スピーカー研究⑫:800D3(4)
☆プロローグ
前回の『スピーカー研究⑪』で、①左右対称の厳密化、②波長の最適化、について書いた。今回はその続きで、③リスニング軸の探究と④スピーカーケーブルの換装、である。
③リスニング軸
低域 > 中域 > 高域と志向性が高まり、スピーカーの発する音の広がりは狭くなる。かつてFOCALのSopra no.2を使っていたころ、椅子の足をノコギリで切って調整したものだった。Sopra no.2はウーファーの上、スコーカーの下にトゥィーターのキャビネットが他のフロアー型スピーカーよりも低い位置にあるのに、マニュアルはトゥィーターの高さに耳を持ってくるように指定しいるからだ。ネットで見る大半のセッティングの様子はお構いなしのように見えるが、Sopraの場合には収束する一点を捉える必要がある。どうでもいい話だが、そのせいで店舗などで座面の低い椅子を見かけるとつい座ってみる癖がついてしまった。
800D3は軸外の特性が悪いという噂を教えてくれた人がいる。どのスピーカーでもトゥィーターが耳より下の位置にあって心地良いと思った経験はなく、耳の少し上にあるとだいたい落ち着くのは、個人的な嗜好か。かつて、リスポジに座ると腹の高さにホーントゥィーターがくる試聴室に行って、ホーンこそが本物ですよと、マルチの親玉みたいな人に言われた時は返答に窮したものだ。高域が普通に聴こえる人にはリスニング軸は大切である。しかし、800D3のマニュアルはリスニング軸を指定しない。探せ、ということだろう。
ボード、インシュレーター、スパイク受け、の上にスパイクを出した我が家の800D3は床から127cmのところにダイヤモンドトゥィーターの中心部がある。中腰になったり、椅子の上で正座をしてみたのだが、不安定な体勢だと全てが良くない。椅子を変えてみるしかない。そこでまず、座面高が15cmくらい高いのに変更した。

この青い回転椅子にして、ゆったり座ると耳の位置を15cmほど高くしたことになる。試聴してみると、アングルが変わった。オーケストラがスピーカーユニットより2mほど離れている背後壁を突き抜けてしまい、オーケストラが急勾配に配置されたかのように、音像が背後壁を登ってしまっていた。椅子を変えて、リスニング軸を上げると、音像のせり上がりがなくなった。
アングルが変わった以外には、軸外から軸上に接近したことによる音質の変化は感じられなかった。完全に軸上にのせるべきなのか。。。

回転椅子の下にオーディオボードを敷いてみた。これの上に椅子を載せると、耳の高さとダイヤモンドトゥィーターの高さがほぼ揃う。。。その音質は、、、普通かな。高域だけに関して言えば、軸上も大事だろうが、急速に減衰するのだから、距離も大事である。今のリスポジは左右スピーカーのバッフルから約2.5mの位置であるが、ここでは軸外—6cm程度であるのか、それとも、ぴったり軸上なのかの聴感上の差異はあまりなかった。そして、これまでの800D3に対する各種施策の中で最も変化量が少なかった。繰り返し書くが、自分は軸に対して敏感な方ではあると思う。軸よりも高い位置はあまり好みではないが、試してみることはできる。椅子の下のAB5200を2枚にすればよいのだから。はて。
④スピーカーケーブルの換装と結線の最適化
アコースティックリバイブのPC Triple C、楕円単線、シルク絶縁、銅管チューブシールドのスピーカーケーブルをずっと愛用してきた。

しばらく前までは、2連アモルメットコアを装着していたのだが、これは外す実験が先延ばしになっていたのだが、少なくとも現在のシステムには不要であった。アコリバの単線なのだが、上の画像を見てもそうは思わないだろうが、芯線に触ると張りがある。プラグのネジ止め角度を調整しても、どうしても張りがでる。また、エソテリックのS-02は、145W + 145W(8Ω)、290W + 290W(4Ω)、580W + 580W(2Ω)とリニアな大出力パワーアンプであるが、800D3に対しては余裕はない。いや、足りない、と思っている。全ての局面でというわけではないが、足りなくなる局面がある。音量にもよるのだが。
スピーカーケーブルの張り。アンプの負担。改善する必要がある。
そこで、アンプをバイアンプ化する前に、ケーブルで、苦しさを緩和できないものかと。実は経過観察をしたいと思っている曲がある。

この曲の再生音が暗い。くぐもった感じで、伸びやかな明るい光がのぞかない。ツィメルマンのシューベルト21番が、丸くくぐももったまま。。。
さらに、数年後にツィメルマンがラトルと組んだベートーヴェンのピアノ協奏曲のピアノで、明るさが発散されているのをちゃんと確認できるのだから、ソロでの録音であり、協奏曲よりも近い距離で録音しただろう楽曲が、丸くくぐもったままというのは、絶対にシステムの問題だろうと。パワーアンプから先のどこかで高域が出きっていないから、再生音がくぐもるのだろうという予想である。
そこで、①接続して張りがでない柔らかなケーブルで、②線間容量で不要な電流が生じない平行線型で、③可聴帯域を遥かに越えた超高域であっても信号が流れるように表面積が大きい太径のものである、ACROLINKの7N-S1400 Leggendaを、2mx4本で購入することにした。
切り売りの中でも高級品である。スピーカーケーブルは外シースをけっこう剥くし、ストレスフリー導体でも、スピーカーターミナルのところで負荷がかかる結線なら意味がないので、緊張した。で、少し失敗した。_:(´ཀ`」 ∠): まあ、次に剥き直す時に修正できる範囲だが。
まず、間違っていたのは、買う前には平行型は線が走る側に対して垂直に曲がらない、という思い込みがあった。また、丸めた状態で送られてきて、開封しても、外シースはとても硬く、取り回しが悪いと判断したこと。外シースを剥いた部分を長くとって調整するしかないと思い込んでいた。

実際に、外シースを18cmほど剥いて、結線してみると、1時間後にはシンナリしていて、柔らかく垂れ下がっていた。一部は床から20cmほどリフトしたのに、床についていたくらいである。重たいが、とてもしなやかなケーブルである。外シースは800D3にバイワイヤリングで繋ぐとしても、12cmくらいでも良いのかも。







さて、ツィメルマンのシューベルトであった。別人である。伸びやかになった。丸くくぐもっていたのは、倍音の細やかさが再生されていなかったのではないかという予想をしたが、その通りにチェンバロ的な煌めく倍音が発散される。豊かさがまるで違うのだ。
ACROLINKの7N-S1400 Leggendaは素晴らしいケーブルである。5.5SQの平行型で銅箔シールドが付いて、ストレスフリーを謳うだけあって、相当なしなやかさでアンプとスピーカーを繋ぐ。ケーブルを結線した時の張りや芯線の細さは、スピーカーの手前で信号を目減りさせてしまうのではないだろうか。帯域を狭めてやるくらいの方が音が良くなるシステムもあるし、自ら信号に手をつけて鮮度を目減りさせたがる人もいる。逆に、純度の高い信号を全てスピーカーに送り込みたいならば、非常に有効なスピーカーケーブルであろう。800D3のようにスピーカーインピーダンスが非常に厳しい負担になる場合には、ケーブルストレスや線間容量やケーブルインピーダンスの軽減、表面積の拡大等の些事の改善の見返りが大きいのだと思う。800D3のように要求が厳しくない、あるいは、アンプが1Ωまで大出力を持続的に発揮できる、という条件を片方でも満たすならば、気にしなくてもいいのかもしれない。
①〜④のまとめ
①の左右対称化の徹底と②の動かさない、動かない、で波長の調整をはかるは、部分的に重なっているのだが、もう少し調整を重ねる必要はあるとしても、抜群の効果であった。まあ、スピーカーセッティングの一環なのだから、当たり前であるのだが。①+②の時点で、お高いACROLINKの切り売りケーブルを買って換装する必要が本当にあるのか?と思ったものだった。アコリバのも相当に優秀だし。だから、④のスピーカーケーブルの交換と結線の最適化は、実験としての実験となったが、実際に音は変化した。しかも、ツィメルマンのシューベルトを名誉回復となるほど。上には書かなかったが、もう数名のピアニストの失地挽回にもなった。③の軸の探究は思ったほどの変化量ではなかった。
