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The Hidden History of Coachingを読む その4

「河童の目線で人世を読み解く」市井カッパ(仮名)です。
「すべての組織と人間関係の悩みを祓い癒し、自然態で生きる人を増やす」をミッションに社会学的視点から文章を書いております。

御覧いただき、ありがとうございます。

今回も引き続き、The Hidden History of Coachingという一冊の洋書を読み解いていきます。

前回の記事はこちら

今回はPART3 THE SELF AND OTHERS(自己と他者)を読んでいきます。このパートは11章から13章までの3章構成です。順番に見ていきましょう。


Chapter 11 : We are not alone : the self, family and society(私たちは孤独ではない:自己、家族、社会)

 この章は1961年のスタンレー・ミルグラムの実験から話が始まります。この実験はゴードン・オールポート(1897-1967年)によって「アイヒマン実験」とも言われ、人が心理社会的圧力によって非人道的な行動を取りうることを示しました。クルト・レヴィン(1890-1947年)はMITでグループダイナミクスを研究し、感受性グループ、別名Tグループをほとんど偶然に生み出します。彼はゲシュタルト理論を引用しつつ、個人が機能する心理的な「場」または「空間」の概念について考え出します。グレゴリー・ベイトソン(1904-1980年)は統合失調症患者を研究する中で、相互作用の概念、およびダブルバインドの概念を提唱します。また、マレー・ボーエン(1913-19年)は、家族療法の中で三角関係という概念を生み出します。サルバドール・ミヌチンは構造派家族療法を創始します。バージニア・サティア(1916-1988年)はエサレン研究所で一時期、カール・ロジャーズやアブラハム・マズローと一緒に働いており、その後、家族療法に経験的アプローチをもたらします。

 これらの理論や実践は、コーチングにチーム・ダイナミクスやダブルバインドの概念、つまりは個人は個人だけで考えているのではなく、他者からの影響を受けているという考えを与えていると考えられます。また、これらの考えはチームコーチングでも活用されます。

Chapter 12 : Identity and employment : finding ourselves in the workplace(アイデンティティと雇用:職場で自分自身を見つける)

 この章では労働者の歴史が比喩的に語られます。ラッダイト運動について語られ、ウィリアム・モリス(1834-1896年)がジョン・ラスキン(1819-1900年)の著作に刺激されて始めたイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動について語られます。アメリカの社会学教授であるリチャード・セネット(1943-)、言語学教授のデボラ・タネン(1945-)、社会学教授のアーリー・ホックシルド(1940-)が紹介され、女性とリーダーシップと労働というテーマが語られます。

この章のまとめ部分、「コーチングへの影響」の冒頭では、以下のように語られています。

 私たちは、これまで以上にコーチングの助けと、他の人と交流し、キャリア、趣味、仕事、遊びのニーズのバランスをとるための有意義な方法を必要とする時代に生きています。

 つまりこの章で語られているのは、コーチングがサービスとして成立するための条件、つまりは人々のニーズについて書かれているものだと推察できます。

Chapter 13 : Psychometrics : from IQ to Myers-Biggs and beyond(サイコメトリクス:IQからマイヤーズ・ビッグスまで、そしてその先へ)

 最終章では世界で初めて知能テストを生み出したソルボンヌ大学の実験心理学者アルフレッド・ビネ(1857-1991年)がまず登場します。1911年にはドイツの心理学者ウィリアム・スターンによって現在IQとして知られるものが誕生します。H.H.ゴダード(1856-1957年)、スタンフォード大学の教授ルイス・ターマン、ビッド・ウェクスラーという名前が続きます。

イギリスの心理学者チャールズ・スピアマン(1863-1945年)はこれとは違ったアプローチを取って、1904年に「客観的に測定され定義された一般知能」という論文を発表しました。

この画一的な知能について反対者たちも出てきました。シカゴ大学のロヴ・サーストン(1887-1955年)、ロバート・スターンバーグ、ハーバード大学のハワード・ガードナー(1943-)らです。ガードナーは多重知性理論を生み出します。

ダニエル・ゴールマン(1946-)は感情知能(EQ)、そして社会的知能(SQ)を提唱します。また、ユングのタイプ分けの研究から、キャサリン・クック・ブリッグス(1875-1968年)と娘のイザベル・ブリッグス(1897-1980年)はマイヤーズ・ブリックス・タイプ指標(MBTI)を生み出す、女性の就職支援に活かそうとします。また、ハーバード大学で博士号を取得した心理学者ウィリアム・モールトン・マーストン(1893-1947年)は、DISC理論をまとめます。Tグループも実施していたウィル・シュッツは、FIRO-Bを開発し、1985年に『対人行動の3次元理論』という書籍を出版します。

マーカス・バッキンガムとドナルド・クリフトンのクリフトン・ストレス・ファインダー、マーティン・セリグマンとクリストファー・ピーターソンが開発したVIA(Values in Action)調査、デビッド・コルブの経験学習理論に基づいたLSI(Learning Styles Inventory)、コスタとマクレーの5因子に基づくNEO-FFI、NEO-Pi-R、HPIなども紹介されています。他にもリーダーシップの資質に焦点を当てたLEA、LPI360、チームロールに焦点を当てたTPSなどが紹介されています。

これらの心理学的な統計に基づいたツールが、今のところ現代のコーチングに最後に影響を与えたもの、というのがこの本の主張のようです。

はい。ということで、今回も短めに、なるべく原文の結論部分を中心に内容を紹介させていただきました。今回はPART3 THE SELF AND OTHERS(自己と他者)を読みましたが、このパートでは、コーチングが産業化していく様が読み取れたかな、という感じです。

これで、The Hidden History of Coachingをまるまる一冊、読み込むことができました。なるほど、こういった様々なものから影響を受けて、コーチングというものが今の形になっているのだな、ということがよくわかりました。

今回は内容の紹介ということで、できるだけ読み解いたり解釈を加えたりしないで書きました。ここから私が何を考えたのか、ということは、下記のセミナーもしくはまた別の記事で書きたいと思います。

実は、このセミナーの自分のパートの資料の準備用と思って読んでいましたので、なんとかセミナー開催までに読み終わってよかったと個人的には胸を撫でおろしております。

現場からは以上です。お読みいただき、ありがとうございました。
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