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たまにはコーチングの話などしてみよう

「河童の目線で人世を読み解く」市井カッパ(仮名)です。
「すべての組織と人間関係の悩みを祓い癒し、自然態で生きる人を増やす」をミッションに社会学的視点から文章を書いております。

御覧いただき、ありがとうございます。

こちらの記事で書きました通り、11月より、noteの毎日更新を再開しています。木曜は「学びと成長の日:大学講師絡みのこと、コーチングの話」のテーマとなります。

さて、私がコーチングを知ったのは2001年頃。その頃のお話は下記で書きました。

スクールで学び始めたのが2005年。プロコーチを無償で紹介するサイトを立ち上げたのが2006年。コーチングに関する最初の書籍の刊行が2008年。この本の出版がきっかけで、同年から静岡大学付属島田中学校の国語の研究授業のアドバイザーで研究授業に携わり始めました。その後、コーチングに関する学術的研究が日本にほぼ存在しないのがコーチングの普及を妨げている原因だと考え、専門の学会を作ったのが2012年。また、日本のコーチ業界のガラパゴス化を改善したいと思い、2013年には国際コーチ連盟日本支部(現国際コーチング連盟日本支部)の立ち上げに関わり、コア・コンピテンシーと倫理規定の正式翻訳プロジェクトを開始。

そんな感じで、グローバルスタンダードを日本に取り入れつつ、学術的な研究も進めていったのが大まかな流れなのですが、ここにきて、コーチングという産業がひとつの転換点を迎えているように感じています。

そう思うようになったきっかけは、最近、コーチ紹介サイトに「現在、コーチとしての活動をしていないので登録削除してください」という依頼が割と頻繁に来るようになったことがあります。

これは余談ですが、あるコーチだった方は大企業出身の方で、学会にも入っていただいたのですが、年度をまたいで更新になった際、学会誌と共に会費の請求書をお送りしたら、下記のようなクレームメールが言いました。

本日ご丁寧な会費納入状況のご確認を送付いただきましたが、2015年に脱退依頼は完了しているはずです。
年会費の更新案内を事前に連絡せず、いきなり未納の連絡をもらった時点で不信感を感じ脱退依頼をしました。
学会誌も全くスケジュール通りは届かないのに年会費を収める理由はありませんでした。(以下、略)

イヤミたっぷりのこんなメール、人生であまり受け取ったことがないのでびっくりしました。まあ、学会を運営していると学会誌が遅延するのは当たり前だなーという感覚になっているこちらも悪いのですが、「年会費の更新案内を事前に連絡」を要求するってどういうこと? 学会は非営利団体であって、サービス業やっているんじゃないんだけど、と思っていたところ、実は気づいていなかったのですが、その方もコーチ紹介サイトに登録されていて、その方も今年、無事に(?)コーチ業を終了され、登録削除されました。これを受けて、こういう俺様は大事にされるべきだ、という殿様発想の方がコーチで居続けられると迷惑なので、ああ、コーチ的にも世の中的にも良かったなぁ、と思ったのです。

ちなみに余談ですが、偶然かもしれませんが、以前、弁護士事務所の勉強会のお手伝いをしていた頃、参加費当日支払いの勉強会に、この方と同じ会社の方が遅刻して参加してきて、参加費は休憩時間で良いですよ、と言って入れてあげたところ、途中で、「思っていた内容と違ったので帰ります。参加費も払いません。」と言い切って帰られたことがあり、あまりその会社の人に良い印象がないのです。

さらに、この会社の子会社の方と経営品質の関係でお話したところ、この会社は日本を代表する会社で、親会社は常に黒字決算なのですが、そのカラクリは、子会社の黒字事業を親会社に移動し、赤字事業を子会社に押し付ける形で高収益を維持しているのだ、というお話を聞いていて、そういう意味でも、この会社にネガティブな印象を持っていたりします。

と、これは余談なので、この会社を晒すのが目的ではないのですが、こういう「コーチのスクールでコーチングを学んで資格を持っている」人だけれども、とてもコーチには見えない人、というのが、コーチングのクライアントを獲得できずに辞めていく、という状況が来ているな、と感じている、という話です。

これはもともとクライアントを取れていた、という意味ではなく、さんざん投資して得たコーチという仕事に見切りをつけた、ということを意味していると思っています。つまり、日本のコーチング業界は現在、そういう段階に来ている、と。

何を言っているのかよくわからいと思いますので、どういうことを言っているのかを、こちらの本の内容を紹介しつつ、説明します。

もともとは1600円+税の本なのに、プレミアムがついていることにびっくりですが、この本は私がベンチャー企業に入った際、ビジネスを勉強しなくちゃと思って手に取った本で、あまりに良い本なので宣伝しまくった本でした。

この中に、こういう図が出てきます。

神田昌典『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』(ダイヤモンド社)P.52

まあ、MBAなどではおなじみの、プロダクトライフサイクルの話なのですが、神田さんが天才だなーと思ったのは、これが正規分布する、と言い切っているところです。

本文から引用してみます。

Sカーブは、縦軸を利益とすると統計上の正規分布となるため、導入期、成長期、成熟期は同じ年数になるのである。すると導入期がどの程度、続いたのかがわかれば、成長期がどの程度、続くのかも予測できることになる。

神田昌典『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』(ダイヤモンド社)P.60

これを読んだとき、天才か!と思ったのを覚えています。

これをコーチングという産業に当てはめるとどうなるか、ということを、私はずっと考えてきました。

日本におけるコーチングというサービスの導入は、諸説ありますが、1990年代後半と考えるのが妥当ではないかと思います。ちなみにアメリカでコーチングが「発見」された時期は1970年代前半なので、だいたい30年くらい遅いという印象です。

1990年代後半と言えばバブルが崩壊したこともありますが、同時に、いわゆる自己啓発セミナーが社会問題化して終焉した時代でもあります。このあたりの歴史を知りたいという方には、下記のノンフィクション作品がおススメです。

っていうか、この本もプレミアつきすぎですね。おそらく内容的に再販は難しいかと思いますが、この本の中では、高度成長期には、いわゆる企業研修を提供するような法人も、自己啓発的なプログラムを普及させていた事実が書かれています。1970年代後半にはこのノンフィクションのモデルの方も逮捕されてしまっていますが、この本のあとがきで斎藤孝さんは、オウム真理教の話につなげて考察されています。オウム真理教が事件化したのが1995年ですから、この頃に自己啓発セミナーも煽りを受けた印象です。

アメリカではコーチングとこうした洗脳的な自己啓発セミナーが両方生まれ、自己啓発セミナーの社会問題化を受けてコーチングが業界として成長していくわけですが、日本へまず導入されたのは自己啓発セミナーの方でした。このあたりの時代についてはこちらのノンフィクションが参考になります。

1990年代に自己啓発セミナーが商売にならなくなり、そこで、アメリカで盛り上がってきていたコーチングに目を付け、日本に導入し始めた人たちがいた、という流れになります。

時代をぐっと現在に持っていきます。2022年はコーチング業界にとって、ある種、ひとつの到達点になったと思っています。象徴的には、それは下記の2社の上場で語られるかと思います。

ビジネスコーチ株式会社:2022年10月20日に東京証券取引所グロース市場に上場
株式会社コーチ・エィが:2022年12月22日に東京証券取引所スタンダード市場に上場

だいたいざっくりで言えば、2000年頃に日本で始まったコーチング業界は、2020年頃に上場会社を2社持つ状態になった、ということができます。

これは何が大きいかと言えば、それまで不明だったコーチング産業の市場の大きさというものが類推しやすくなった、ということを意味しています。ちなみに、ビジネスコーチ社の2025年9月の決算では売上高は20億、コーチ・エィは2024年12月の決算では売上高は36億とのこと。ただし、コーチ・エィはアメリカのコーチUを子会社化している他、バンコク、上海、香港にも拠点があり、果たしてどこまでが日本国内での売り上げなのかはよくわかりません。

では、この2020年代初頭というのは日本のコーチング業界にとって、どういうタイミングなのでしょうか?

私個人の体験から振り返ると、一般の人がコーチングというものを認知し始めたのは、1999年に日産の改革に着手したカルロス・ゴーンが研修としてコーチングを取り入れたところではないかと思います。ただし、一般的な認知度で言えば、だいたい10~15%で推移しているような状態。いわゆる人事関係の人だけが知っている状態が長らく続きました。

まず日本で立ち上がったのがコーチング研修、そしてコーチ養成ビジネスでした。この時代が2010年代の終わりまで続いていた印象です。そして2020年代に入ってコーチングがコーチングとして普及していったような気がします。

一方で、注目したいのは、2010年代になって、コーチングと名乗らないコーチングっぽいサービスも増えてきていることです。象徴的な例として、もともと健康食品やらサプリメントの会社であったRIZAPがパーソナルジムの1号店をOPENしたのが2013年。「社外人材によるオンライン1on1サービス」と称するエール株式会社は2013年設立。英語コーチングサービスを名乗るPROGRITは2016年の設立のようです。同時期に同じようなサービスが立ち上がるというのは面白い現象ですね。

以上の話をプロダクトライフサイクルの話に戻しますと、ざっくりこのように位置づけられるのではないかな、と思います。

導入期 2000年代
成長期 2010年代
成熟期 2020年代

こう考えると、2022年の2社の上場は、コーチング産業の成熟期の兆候であり、ここから市場が縮小し、利益が上げにくくなるのではないか、と推察できます。

成熟期のマーケットに新規参入する人は居ません。ですので、それを感じ取ったクライアントを取れないコーチの方々は、「もう無理」と思って、繰り返しになりますが、大枚はたいて取得した資格を含め、もうコーチという仕事を手放そうという「損切り」される方が増えているのかな、と思ったのです。

ちなみに神田昌典さんは、本の中で「自分のビジネスが成熟してしまったとき、どうすればいいか?」ということも書かれていて、いくつかの方法を示されています。

方法1:専門化する
方法2:より速く商品(サービス)を提供する
方法3:パッケージ商品を販売する
方法4:成長している媒体に乗る(小判ざめ商法)
方法5:ナマケものの欲求を満たす
方法6:コストを大幅削減する
方法7:こだわり商品に特化する
方法8:社会的ミッションを持った会社をつくる(NPOモデル)

ただ、まあ、成熟期の商品で頑張るよりも、次の波に乗った方がいいんじゃない?という考え方もあって、それは以下の図で示されています。

神田昌典『60分間・企業ダントツ化プロジェクト』(ダイヤモンド社)P.58

私個人の感覚としても、コーチングの普及のためにと、国際基準を日本に入れたり学術的な研究成果を求めたりしていたのは、導入期から成長期にかけての活動だなぁ、と思っています。2020年代に入ってそれがあまり意味のあることでもなくなってきたと感じていて、ちょっと活動の方向性を変えようかな、と無自覚的に考えていたように思います。

最近は麻雀教室をやったり大学の非常勤講師をしたりしていますが、そうした活動の中で、すべてがコーチングになっているとも思いますし、また、世の中で、コーチとして大事なエッセンス、というものが言語化体系化できていないよなぁ、と感じています。その思いの最初の部分は下記の記事で言語化しています。

ということで、来年からまた新しいことを始めようと思っているのですが、少し長くなりましたので、その話はまた別な記事で。

現場からは以上です。お読みいただき、ありがとうございました。面白かった、参考になった、という方は是非、高評価いただけると嬉しいです。フォローも大歓迎です。

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