1-4-② 襲いくる過去、追いかける真実②
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
目次 前書き&注意点 前の話(1-4-① 襲いくる過去、追いかける真実①)
「探し物を手伝うのはいいんすけど、どうして漫画本にここまで拘るんすか?
漫画なんかまた買えばいいじゃあねえっすか」
駅前でチラシを通行人に見せながら、仗助はホル・ホースに尋ねた。
2人は、連れのボインゴ探しから、鸚鵡探しになり、今はボインゴが持っていて無くしてしまったという大型の漫画本を探している。
仗助が手に持ったチラシには、”さがしています まんが”と書かれ、縁取りが彩られた本の絵が書かれ、真ん中に、”OINGO BOINGO”と英語の題名が書かれて、その下に人のイラストが添えられている。
同じチラシを手にしたホル・ホースは隣で道ゆく人に声をかけている。彼曰く自分一人よりは日本人の仗助と一緒に声をかけた方が、返事をしてもらえるらしい。
が、その返事は芳しいものではなかったが。
日本では漫画は山ほど売っている。本も漫画も読まない仗助は全然詳しくなかったが、あちこちで売られているのは知っていた。ここまで労力をかけて1冊の本を探すというのは、仗助にしても疑問だった。
仗助の問いに、
「ああ~~……要するにアイツにとって、我が身とおなじくれぇ大事なもんなのさ」
とホル・ホースはわかったのかわからないような返事をした。
「はあ~我が身ねえ~」
仗助は先ほどのホテルの部屋でボインゴにあったが、ほとんど話さなかった。日本語ができないんだろうか。
植え込みに腰掛けてチラシを見つめていた仗助は、思い出したことに気づいて、立ち上がった。
「どうしたよ仗助」
「いや、ちょっと思い出したことがありましてねえ。
後でホテルで合流しましょうや」
とホル・ホースを残して街中に消えていった。
*
涼子は、霊園から北に向かう通りで、あっちを見上げ、こっちを見上げていた。
(どうしよう……せっかく見つけたのに、見失ってしまった。こっちに向かったと思ったのに)
裏通りに入ると、右から大きな人影が現れ、行き先を塞いだ。
「見つけたぜ、先輩」
ハート型の改造制服に、リーゼントの髪型が見下ろしている。
「見かけねえ制服だからよお、もうこの町にいねえかと心配したぜ」
(東方仗助!)
「つかぬことを伺うけどよお~」
壁に手をついて身をかかめ、涼子の顔を伺うように探るように見ながら、
「おれらに隠してること、あるんと違うっすか?先輩」
と続けた。
涼子は、踵を返すと全速力で走って逃げた。
(知られた? 私がこの本を持っていることを!!?)
住宅地を必死に走った先は、行き止まりになっていた。
(どうしよう、どうしたらいい? どうすればこれを切り抜けられる!?)
焦った涼子は、カバンに手を入れて漫画本を出そうとした。
その手を大きな手が掴んだ。
「ぶたれた時見かけた気がしたんすけど、確信なかったんでカマかけたんすよ。本当に先輩が持ってたとはねえ~」
追いかけてきた仗助が、漫画本を持った涼子の手を掴んでいた。
「……ッ」
「けどよお、」と言いよどんだ。
「なんつーか、なんとなくだけどよお、らしくねえっつーか……なんかあったんすか?」
仗助の口調は責めているものではなく、困惑しているような諭すようなものだったが、涼子にとっては恐怖でしかなかった。
(見られた!知られてしまった! 探している本を私が持っていることがバレてしまった!この本を取られてしまう!この本がなくてはわからないのに……過去も……お兄ちゃんの”真実”もッ!)
「今、この本を失うわけにはいかないッ!」
涼子は力一杯仗助の手を振り払った。
「私は……私は知りたいの!
典明お兄ちゃんが死んじゃった理由を!どうしてエジプトに行って死んでしまったのかをッ!
この10年ずっと、ずーーーっとそればっかり考えてた!
絶対、このDIOって男が関係してる!
あの日、私が道に迷わなければ、お兄ちゃんが探しに来なければ、DIOと会わなかったかもしれないのにッ!
そうしたら、お兄ちゃんは……死なずにすんだかもしれない……今も……今も生きてたかもしれないのにッ!」
──きっとよ!ヤクソクしたからね!
──はいはい……わかったよ。
漫画本をしまったカバンを抱え込んで、涙ぐみ始める涼子を見下ろし、仗助は呆気に取られた様子だった。「DIO……」
涼子は、恥も外聞もなく涙をこぼしながら仗助を見返し、
「私は知らないといけないッ それには『この本』が必要なのよ!!!」
叫んで走り出した。
が、
「待ちなよ、先輩」
と仗助がカバンを持たない涼子の手を掴んだ。
痛くはないが、今度は振り払えない程度には強かった。
「なんか……事情があんのはわかったけどよお~ その、お兄ちゃん?のことと漫画本と、どんな関係があるんすか?」
今度は涼子の方が驚く番だった。
「あなた……この漫画のこと知らないの?」
「……? どーゆー意味……?」
その時路地裏にもう一人の人影が現れた。
ぐるりと広いツバに黄土色の帽子に、同じ色のブーツ。
杜王町に不似合いなカウボーイ、ホル・ホースだった。
「仗助の様子がおかしかったんで追ってきたが、あんたが拾ってたのか、お嬢ちゃん」
「兄貴ッ」
「お嬢ちゃん、その本が何かあんたわかって……」とホル・ホースは問いかけたが、
「いや……悪いがそれは返してもらうぜ。オレの相棒の大切なもんなんでな」とすくむ涼子に手を伸ばした。
(……もう逃げられないッ!)
そこへ、仗助がわって入った。
「まあまあ、待ってくださいよお、兄貴。なんか、先輩──この人にも事情があるみてえでよ、少し話を聞いちゃくれねえっすか?」
驚いた涼子が仗助を見た。
「大事なもんなのはわかってるんすけど、話次第ではもうしばらく本を貸してやるとか……駄目っすかねえ?」
「……・あのな仗助、その本ははあ……」
「……その本は?」
ホル・ホースは仗助を見て、二人の視線が交差した。
が、次の瞬間、ホル・ホースは涼子に向き直って手を伸ばした。
「やっぱりダメだぜ仗助ッ!お前の頼みでもな!!」
「……そうすか」
仗助の後ろに彼のピンクのスタンドが浮かび、ホル・ホースに向かってパンチのラッシュを喰らわした。
と思ったら、道の後ろにあったごみ収集所のゴミ箱にラッシュが決まり、ゴミ箱がかけらに変形して、ホル・ホースの周りに浮いて再度ゴミ箱の形をとった。
ホル・ホースはゴミ箱の中に閉じ込められた形になった。ご丁寧に鍵まで掛けられている。
「おっおいっ、何の真似だッ仗助え!!」
「世界一女に優しい男の兄貴が、先輩泣かすんは違うっすよねえ~ 悪いすけど、しばらくそこで我慢しとって下さいよ」
ゴミ箱に答えると、仗助は涼子の手を引いて走り出した。
*
仗助は涼子を引っ張って、さらに北に向い、学校の手前までやってきた。
春休みの学校周辺には人の気配は少なく、部活をやっている生徒が行き交っていだが、制服の人間もいて、木々も多く、仗助たちは紛れやすかった。のどかに鶯が鳴いている。
「……どうして? ホル・ホース……さんと、この本をあなたも取り戻しにきたんじゃあないの?」
上がった息を整えた後に、涼子が尋ねると、「その本は返してもらうっすよ」と仗助は答えた。
「けどよお。あんなクールぶってたあんたが、そんな必死になってんのを見ちゃあほっとけねえんでしょう」
涼子が仗助を見ると、なぜかそっぽを向いた。
「……そんな泣いてよお。」
見た目や言動はどう見ても怖い不良のそれだが、実際はそうでもないのかもしれない、と涼子は東方仗助の評価を改めた。
その仗助の頭上を、白い鳥が通りすぎるのを、涼子は見た。
「なんか事情があるんすよね。言ってくれりゃあ、もう一回おれから、その本の持ち主に話をして、少し貸してもらうとかやってみるんで……」
と、頭をかきながら言って仗助が振り向くと、涼子は学校の校庭に向かって校門の中に走って入っていくところだった。
「ちょッ、まッ、まじかよッ先輩ッ!」
涼子は、飛んでいく白い鸚鵡を追いかけて走り続けた。
飛んだ鸚鵡は、校舎裏の建物の中に入っていった。
古そうな建物は改装中らしく窓を含めた外壁にシートが被せられ、「工事休止・立ち入り禁止」の張り紙がされていたが、なぜか入口ドアの錠は壊れて落ちていた。
構わず涼子はドアを開けて中に飛び込んだ。
(どこ? 早く鸚鵡を見つけて、過去を手に入れないとッ!)
やや薄暗いが、シートの空いている隙間から日が差し込んで内部が見えないことはなかった。
改装中の旧校舎の中は、廊下だったと思われる細長い通路が続き、腰までのコンクリの仕切りの向こうに、3教室分ほどの広い空間が広がっていた──教室の壁は取り払われ、柱の鉄骨や天井の鉄骨も剥き出しになっていた。
床にはロープやさまざまな建築工具、袋に入った砂、畳んだシートなどが置かれていた。
涼子が廊下の途中の階段を登って2階にたどり着くと、どこかで鳥の鳴き声がした。
まだ鸚鵡はこの建物にいるらしい。
涼子が2階に足を踏み入れた瞬間、目の前に広がったのは砂だった。
教室はどこにもなかった。
──そこは、砂漠だった。
(な……なにこれ?)
よく見ると、砂の向こうにぼんやりと、コンクリートの校舎の風景が透けて見えた。
眼球の上にコンタクトを貼り付け、映写機で砂漠の世界を写したようだった。
そして気がついたら、涼子は砂の上に伏せをしていた。
目の前に、外国人の男性がこちらに足を向けて倒れており、その首の辺りから、血液が砂の上に流れてきていた。
さらに手前に水筒が転がっていて、その中からも血液が溢れ流れている。
倒れた男性から離れて、3人の男性が砂の上に伏せをしており、涼子のすぐ隣にも、男性が同じ姿勢をとっていた。
涼子のすぐ隣の男性は、白い肌、片方だけの黒のタンクトップで逞しい両腕がみえる。銀色の髪をまるで電柱のように突き立てており、半分に割れたハートのぶら下がり式のピアスを両耳から下げた、青い目のまだ若い白人男性だった。見たことない男だ。
涼子も気がつくと、男子学生の学生服だった。下を見たつもりもないのに下を見ると大きな手で男の手だった。
(え? 男の人の幻覚を見ているの、私?)
──「ポルナレフ、水筒を攻撃しろ」
(典明お兄ちゃんの声!)
英語だった。しかもややきつい命令口調だ。
が、聴き間違えるはずがなかった。
(嘘……いや絶対そうッ! これは典明お兄ちゃんの声だッ! これは典明お兄ちゃんの幻覚なの? なんでこんなところで知らない男の人と砂漠に寝そべっているの???)
混乱する涼子の横で、ポルナレフと呼ばれた知らない外国人男性が英語で答えた。
──「お……おれが……?」
──「い……今のあの小さい水筒の中にパイロットの頭が全部まるまるひきずり込まれたんだぜ……つまり、あれに穴を開けるということは」
──「いやだぜ!花京院、オメーの方が近いぜ、おまえがエメラルドスプラッシュくらわしてやりゃあいいじゃねーか」
涼子はさらに混乱していった。
(なにこの人? 何でこんなに典明お兄ちゃんに親しげなの? こんなふうに典明お兄ちゃんに話しかける人、いない……いないはずなのにッ! 誰? 誰なのこの男の人ッ!)
花京院典明も答えた
──「ぼくだっていやだ!」
(いやだ?!ぼくだっていやだ!てそう言ったの? あの典明お兄ちゃんが?
いつも穏やかで優しくって、よっぽど危険な時ぐらいしか怒ったりきつい口調をしたことのない、あの典明お兄ちゃん?
こんな典明お兄ちゃん、私知らないッ! )
隣の男が指を突き立てて、涼子、いや花京院典明に、怒った。
──「自分がいやなものをひとにやらせるなッ! どおーゆー性格してんだてめーーッ」
(何で? 何で典明お兄ちゃんにそんな言い方できるのこの人?……このやりとりまるで……まるで……)
次の瞬間、両目に縦に切られるような衝撃を受けて、
花京院涼子は意識を失った。
