記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王 15巻 【ネタバレあり読書メモ】  ”ドス黒い”アバンに見る勇者という人間

★★★★★
Amazonでレビューしたものです。

テンペストの封印呪法によって、ベルクスの拠点・魔峡谷で囚われの身となったアバン。しかし意外な存在の助けによって目覚め…!? 憤怒の「ベルクス撃滅編」!!

Amazonのページより



0.これまでの物語


ドラゴンクエスト・ダイの大冒険の前日譚で、「ダイの大冒険」のダイの師であるアバン先生の過去を描いている。

勇者・アバンは、戦士・ロカ、僧侶・レイラ、大魔導士・マトリフとともに旅をし、魔王・ハドラーを倒し、世界に平和をもたらした。

しかし、その平和は長くは続かなかった。
ハドラーは大魔王・バーンによって生き延び、再起の機会をうかがう。人間たちの間でも権力争いの兆しが広がっていく。世界は再び、静かに歪み始めていた。

アバンは少年・ヒュンケルと出会い、彼を保護する。しかしヒュンケルは「父」ではなく「先生」を求め、アバンもまた勇者ではなく、次代を育てる者として生きる決意をする。

だが、魔界の武器職人によって生み出された「ベルクス」と呼ばれる存在が現れ、アバンを執拗に狙い始める。
戦いの中で、ヒュンケルは父の死への怒りとアバンへの想いの間で揺れ動き、ついに師に刃を向けてしまう。

その直後、アバンはベルクスによって封印され、ヒュンケルはミストバーンの手に落ちる。

こうして、師と弟子の道は決定的に分かたれた――。

アバンは勇者ではなく、一人の人間として決断する。




1.撃滅されるベルクスたち


凍れる時間の秘法のように、石みたいに固まって封印されてしまったアバン。
その封印を解いたのは、ベルクスの一人、魔弓のヒヒだった。

仲間を出し抜いたため封印されていたヒヒは、仲間への復讐からアバンに協力を申し出、2人は協力して脱出することに。

しかし途中で気づかれ、残り3人のベルクス=魔妖剣・魔剣・魔甲に、アバンは魔弓で対抗。
ヒヒの我が身を犠牲にした協力もあり、撃滅に成功し脱出した。

しかし、ベルクスの全滅は、アバンによるものではなかった。
彼らの創造主が終止符を打ったのだ。


2.生み出した命を絶つ


ベルクスを生み出した一族ーーベルク。
かの”ダイの剣”を作った魔界最高の名工・ロン・ベルクが、その末裔である。

彼の手によって、最後に残ったベルクス・魔剣のライゼは破壊された。

”ダイの剣”は、戦いでも自分が不要な時は鞘から抜けないように、必要な時は勝手に鞘から抜けるという、意思を持っており、ダイだけが使えるダイのために生まれた剣だった。

魔剣のライゼも、最初は、”ライゼの剣”として、ライゼのために生まれたのだという。


しかし、ライゼの怒りが焦りが絶望が、強さへの飢えが、剣を魔剣に変えた。

人が使う道具だったはずの剣が、人の思いを吸い込んで、人を使う魔剣になってしまった。

強さを求める意思が暴走し、目的を見失いながらも、かつての主の理想だけを追い続ける――。

ベルクスは多くの人間を犠牲にした。
だが同時に、彼ら自身もまた、人間の感情によって生み出された「犠牲」だったのかもしれない。

3.勇者という人間


この巻で最も印象的だったのは、アバンの“怒り”だった。

1ページ丸々のドアップ。
真っ黒な顔に、真っ黒な瞳。

これまでの彼は、常に冷静で理知的で、他者を思いやる理想的な勇者であり、自分の感情、特に負の感情をほとんど表に出さなかった。

しかしここで見せたのは、
怒り、悲しみ、憎しみ、そして明確な殺意――

とても「正義の勇者」とは思えない、ドス黒い表情。
こんな顔のアバンは初めてだ。

勇者とは本来、“役割”である。
だがその内側には、当然ひとりの人間がいる。

魔王討伐までが「勇者としての試練」だとすれば、
この先生編は「人間としての試練」なのかもしれない。

今までになく恐ろしい、怒りのアバン。
その姿は、勇者という役割の奥にあった「人間」を露わにしていた。
でも、私は、彼が好きになった。前よりも。


4.英雄たちの幸せはどこへ


・・・なーんのために生命すり減らして世界をまもったんだろうな
オレたち・・・・

魔王と戦っている時は英雄。
だが平和になると、簡単に切り捨てられる。

マトリフの言葉は、その現実を端的に示している。

バランもまた、人間のために戦いながら、人間によってすべてを奪われた。

そしてダイ自身もまた、人間から疑われ、地上を去る決意をする。

この世界では、「英雄であること」と「幸せであること」は一致しない。

人間を救ったはずの存在が、なぜここまで報われないのか。

ヒュンケルを救えなかったアバンが見る、ロカの墓。
それは、“勇者のその後”を象徴するようだ。
英雄であることと、人間として報われることは、必ずしも同じではないのかもしれない。


著者:三条陸 (著), 芝田優作 (著)
ASIN ‏ : ‎ B0F22LFZT9
出版社 ‏ : ‎ 集英社
発売日 ‏ : ‎ 2026/5/1
言語 ‏ : ‎ 日本語
ファイルサイズ ‏ : ‎ 135.4 MB

よかったらこちらもどうぞ〜













いいなと思ったら応援しよう!