3-10-① 別れ①
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
仗助はランドクルーザーの助手席で目を覚ました。
「んーーーーーーー」
あくびをしつつのびをして車内を見渡すと、後部座席でボインゴが漫画本と日本刀を抱えて寝ていた。
サンタナを落とした火口を再び”治して”塞ぎ、決着は着いた。
疲れ切った一行は、駐車場の車内で仮眠をとっていたのだった。
仗助はバックミラーをみながらくしで髪をととのえて車から降りた。
駐車場の端に涼子が立っていて、山頂の方を見ていた。
仗助が近づくと涼子はふりかえり、「おはよう、仗助くん」と微笑んだ。
「あーおはよっス。いやー寝た寝たー」
仗助は伸びをしながら涼子の向かいに立った。
涼子は眩しそうに仗助を見つめると、
「夜明けよ」
と仗助の背後に視線をずらした。
仗助が振り返ると、東の空に光が差し始めた。
キュルーーーーーと飛んできたサルジュが、仗助と涼子の上をぐるりと一周して声をかけるように鳴き、また山の中に飛んでいった。
山の斜面に茂る木々の中に飛び込んでいき、木の間から出てきて空に舞い上がり、山中を飛び回っている。
涼子は飛び回るサルジュを見ながら続けた。
「……吸血鬼たちの体が、朝日を浴びて灰になっていってるわ」
涼子は、サルジュの目を通して、山の中の吸血鬼やゾンビの最後を見届けているのだ。
「……そっスか」
仗助も山の中をあちこち飛び回るサルジュに目を向けた。
月は西に沈み、山の影に隠れてしまっていた。
東から登りゆく朝日が、2人のいる駐車場を、そのまま嶺冥山全体を明るく照らしていく。
闇は消え、未だ残る白い雪が朝日に白く輝く。
霧の晴れた嶺冥山は、もう吸血鬼の巣窟ではなかった。
雪を残しつつも春を迎える準備を始めている、日本のどこにでもある冬山に見えた。
*
山に入っていたホル・ホースと典明、サルジュが車に戻り、一行は再び幽霊の運転で杜王町の花京院家の駐車場に戻ってきた。
助手席で地図を広げて道案内してきた仗助が車から降りると、涼子も後部座席から降りて、仗助の前に立った。
「……あの、仗助くん……」
「あー、色々あったけど、なんだかんだ無事に戻って来れてよかったっスね。先輩」
軽く返す仗助を涼子は黙って見つめた。
見ると瞳が潤んでいる。
「……あの、せん」
「仗助くん!」
涼子は仗助に抱きついた。
「ありがとう仗助くん。本当に……」
少し震えた声で自分の胸に抱きつく涼子に、仗助は戸惑っていた。両手が空中を彷徨う。
「……私、一生忘れない……」
「……って、な、なんすか……」
「いや、ほんとだぜ、仗助。感謝してるぜ、ありがとよ」
車から降りてきたホル・ホースも、口に加えた棒を外しながら涼子に続けて謝意を表した。
「……世話になった……」
ボインゴまでボソリと礼を言う。
「え、ええー? いやー確かに今回の吸血鬼退治?はこの仗助くんの活躍あってのことっスけど、みんなそんな改まっちゃって、やだな、あッガ……」
ガツン。
仗助は首筋に衝撃を受けた。
グラグラと視界がふらついて暗くなっていく。
立っていられない。
(な……後ろから……首に)
必死の思いでなんとか背後を振り向くと、花京院典明が立っていた。
横でハイエロファントグリーンが右手で手刀の形を作っている。
これで当身を仗助に当てたようだ。
(……な……なん……で)
声を発することもできず、仗助は、前のめりに涼子にのしかかるように崩れ落ちていった。
目の前が暗くなり、意識が途切れる。
最後に聞いたのは、ニヤリと微笑みながら見下ろす典明の、
「ジョースターさんによろしく、仗助」
