌理が滑らかになっていった。PC間のLANケーブル直結によるじりじりするようなノイズ感が気にならなくなった。





上流システムのS/N比を磨くべく細かいことをあれこれとやり続けておよそ半年経過した。当初の不満は半分は消えた。S/N比の改善で上記したような音質になったのだが、非常に不安定なのが不満の残りの半分である。
特に弦楽の歪みが酷いと感じるようになった。
また、リスポジで足を組むと音像定位が浮き上がるように感じられた。
それからまた、リスポジの椅子はトゥィーターのら軸上(on axis)を狙ってKRIPTONの使っていないボードに載せていたのだが、自然とずれる。1cmずれただけで、酷い歪みで耐えられず、再生ボタンを押す前に椅子の位置を合わせるという儀式を行い続けることになった。そこでボードをやめて、色々と試した。ボードを敷くと6cmほど高さを稼げるのだが、それをやめると、生気をなくした音になった。
さらにだ、スピーカー背後のセンターラインに置いていた拡散材を15cmほど壁際から離すと、サウンドステージの奥行きが減り、左右ではなく、前後方向の歪みが出た。左右の歪みは経験があるが、前後の歪みは全く初めて。
☆月の裏側
DST-0の導入する前、リスポジを前後を20cm程度ズラすかどうか、高さを6cm加えるかどうか、を実験していた。
この時点の比較でも、リスポジを前後・高低すると当然音質は変化した。しかし、今回の前後・高低は、変化量が尋常ではない。しかも、左右を1cm間違えただけでも、壮絶な歪みがセンターの左寄りに入る。上に記したように、定位が変わるのでおちおち足も組めない。
簡単に言えば、激しく圧迫される凄絶な出音になったからなのである。DirettaとI2Sを鍛え上げたところ、B&Wの800D3の発出する力が極めて強くなり、空気分子を揺るがして、リスポジの鼓膜に突き抜けてくる。
ボリュームは変えたわけではない。この《力》は、リアルアースを導入した時の、3芯接続に変更した時の稲妻のような音の地力を想起させる。PCオーディオのアーシング、DC入力とLANのグラウンドを再検討しようと思っていたところであったが、今ではそれどころではない。
アルミ板ラックとリアルアースと帯電緩和策が、システムの諸可能性を現実化したのだと思うが、いずれにしても、上流システムの力を受容する施策が必要だ。
まず、いよいよ強力になった800D3を動かさなければならない。
①800D3の左右2台を、静的にではなく、25cmウーファー2発が動いている状態でも、水平を維持して、左右の高さが厳密に一致して、壁や床までの距離や、その他の一切の条件を揃えながら、強固に床に接地ならぬ設置をすること。(「静的」は容易い。今でも実現している。)
床→2mm毛氈→AB-5200→ハイカーボンインシュレーター→炭素鋼受け→純正スパイク
を「床→ハイカーボンインシュレーター→炭素鋼受け→純正スパイク」に変更する。2mmでも、毛氈は沈み込む。Chat GPTは800D3の下なら沈まない、既に沈みきっている、と言うのだが、沈む。体重をかければ、ボードが軋んだ音をだし、沈む。この微かな沈み込みが再生中に断続的に行われるのは、ズレ1mm未満のセッティングを目指す邪魔だ。また、この緩衝地帯としての毛氈を取り除くのならば、AB-5200もどかす必要がある。そもそもAB-5200一枚では100Kgの800D3をもてあます。これは実験である。私のルームの床の表面は大判オーク無垢材。その下は捨て板で、表面から数cm以内にコンクリート土間。金をかけたが憎らしい不陸がある。6年、7年ぶりにこのコンクリ&オーク床の実験だ。
②貫通力が増し増しになった800D3は、一方で、(1)左右2ch間で悪いクロストークを発生させるリスクが上がることになるのではないか。他方で、(2)3wayユニットごとの帯域間セパレーションは強烈に進行している。結果的に、出音は激しく強いが音場が抑え込まれてしまっているので、(3)空間の拡張も行わなければならない。
この②はパズルゲームになる。一方を立てれば他方が立たず。ルームの壁を壊して建て直すことなどできないのだから、領地の取り合いになるだろう。②-(1)はスピーカー間の距離を要求し、②-(2)はバッフルからリスポジまでの距離を要求し、②-(3)はスピーカーとリスポジの全周囲の均等な距離を要求する。(無頓着な人が多いが2-(3)はリスポジも入ることに注意されたい。大部分のルームの反射は私のルームよりも強いのだから、私以上に研究を進めることが肝要なのでは?)
現状のリスポジをできるだけスピーカーから離しても、800D3を50cmほど後ろに下げないと②-(2)のバランスが取りにくいかもしれない。かもしれないというのは、ラックとケーブルの密林の中に顔を突き出して中腰を維持するという無理をしながら試聴したところ、音数が減り、定位が良くなった。音数が減るのが、ファインアートから漫画的一筆書きになったこととそれが等しいならば、定位という音ではなく言語学的意味の領域で改善が起こった可能性は、確かに、ある。音数を減らさず、言語学的音像定位のまやかしを遠ざけながら、音の集約を狙いたい。。。
理屈はおこう。
とにかくスピーカーを50cm近く遠ざけたいが、スピーカーのバッフルを奥行き方向で3番目の規模の定在波の領域の中心に置くことになる。そこで、約20〜30cm遠ざけて、定在波の領域の端からバッフルが外れるようにした。
②-(3)は、まず拡散材を撤去した。詳しく述べると、前後方向の拡散材を部屋の外に出した。これらの拡散材は当初、正面壁際の中央付近と背後壁の中央に設置していた。正面壁は高さを変えたり、中央から側壁がわに1/4進んだ箇所に左右均等配置したりとさまざまな実験をした。利他的な思いから観察を書き留めておくが、拡散ならば、中央は歪む。ラック、センタースピーカー、テレビ等は言わずもがなだろう。オーディオ用途のチューニングがなされた拡散材でも、歪むのだ、時間軸が狂うのだ。特に反射が強いほどそうなるだろう。なお、吸音材でも同じく時間軸は狂うが、吸音材の狂い方は静かで、拡散材の狂い方は煩いのである。吸音材についてはまた次回。
『A Clockwork Audio』シリーズの記事に相応しい展開にわくわくする。(^^)
拡散材は反射角を分散させるが、拡散材に空気分子が強く当たって弾けているのは間違いない。そして、スピーカーに近づけるほど、強く拡散材に当たる。当たれば、音が出るのだ。その音の存在を、今回は、10数cm動かすことできちんと確認した。ところで、拡散材とそうでない空間(以下では非拡散空間とする)は、反射音のリスポジへの到達時間は異なる。もし拡散材よりも大きな対象の録音を聴くならば、対象の音像の一部は拡散材に当たり、また一部は非拡散空間にある。こうした時間軸の齟齬が、今回のプロローグの後半で記述した恐るべき歪みの要因の一つだろう。
いったん話を切る。次回は、酷い歪みの要因のもう一つ、①、及び、②-(1)と②-(2)の処置だ。
その2 に続く

