見出し画像

傾聴の教科書1:人はなぜ「話を聴けない」のか?

人間はもともと話したがりな動物である。

自分の話を誰かに聞いてほしいという欲求は本能的なものだ。だからこそ、「傾聴」という技術がビジネスや人間関係の鍵になるのも当然といえる。

とはいえ、多くの人が「きく」という行為の本質を理解していない。
世の中には、自分はちゃんと「聞いている」と信じて疑わないまま、人間関係を次々と破綻させていく人もいるのだ。

そう、「きく」にも種類があるということを、私たちは意外と知らない。

聞く(hear)
聴く(listen)
訊く(ask)

「聞く」は単に耳に音が入る状態を指し、これはほぼ誰にでもできる。
「聴く」は感情や気持ちに寄り添い、共感しながら聞く行為だ。
そして訊く(ask)は、具体的な情報を尋ねることを指す。

この中で最も難しいのは、実は「聴く(listen)」だ。
なぜなら、これは相手の感情に深く共感する能力を必要とするからだ。
世の中には、話を「聞く」ことは得意でも、「聴く」ことがまったくできていない人が驚くほど多い。

よくいるのが、相手の話を途中で遮って「自分はこう思う」「自分ならこうする」と勝手に話題を奪い取ってしまうタイプである。本人は悪気など一切ないのだが、気がつくと周囲から敬遠され、孤立していることが多い。

商談の席で自社の商品の説明を延々と繰り返すが、相手の表情が徐々に曇り、結局何も成果が上がらない営業マンも、このタイプに含まれる。

これは相手の話を聞くという基本的なルールを忘れているから起きる悲劇だ。

では、なぜそんな「話を聴く」ことが難しいのか? その根本的な理由は、自分の頭の中にある「情報のコップ」がすでに満杯になっているからだ。
人は自分の考えや伝えたいことが頭の中で飽和状態になると、新しい情報をまったく受け入れられなくなる。そんな状態で相手の話を聞こうとしても、新しい情報は頭の中に入ってこない。結果、相手の話を正しく理解できずに誤解やすれ違いを生む。

話を上手に聴くためには、まず自分のコップを空にする必要がある。つまり、自分の考えや意見を一度脇に置き、相手の言葉をありのままに受け止める準備を整えるということだ。

このシンプルな心がけ一つで、コミュニケーションの質は驚くほど向上する。

人間は他者に理解された時、自分が尊重されていると感じる。相手の話を丁寧に聴くことが、信頼関係(ラポール)を構築する最短ルートなのだ。

だからこそ、聴く力は最強のコミュニケーションスキルであり、ビジネスシーンでは必須の技能である。自分の意見を相手に押しつける前に、まずは相手の心に寄り添い、相手が本当に伝えたいことを引き出すことが重要だ。

「聴く」という行為がうまくなれば、単に人間関係が円滑になるだけではない。営業の成約率が上がり、交渉力も格段に増すだろう。

次回は具体的に、どのようにして相手の話をうまく「聴く」か、実践的な技術を紹介していこう。

傾聴の"聴"とは、相手に耳と目と心を十分に傾けようと覚えてみよう。
マガジンでは、傾聴の教科書1ではで、傾聴の教科書2ではで、傾聴の教科書3ではで、傾聴の教科書4では全身を使って聴く事を学びます。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集