傾聴の教科書2:「褒める」という行為は実は奥が深い
「褒める」という行為は実は奥が深い。
私たちは日常的に誰かを褒めることがあるが、意識的にそれをしている人は少ない。褒めることに上手も下手もないと考えている人も多いだろう。だが、褒め方には明確な「レベル」が存在する。
そのカギを握るのが、ニユーロ・ロジカル・レベルという心理学的な概念だ。簡単に言えば、人間の会話や思考は「環境」「行動」「能力」「信念・価値観」「アイデンティティ」という階層構造でできているという考え方だ。
「環境」とは、その人がいる場所や持っている物などだ。「行動」とは、その人がとっている具体的な行為、「能力」とはスキルや才能。「信念・価値観」は何を大事にしているか、そして「アイデンティティ」とはその人の存在そのもの、つまり人間性そのものだ。
さて、あなたが初対面の相手を褒めるとき、どう褒めれば最も効果的だろうか?答えは「環境から褒める」である。たとえば初対面の人に「あなたは美的センスがあるね」といきなり言ったとしよう。相手は少し驚いて、場合によっては警戒するかもしれない。それは階層の高い「アイデンティティ」に直接触れてしまったからだ。
逆に「その服おしゃれですね」「素敵な服を着てますね」などのように、「環境」や「行動」のレベルで褒めれば、相手は自然にそれを受け入れやすくなる。これがペースを合わせる「ペーシング」という心理テクニックの基本だ。
では、より深く相手と仲良くなるためにはどうしたらいいか。それは徐々に上の階層に移行していくことだ。最初に環境や行動を褒め、次に相手の能力、価値観へと話を移していく。たとえば、服装を褒めたあと、「コーディネートのセンスがいい」と能力を褒め、さらに「いつも素敵な服を選ぶから、きっと美的感覚が優れてるんですね」と信念・価値観へと深めていく。
逆に、叱る時には「信念・価値観」「アイデンティティ」を避けるのが基本だ。遅刻をした相手に「お前はバカだ!」などとアイデンティティを責める叱り方は最悪だ。これは相手の存在そのものを否定する行為だからである。叱るときは「時間どおり家を出たの?」(行動レベル)や「時計が壊れていた?」(環境レベル)のように具体的に叱った方が、相手に改善のきっかけを与えられる。
褒めるにしても叱るにしても、「階層」を意識することで効果は劇的に変わる。いわば心理テクニックを使って相手の心のドアを自然に開けるのだ。
次回はさらに踏み込んで、相手と自分の関係性を深める「ペーシング」の具体的なテクニックについてお話ししたいと思う。
傾聴の"聴"とは、相手に耳と目と心を十分に傾けようと覚えてみよう。
マガジンでは、傾聴の教科書1では耳で、傾聴の教科書2では目で、傾聴の教科書3では心で、傾聴の教科書4では全身を使って聴く事を学びます。
