4-3-② 墓参り2②
*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません。
おもいっきりネタバレしています!!!
1人の男が、通りから花京院家の墓地に入り、花京院典明の墓の前までやってきた。
白い帽子に白いコートを羽織っていた男は、コートの胸元から1枚の紙のようなものを取り出た。それは写真だった。
やや古ぼけたその写真には、砂漠を背景に、5人の男性と抱かれた1匹の犬が写っていた。
消去され修正された旅の記録の唯一の例外が、この写真だった。
「まさかテメーがこの杜王町に眠っていたとはな、花京院」
写真を持った男はひとり、墓に話しかけた。
空条承太郎が最初に気づいたのは、仗助の祖父・良平の葬儀だった。
参列したわけではないが、遠くから様子を見ていたその会場で、一際大きな花輪に書かれた名前を見つけた。
”花京院龍典”
花京院はそう多い苗字ではない。しかも1文字違い。
花京院の生家がこの杜王町にあり、彼がここに眠っていることを、SPW財団に確認した。
「これも運命ってやつじゃろうか」
話を聞いたジョセフはいった。
「花京院の両親に会うつもりはない。合わせる顔もない。
じゃが、わしらがこうしてなんとか過ごしていることを、彼に伝えたい。お前さんのおかげで年はとったが生きとるよ、と花京院に言いたいんじゃ」
だいぶヨボヨボになっとるからびっくりするかもしれんがな、と、少し笑ってジョセフは続けた。
先日やっと一連の事件が片付いて帰国が決まり、その前に墓参りに行くことになった。
ジョセフは大きな大きな花束を用意していたが、当日になって熱を出し、帰国も延期になった。
祖父に頼まれ、孫は先にやってきた。1人で。
「ジジイが隠し子なんか作ってやがったんだ。驚いたぜ、全く。
仗助っていうんだ。スタンド使いだったぜ、そいつも……
名前がなかったもんでな、そのスタンド。
クレイジー・ダイヤモンド、と俺が名付けた。
壊れたものをなんでも治せる。怪我も……いいスタンドだぜ」
ポツリ、ポツリと、言葉だけが静かな墓地に落ちていった。
男が持っていた写真を手でずらすと、その下に全く同じ写真がもう1枚現れた。
砂漠を背景に、5人の男性と抱かれた1匹の犬を写した同じ写真。
だがそのもう1枚は、濡れた後で皺になり掠れ、ところどころ古い血に汚れていた。
それは、花京院典明が制服の胸元に入れていた1枚だった。
彼は仲間との写真を胸に戦ったのだ。
最期の瞬間まで。
「スタープラチナ」
男が声かけると、横にスタンドが立ち現れた。
逆立つ黒髪に、青い逞しい肉体。
神話の英雄を思わせる、最強と謳われるスタンドである。
スタープラチナは、承太郎から写真を受け取ると、花京院典明の墓石を精密な動作で傷つけないようにそっと動かし、その中に写真を入れて、また石を塞いだ。
「てめーのぶんだ。返しておくぜ」
そうして、男は、墓をじっと見つめて佇んだ。
どのくらい時間が経っただろうか。
「日本を立つ前にジジイを連れてくる。またな」
そういうと、くるりと背を向けた歩き出した。
ゆっくりと墓地の入り口に向けて。
その時。
涼やかな風が男のコートを揺らした。
……ろ……う…………
…………じょ…………う……
呼ばれた気がした。
声が、聞こえた気がした。
振り向くと、そこに。
花京院典明の墓から、黄色い煙がふわりと浮かび上がった。
煙は徐々に人の形をとっていく。
緑色の服。
赤い前髪のひとふさ伸びた髪。
切れ長の瞳。
目を見開く男の前に、花京院典明が降り立った。
そして、微笑みかけた。
「承太郎」
空条承太郎は「やれやれだぜ」と呟いて、帽子の鍔をひき下げて被り直した。
潤んだ瞳を隠すように。
それから10年が過ぎた。
杜王町には、ひとりの男の子が生まれる。
男の子の名前は──東方典明。
