「組織の隙間」を埋め、実務まで完遂するBizOpsの立ち位置とは
戦略を立てる専門家も、システムを構築する専門家もいる。しかし、その間に落ちている泥臭い実務の設計と実装を一気に引き受け、完遂できる存在は驚くほど少ないのが現実です。
前回の記事では、戦略が現場で止まってしまう実行停止の背景についてお話ししました。
今回は、その課題を具体的にどう解決するのか。私が担っているBizOpsという役割が、他の専門家とどのように異なり、どのような価値を組織にもたらすのかを、現在進行中のプロジェクト事例を交えて紐解いていきます。
専門部署が揃っているのに、なぜデータは繋がらないのか?
現在支援している法人営業組織の現場では、非常に興味深い現象が起きていました。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス。それぞれの部門には経験豊富なリーダーがおり、チームとしての最適化は進んでいました。さらに、世界中で広く使われているSFA/CRMも導入済みです。
しかし、いざ経営陣から「結局、今の見込案件はどこで詰まっているのか」「この投資に対して、最終的な成約までどのくらい繋がっているのか」と事業全体のコンディションを問われると、途端に機能不全に陥ります。各リーダーが夜な夜な自分のチームのスプレッドシートを突き合わせ、手作業で数字を加工・修正して、ようやくレポートを作り上げる。
優秀な人材と優れたツールが揃っているのに、なぜこんなことが起きるのでしょうか。それは、各部門の内側を設計する人はいても、部門と部門のつなぎ目を設計し、データと業務が流れるパイプを繋ぎ込み続けるプロセスオーナーが不在だったからです。
他の職種との役割の違いを整理する
各分野のスペシャリストが揃っていても組織に空白地帯が生まれてしまうのは、組織が成長する過程で、各部署が自分たちの成果を出すための最適化を自律的に進めるからです。
マーケはマーケの、営業は営業の使いやすさを追求した結果、部署をまたぐデータの整合性や一貫した運用ルールが、誰にもコントロールできない状態で崩れていってしまうのです。
こうした成長に伴う歪みに対し、他の専門職とBizOpsではアプローチの焦点が異なります。
戦略コンサルタント:高い視座からの「理想の設計図」の提示
戦略コンサルタントは、市場環境や競合を分析し、組織が進むべき解を導き出すことに価値があります。
事業成長のためにデータの定義を統一し、SFA/CRMをマスターデータとして運用すべきだというグランドデザインを描く。これは極めて正しく、組織が進むべき北極星となります。
しかし、その正論を現場のどの画面のどの項目にどう入力させるかという手触り感のあるレベルまで落とし込み、現場に定着させるのは、本来は組織側の役割となります。
ここが、描かれた設計図と日々の泥臭い実務との間に生まれる最初の隙間です。
システム受託・ツール導入支援:高品質な「道具」の実装と安定稼働
システム開発会社やツール導入支援は、専門的な技術を駆使し、ビジネスの要件を堅牢なシステムとして形にすることに価値があります。
彼らは技術的な制約をクリアし、エラーのない安定した環境を構築するプロフェッショナルです。ただし、彼らの主眼は定義された要件を高品質に実装することに置かれます。
そのため、各部署が独自の運用を始めたことで全社的なデータの整合性が少しずつ崩れていくような、現場の運用のゆらぎにまで責任を持つことは困難です。
BizOps:ビジネスとシステムの「接点」をデザインし、完遂する
私のような実務実行型のBizOpsはこれら両者の間に立ち、ビジネスとシステムの接点をデザインすることに責任を持ちます。
戦略の意図を正しく咀嚼し、システムの制約を把握した上で、現場が無理なく運用できる実戦的な業務フローを自ら設計します。
BizOpsの独自性は、この設計図を書くだけでなく、自らツールの設定画面を開き、データの繋ぎ込みを実装し、現場に定着するまで伴走しきる完遂力にあります。
特定の部署の利便性だけでなく、マーケからCSまで一連の流れとしてデータが正しく受け渡されているか。経営が求める判断材料が自動的に生成される仕組みになっているか。
ビジネスの全体最適という観点から現場のオペレーションをあるべき姿へと整え、戦略を具体的な仕組みへと翻訳し、現場に定着させるまでを引き受けます。
実務まで引き受けることでしか見えない真実
私がBizOpsとして、自らSFA/CRMの設定をいじり、データベースから情報を手繰り寄せる実務にこだわるのには明確な理由があります。
実際に管理画面を開き、現場と同じ入力フォームを触って初めて、なぜ現場が入力したがらないのか、なぜデータが汚れるのかという真実が見えてくるからです。
あるプロジェクトでは、営業担当者が一つの商談を入力するために3つの画面を行き来しなければならない状態になっていました。
これは外から入力してくださいと正論を言っても解決しません。私がやるべきは、フィールドを整理し、入力を自動化し、現場がこれなら楽だと思える仕組みへと物理的に作り変えることです。
また、分析環境が整っていない現場では、SFA/CRM以外のDBにある情報が必要なことも多々あります。それをシステム担当に依頼してくださいと突き放すのではなく、私がその繋ぎ込みのロジックを考え、スプレッドシートの集計作業を一つずつ仕組みに置き換えていく。微細な不具合に気づきその場で直すというスピード感は、実務に深く入り込んでいるからこそ提供できる価値です。
盲点は「つなぎ目」にある。そして、それは改善できる
今回の支援を通じて改めて感じたのは、多くの組織において部署間の断絶はもはや仕方のないこととして諦められているという事実です。
前後の工程を意識したデータの設計が必要だという発想そのものが、日々の業務に追われる現場では盲点になりやすいのです。
私はまず、バラバラになったフローを回収し、一枚の全体地図に描き出すことから始めました。ここでデータが止まっています、この二重入力が実はチームのスピードを奪っています。こうして可視化されると、現場のリーダーたちは驚くほどのスピードで理解し協力してくれます。彼らもまた、非効率を感じていながらどう直せばいいのか分からなかっただけなのです。
つなぎ目は自然に整うことはありません。しかし、意志を持ってデザインすれば必ず劇的に改善できます。
変化に強い「実行基盤」を、共につくり続ける
私のゴールは、単に綺麗なレポートが出る状態にして去ることではありません。
事業が成長すれば、必ず新たなつなぎ目の不全が生まれます。昨日の最適解が明日のボトルネックになる、それが急成長企業の常だからです。
だからこそ私が目指すのは、一度作って終わりのシステムを提供することではなく、事業のフェーズに合わせて仕組みを柔軟に書き換え続けられる組織の状態を、パートナーとして支え続けることです。
経営陣や事業責任者が常に真実の数字を手に取って次の一手を決めることができ、現場が迷いなくその一足を踏み出せる。
新たな課題が見つかればすぐに仕組みをアップデートして進化させていく。
戦略を絵に描いた餅にせず、常に現場の実行力へと変換し続ける。
特定の部署の利益ではなく、事業全体の成果を最大化させるための楔を打ち続ける。
そんな伴走型のBizOpsとして、組織の成長の痛みに寄り添い、共に歩んでいきたいと考えています。
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急速に拡大するニーズに伴い、専門化・細分化が進むBizOps求人市場の現在を読み解きます。あわせて、尖った専門性がないことに葛藤していた自身のキャリアが、BizOpsという概念に出会いどう再定義されたかという体験をまとめました。
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