3-9-③ 超春満月③
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
典明は、ハイエロファントグリーンの触手を木々の間に伸ばし、次から次へと木を渡って移動していった。
元々長く伸びる触手の200mを超えていた射程は、さらに、300、400、500と伸びていった。
あっという間に5合目の駐車場に辿り着くと、抱えていた涼子とホル・ホースをおろした。
一緒についてきたサルジュのイシス女神が、ポイっとボインゴを放り投げた。
「僕は戻るッ! 今度こそ動くなッ!」
と言い残すと、典明は、また山の方へあっという間に戻っていった。
「サルジュ!お願い!」
涼子の声に、「ピュイ!」と鸚鵡は答えて、典明の後を追って飛んでいった。
桜色の輝く満月の下。
月あかり以外は真っ黒な山の中。
遠目にも山の8合目あたりで何かがうごめいているのが見えるようになっていた。
そして、中腹から頂に向かって、月の光を反射し緑に輝く細い線が、上へ上へと伸びていった。
駐車場は一応夜でも街灯が立っていた。
街頭に寄りかかってたち、山の方を見ているホル・ホースが
「あんな、バケモノどうすんだよ……」
とぼやいた
ボインゴは街灯のそばに座り込んで、背中のナップザックから自分のスタンドの漫画本・トト神を取り出して、開いて読んだ。
読み終わると、「……ん」と開いてホル・ホースに見せた。
覗き込んだホル・ホースはニヤリと笑った。
(典明お兄ちゃん……仗助くん)
涼子は、サルジュと視界を同期させた。
*
「ドラッドラッドララララララララララーーーーッ!」
月明かりの下、金色に輝かせた両の拳を振り回し、仗助のスタンドがあたりを殴りつけ回っている。
目にも止まらない速さで周囲にラッシュを浴びせていっている。
が、射程距離が広くない仗助のスタンドは、巨大化し遠くから回り込んだアメーバの泥に周囲を囲まれていき、背後を塞がれた。
「こいつは……」
アメーバが集まって厚みを高さを増し、仗助の正面に巨大な波のような手がそそり立った。
「マジかよ……」
手が上から仗助を叩きつけた。
緑の光がすごい速さでその間をすり抜けた。
典明が仗助をハイエロファントグリーンで抱き抱え、飛び去っていた。
「待たせたッ!」
「助かったぜッ!」
残った木々を飛びついで、サンタナ・アメーバから距離をとり、少しはなれた7合目付近に、仗助と典明は降り立った。
「……さて、どう戦うか、だが」
「とにかくデカすぎんだよなあ、あいつ」
仗助のぼやきをきいた典明は、
「僕に考えがあるんだが」
と仗助に耳打ちした。
聞いた仗助は、
「グレートだぜ」
とイタズラを聞いたようにニヤリと笑った。
再びミシッベキッと薙ぎ倒される木の音と、地面をはうアメーバの音が聞こえ、様々なものが混じり合ってもはやなんと表現していいのかわからない色になったサンタナ・アメーバが地面を埋め尽くしながら、2人の前に現れた。
「よしッ!いくぜ、典明!」
「ああッ!仗助!」
*
サルジュが飛んでいくと、木々の間から仗助と典明が飛び出してきた。
「キュ?」
「ひいいいいいーーー気持ち悪いいい……吐きそうだ……」
「やめろッ! 50メートル上空から汚物を森に撒き散らすんじゃあないッ! 我慢しろ、いくぞッ!」
そのまま急降下し、泥のアメーバに突っ込んでいく。
「えーい、波紋の呼吸うううッ ドラアアアアア!」
その勢いのまま波紋を纏った両の拳を叩き込むと、アメーバの殴られた部分がパッと千切れて消え去った。
「効いている! もう一度だ、仗助!」
仗助と典明はタッグを組んで、典明のハイエロファントの長い触手で木々を結んで、空中を飛び回りながら、仗助のスタンドが波紋を纏って殴りつけるという攻撃を繰り返していた。
跳んで離れ、叩いて跳んで。
蝶のように舞い、蜂のように刺す、と言われたのはどこのボクサーだったか。
赤い髪の緑の鳥が、長い尾を引いて、飛び、跳び、舞う。
青い卵と、水色とピンクの守護霊を抱いて。
涼子の横にいるホル・ホースが、頂の方に目を細める。
「派手にやってんなあ、あいつら」
麓の方に移動していたサンタナ・アメーバは、仗助と典明たちを追って、向きを変え、逆に頂の方に登って移動していった。
2人が戦う様子を、涼子はサルジュの目を通してもっと間近に見ていた。
「そっちだ仗助!いけッ!」
「おうよ!ドラア!」
(典明お兄ちゃん。
……なんだか、楽しそう。)
サルジュと同期してから、涼子は、エジプトでのジョースター一行の旅の記憶を見てきた。
花京院典明は傷つき倒れても、仲間たちのもとへ戻っていった。
過去に戻った涼子が止めても。
──《そうしたら、ずっと知りたかった典明お兄ちゃんの”真実”が目の前にやってくるぞ!》
──泣かないで、涼子ちゃん。
──僕は彼らと旅ができて、幸せなんだ。
本当は、わかってた。
記憶を見て、わかった。
一緒に戦って、わかった。
過去に遡って、わかった。
典明お兄ちゃんは、無理矢理エジプトに連れて行かれたんじゃあなかった。
仲間と一緒にいることが、一緒に戦えることが、楽しく、喜ばしく、誇らしく、嬉しかったのだ。
涼子たちと離れ、
仲間たちと共に過ごした人生最期の旅路で、
花京院典明は、
幸せだったのだ。
(典明お兄ちゃん……)
*
山頂近くまで行くと、仗助と典明はアメーバを追い越して、山頂に降り立った。
仗助はスタンドを現すと、今度はアメーバではなく、山頂の地面を思いっきり殴りつけた。
「ドララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララララーーーーーーーッ!!!」
地面が歪み、火口が突き出した。
仗助のスタンドが、嶺冥山を、溶岩を剥き出しの活火山の状態に、”治した”。
その前に典明が仗助を拾い上げて山頂周囲の木の上に乗せる。
2人を追ってきたサンタナ・アメーバは、煮え立つ溶岩の中に飛び込んだ。
「↯⟁Ϫ⧫⩢⋮⩸χ⧓҉!⋔…χ⋮⫷⩸ϞϽ⊹!!……・ʘ↯⩸⋇ᛟ⩫⋯⋰⫷⊙☍……・」
サンタナだったものは、溶岩の中に溶けて消えていった。
