なぜあなたの提案だけ通らないワケ
いい提案だと思うんだけど、なぜか通らない。
そう、ロジックは完璧なのに、まったく響かない。
そんな経験がある人は多いだろう。
とくに職場では、「合理的な意見」が「合理的に却下される」場面によく出くわす。そのたびに、私たちは「説明が足りなかったのかも」「タイミングが悪かったのかも」と自己反省を繰り返す。
でもそれ、もしかしたら──
「構造が違う地図を見ていた」だけなのかもしれない。
たとえば、あなたが「電車の路線図」を見て、A駅からB駅に行こうとしていたとしよう。
ところが、相手が見ていたのは「登山ルートの地図」だったら?
いくら「この電車なら10分で着きます!」と説明しても、相手にとっては「山を登る話」としか聞こえない。
この『地図のズレ』こそ、提案が通らない最大の理由だ。
ビジネスの現場でも、家庭でも、学校でも、私たちはそれぞれ「自分の地図」で話をしている。目的地は似ていても、たどり着くまでのルートは、思っている以上に異なっている。
「提案」という行為は、単に『アイデアを出すこと』ではない。
それは、「このルートで行けば、目的地に着けますよ」という『地図の提示』にほかならない。
しかし多くの場合、その地図は自分基準で描かれている。
この方が効率的。こっちのほうがコスパが良い。ユーザー満足度が高いのではないか?
どれも正論だ。けれど、相手がその地図を読めない構造になっていたら、話はまったく噛み合わない。
相手が見ているのは、「予算の政治地図」かもしれない。もしかしたら「人間関係の利害地図」かもしれない。あるいは、「前例重視の航路図」なのかもしれない。
違う地図を前提にしている限り、いくら“正しさ”を叫んでも、届かないのだ。
では、どうすればいいのか。
まず最初にやるべきことは、「今、この場の地図はどうなっているか?」を見極めることだ。
決定権は誰にあるのだろうか?そして、その人にとってのゴールは何か?
どの利害関係が、地形として存在しているのか?
これを読み取らずに提案するのは、登山家に「高速道路を走れば早いですよ」と言っているようなものだ。
つまり、「再設計」の第一歩は、自分の提案を修正することではない。
“その場に広がっている地図”を描き直すことなのだ。
もし地図が見えてきたら、やるべきことは一つだけ。
その地図上に、自分の提案を『翻訳』して乗せること。
「この案は、現場スタッフの不満を抑える効果もあります」 「前例を活かしながら、少しだけ新しい流れが作れます」 「予算内に収まって、かつ次年度の布石になります」などなど。
それは、相手の地図を否定せずに、別ルートを提案する技術でもある。
正しい地図を持つことは、確かに大切だ。
でも、『いまここで共有されている地図』が違うなら──
それは「正しさ」ではなく、「独り言」に過ぎない。
世の中には、ロジックで通らない提案が山ほどある。
それは、あなたの思考が甘いからではない。
ただただ、「地図が違った」だけなのだ。
こんなこと、教科書に書いてなかったんだよな。
前回の #教科書に書いてない シリーズは…
エンディングテーマ『教科書に書いてない』
