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撮影記17 ドキュメンタリー「襤褸(ぼろ)〜山の記憶」〜岐阜県揖斐川町春日美束〜

 普段、私が YouTube に載せております映像は、いずれも気の向くままに自然を撮影したものばかりで、そこに特別な意図というほどのものはございません。ところが今回は、昨年、春日の太鼓踊りにて知己を得た、長く新聞記者として筆を執ってこられた方より思いがけぬ依頼を受けました。

お声かけ下さった出雲さん

「春日森の文化博物館にて、長年の念願であった襤褸(ぼろ)の展示とショーを催すことになりました。ついては NHK の放送用に、ショーの映像を撮って頂きたい」

と。

 でしたら、全体をまとめ、その中から必要な場面を汲み取って頂く方が、かえって早道であろうと考え、今回の映像を拵えた次第です。

 幸いにも、NHK のご担当の方は、以前より面識のある方で、やりとりも滞りなく、この春日森の文化博物館の「山の衣と営み展」は東海地方のNHKにおいて数度にわたり取り上げて頂く運びとなりました。

 また、NHK の方が「この映像は作品として残されるのがよいのでは」と仰って下さったこともあり、関係各位の同意も得られ、今回改めて編集いたしまして、公開させて頂きました。

「山の衣と営み展」の、特に襤褸にスポットを当てた内容となっております。 魅力あふれる、春日森の文化博物館の一日を是非ご覧下さい。

 

春日森の博物館 山の衣と営み展

 山の暮らしに擦り切れ、幾度も縫われながら、人の手の温もりを残していった山着。襤褸(ぼろ)と呼ばれた布に、かつての暮らしの記憶をたどります。

「山の衣と営み展」

主催 春日森の文化博物館 揖斐川町社会教育課

案内人 出雲一郎氏

監 修 帝塚山大学 文学部 日本文化学科        西連寺 匠氏

春日森の文化博物館 学芸員 髙橋貴子氏
(順不同)

2025年11月26日放送
とても美しい季節でした

山川草木悉皆成仏(さんせんそうもく しっかいじょうぶつ)

 さて、詳細は、ぜひ映像でご覧いただくとして、そのなかで春日森の文化博物館の学芸員・髙橋貴子さんが、梅原猛先生の唱えられた「山川草木悉皆成仏」という思想を、多くの方々にぜひ知っていただきたいと語っておられました。


 私はその言葉に触れ、ふと、以前に目にした一つの映像を思い出したのであります。

 ある折、テレビの画面に、色とりどりの布が山のように積み上げられ、風に吹かれている光景を見たことがありました。
 私自身もよく手に取っているファストファッションなる近来の流行が、その成れの果てとして、あれほど無惨な廃棄の丘をつくり出すのだと。見ようによっては、ただの布切れにすぎません。しかし今回、春日での経験を得てから改めて考えてみると、あの布切れの一つひとつが、人の手に抱かれ、身を包み、遠い国の労働の汗を吸い込んだものであったと思われ、以前よりも一層切なく感じられるのです。

 思えば、私の幼い頃、昭和の七〇年代といえば、衣服はまだ値が張り、そして何よりも家々の暮らしの匂いを纏った存在でありました。ズボンに穴があけば、祖母が黙って針を動かし、繕いを施してくれ、その継ぎの当たったズボンを穿いて学校へ通うことも、ごく自然なことでありました。
 春日での体験によって、あの時の布の温かさ、家の息づかいがそのまま布に宿っていたことを、今、とても懐かしく思い出されます。

 確かに、祖母が針を刺すたびに、布はただの物から、どこか柔らかな、いのちを帯びた存在へと変じていきました。しかし、その思い出に梅原猛氏の「山川草木悉皆成仏」の理を重ねるだけの想像力は、これまでの私にはありませんでした。山も川も草も木も、悉く仏性を宿すというのなら、祖母の手で繕われた布もまた、一つの小さないのちを与えられていたのでありましょう。

 文明というものは、便利という旗を掲げて進むうちに、どうも肝心な何かを削り取ってしまうようです。大量生産の衣服に継ぎを当てるなど、今ではどこか気恥ずかしい行為とされ、人は布を育てることをやめてしまいました。布もまた、人に寄り添う時間を失い、いずれは捨てられ、あのような無惨な山に積み上げられてしまいます。

春日森の文化博物館のある長者の里の大木、トチノキ
トチの実で、トチ餅をつくるトチグリ体験も開催

 便利とは、無関係になることの別名なのかもしれません。手を触れ、時間をかけ、いのちを丁寧に見つめるという、ごく人間らしい営みを、私たちはいつからか手放してしまいました。我々の文明が進歩したと胸を張るとき、その一方で、万物に仏性を見る眼差しが次第に鈍っていることに私自身が気づかされた、今回はそんな「山の衣と営み展」でありました。 

円空仏 黒田保氏 作(春日森の文化博物館蔵)

 春日森の博物館関係者の皆様、心あるNHK関係者の皆様、当日、ご一緒した皆様の暖かさに触れ、本当に幸せな時間を過ごすことができました。心より感謝申しあげます。

 また、今回の映像は、2025年11月、春日美束で過ごした一日の、そんな「山の記憶」でもございます。
是非、ご覧下さい。

2025年 晩秋 春日美束にて。

#創作大賞2026 #オールカテゴリ部門

こちら春日森の文化博物館との出会い編の記事です。(^^)


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