副業に隠れる本末転倒なリソース配分
本業というメイン・ポートフォリオの崩壊
資産運用の鉄則は、最も期待リターンの高い資産にリソースを集中投下することだ。
これを人的資本に当てはめるなら、大半のサラリーマンにとっての「本業」こそが、人生におけるメイン・ポートフォリオである。
それにもかかわらず、本業での評価や昇給が停滞しているからといって、安易に「副業」という名のハイリスク・ローリターンな小物投資に手を出すのは、投資戦略として致命的な誤りである。
それは、主力株が暴落しているのを放置して、倒産間際のボロ株を買い増すようなものだ。
合理性に基づけば、あなたがまず行うべきは、本業という資産の「損切り」である。
もし今の職場であなたの人的資本が正当に評価されず、将来のキャッシュフローが増える見込みがないのなら、その場所自体が腐っている可能性が高い。そこで睡眠時間を削って副業に励むのは、穴の開いたバケツに必死で水を注ぐ行為に等しい。
本来、あなたが投じるべきリソースは、小手先の「小遣い稼ぎ」ではなく、あなたの人的資本をより高く評価してくれる別のマーケットへの移動、あるいは市場価値そのものを劇的に高める再教育に向けられるべきなのだ。
進化心理学的に見れば、ヒトには「逃避」という防衛本能が備わっている。
本業での人間関係の軋轢や、能力の限界からくる挫折感から逃れるために、副業という新しい世界に救いを求めてしまう。
副業という名のサブ・プロジェクトは、本業での失敗を忘れさせてくれる依存症的な麻薬として機能する。
だが、その麻薬に耽っている間も、あなたのメイン・ポートフォリオである本業の価値は刻一刻と毀損され続けている。
副業にリソースを割くことで本業のパフォーマンスがさらに低下し、リストラ候補に真っ先に挙がる。
これこそが「副業という名のセルフ・サボタージュ」の正体である。
成功する「複業家」たちは、例外なく本業において圧倒的な成果を上げ、その余剰リソース『ブランドや専門性』を横展開している人々だ。
彼らにとって副業は資産の多様化だが、凡庸な会社員にとっての副業は、単なる負債の隠蔽に過ぎない。
月数万円の追加収入を得るために、本業でのプロフェッショナルとしての誇りや、昇進・昇給のチャンスを犠牲にしているのなら、それは目先の現金と引き換えに、将来の数千万円の生涯賃金を市場に投げ捨てているに等しい。
あなたが今、やるべきことはクラウドソーシングの案件を探すことではない。
自分のキャリア・ポートフォリオを冷徹に見直し、もし本業が「死に体」であるなら、一刻も早くその場所を去る準備をすることだ。
副業という小さな逃げ道を作ることで、現状の地獄に耐え忍ぶ「忍耐力」を獲得してはいけない。その忍耐こそが、あなたの人生を「下級国民」の定位置に釘付けにする最大の敵なのだから。
メイン・ポートフォリオが崩壊しかけている人間にとって、副業は「希望」ではなく「毒」である。
まずは、自らの人的資本を最も高く売れる「戦場」を確定させること。
副業という贅沢品に手を出すのは、その圧倒的な基盤を築き上げた後の話ではなかろうか。
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