見出し画像

2-5-③ アクリドルの水晶③

*注意*
本作は『ジョジョの奇妙な冒険』および『クレイジー・Dの悪霊的失恋』をもとにした非公式の二次創作です。
原作および出版社とは一切関係ありません
おもいっきりネタバレしています!!!

目次  前書き&注意点  前の話(2-5-② アクリドルの水晶②)


「なあ……良かったのか? 帰ってきて」
仗助は背中合わせになった典明の方を、振り返って聞いた。
「何が?」
「その……親父さんやお袋さんに会わな……」
「いい」
まっすぐ前を見たままキッパリと典明は答えた。
「いいんだ」

仗助は、来た時と同じように、屋根の上を飛んで伝って移動していた。花京院典明のスタンド・ハイエロファントグリーンの能力で、触手を伸ばして縮ませて、屋根から屋根へ飛び移っていく。
行きとは異なりゆっくりと丁寧に移動しており、真っ暗になった空には明日満月になるという月がぽっかりと浮かんでいて、杜王町の町並みを、そして仗助たちの周りの緑の触手を、キラキラと明るく輝かせているのがよく見えた。


あの後、涼子の通報で花京院邸に到着した警官たちが、蔵にもやってきた。

実は生きていた鸚鵡を花京院涼子が保護していたと判明した。鸚鵡について話している途中倒れてしまった涼子をホル・ホースたちで茂庭医院に連れて行った。
その後ホル・ホースが花京院邸に涼子を送り、夕食をご馳走になって邸内を案内してもらっていたら、そこへ強盗が押し入った。
ホル・ホースは涼子を強盗から遠いところに避難させ、親しくなった仗助へ連絡した。駆けつけた仗助とボインゴで強盗を確保したが、宝石を他にいたらしい強盗の仲間に盗まれてしまったようだ。
仗助に連絡したのは、ホル・ホースは警察が信用できない国から来たから通報の発想がなかった……という話を警察にして、中野と新田を引き渡した。

その時典明は、警官たちから見えない屋根の上に移っていて、ハイエロファントグリーンの触手だけが家の中に下がっていたし、中野と新田には「一人息子くんのユーレイのこと警察に話します? いいっスよ~話しても。どうなっても知らないっスけどね~」と耳元で念を押しておいたから、典明の存在を知られることはないだろう。


客間に行くと、良平と篤が来ていた。まだ目の覚めない花京院夫妻は、念の為病院で精密検査を受けることになり、涼子は救急車に一緒に乗っていくことになった。すでに仗助が夫妻をスタンドで治療しているから異常なしで返されることはわかっていたが、そう説明するわけにもいかず、明日の集合場所と時間だけ決めて、ホル・ホースとボインゴたちともその場で解散になった。
仗助は、篤にまた小言を言われたが、良平はその横で頭をかいていた。酔っ払って寝ていたから叱りにくいようだった。
良平に現場検証に付き合うから先に帰るように言われ、タクシーを呼ぶよう言われたが、歩いて帰るといい、花京院家の門から出たところで、見慣れた緑の触手が体に巻きつき、屋根の上に持ち上げられた。

典明は仗助と一緒に東方の家に行くといった。

──父さん!母さん!
呼びかけて駆け寄った典明の声は、本当に両親を慕い心配している声だった。
母親の傷を見た時はショックを受けた顔をしていたし、触れられない両親を抱擁したスタンドの触手は、慈しみに満ちているように見えた。

花京院典明も両親を想っている。
今は、触れられない両親と再会する喜びよりも、彼らの危機に立ち向かい憂いを断つ方を選んだのだろう。
典明の親子関係について仗助が言えることは何もなかった。
あるとすれば。

──私は……私は知りたいの!典明お兄ちゃんが死んじゃった理由を!どうしてエジプトに行って死んでしまったのかをッ!
──あの日、私が道に迷わなければ、お兄ちゃんが探しに来なければ、DIOと会わなかったかもしれないのにッ!
──そうしたら、お兄ちゃんは……死なずにすんだかもしれない……今も……今も生きてたかもしれないのにッ!

──確かに僕は一時DIOに操られてしまっていた。許せなかった……僕を操ったDIOも……操られてしまった自分自身も。だから僕は奴を倒そうとエジプトに向かった。


「……なあ」
「何だ?」
「10年前、DIOを倒しにエジプトに行ったのか?」
「ああ、そうだ」
「先輩は、自分が道に迷わなければ、典明お兄ちゃんはDIOと会わなかったって言ってたぜ」
「それは違う」
典明は再びキッパリ答えた。
「むしろ逆だ。DIOに狙われていたのは、僕だ。涼子ちゃんは巻き込まれた側だ」だから、巻き込みたくなかった、と言うことなのだろうか。10年前も、今も。
「ふーん」

──お兄ちゃんをバカにしないで!

「仲良かった、のかよ。その、リョーコちゃんと。」
背中合わせになったまま月に向かって聞いた。
今度は典明の方が振り返った。
「うちは親戚付き合いが多かったから、叔父さん家族ともよく旅行に行ったりしていて、まあ親しくしていた方だとは思うが……僕の記憶は10年前だ。彼女はまだ、7歳の女の子だったよ。」
「大きくなったな、って?」
「大きく、なったな。……僕より年上になっていた」
なんとも言いにくい話題になり、仗助は口ごもった。

それを見た典明は、
「まだあげ染めし前髪の、ってやつか」
とポツリと言った。
「ああああ~ん、てめえ、おれの髪がなんだって」
といきなり空気を変わり拳を握り始めた仗助を見て、少し焦ったようになった典明は、
「違うッ!中学で習っただろうッ!国語の授業で教わらなかったのかッ」
と訂正した。
すると仗助はヘラっと笑って頭を掻いた。
「あー国語なー、福室ってセンコーが催眠術師でよお~、いっつも午後の授業だったからさあ~」
「福室先生?まだい……ご健在だったのか」
そこで、高校が一緒なら、中学も一緒だと仗助は思い出した。小学校だけ駅の向こうは学区が違うから別なのだ。
「あいつ、おれたちの卒業と一緒に定年で退官になったぜ。『私も君たちと一緒に卒業です』とか言って」
「……そうか」
懐かしがるような表情になった典明を見て、仗助は続けた。
「そういや、生活指導の枡江って知ってるか?あいつも一緒に退官になったぜ」
「枡江先生か……厳しい先生だったな」
「卒業式の日まであいつ木刀持ってきてたぜ、参っちまうよ、もう」
「たくさん指導されていそうだな、君は」
「おれ? いや、それがそーでもなかったんだよね。その辺はなんつーか、お仕事のお手伝いしたり?他の生徒を助けたり?でそこそこ上手くやってたんだよね、おれ」
「それはすごい」
軽く笑った典明を見て、仗助は提案した。

「なあ、うちのジジイが帰ってくるまでよお、下でゲームしねえ?」
典明が仗助の目を見つめた。
「卒業記念に買ってもらったやつで対戦モノなんだよな。早くやってみたくってよ。
多分この感じだとじいちゃん帰ってくるの朝方になるし、明日の集合は午後だろ? 
お袋いねえし、徹夜ゲームしようぜ。
新しいやつだから10年前はなかったやつになるけど、やり方教えるからさあ。
もちろんスタンド使っていいし」
仗助がまくし立てるのを見ていた典明は、少し目を開いて驚いたようだったが、
「それは、面白そうだな。ぜひ教えてもらおうか」
と笑った。

月明かりの下で夕日を浴びたように、頬は赤く染まっていた。


次の話(幕間2 老警官の通勤)  
目次  前の話(2-5-② アクリドルの水晶②)

いいなと思ったら応援しよう!