スタグフレーションの深化でインバウンド需要が崩壊? | 日本の構造的リスク
◾️日本円リスクの構造|為替・制度・地政学から読む資産防衛:
「日本円は安全」という前提を構造から見直すシリーズです。
本マガジンでは、為替・税制・地政学・国家制度という4つの軸から、日本円資産に集中することのリスクを整理します。
資産防衛における健全な判断基準(具体的な選択肢)の提示が目的です。
◾️はじめに
前回の記事「日本破綻とは何なのか?」の続編が本記事です。
スタグフレーション(インフレと景気後退の同時発生)が日本で、確定路線なら、日本経済を支えるインバウンド(訪日外国人消費)はどうなるのか?
日本政府はインバウンド消費を「成長戦略の柱」と位置づけてきましたし、インバウンド需要は日本経済にとって生命線の一つだと思います。
インバウンド頼みの経済構造を築いてきた地方都市もあります。
その経済構造が、円安・スタグフレーションの深化という現実にぶち当たった時に何が起きるのか?本記事では取り上げます。
「米ドル、日本円の崩壊も予想されています」というお客様からの質問を複数いただきましたので、円の構造的リスクを「インバウンド」という身近で切実な切り口から解説するのが本記事の目的です。
◾️第1節:スタグフレーションの最悪パターン
スタグフレーションとは、インフレ(物価上昇)と景気後退(経済縮小)が同時に進行する、いわゆる「悪いインフレ」と呼ばれる現象です。
経済成長、賃上げと同時に緩やかに物価も上昇する好景気時の「良いインフレ」とは全く違う状態です。
日本で起きているスタグフレーションは、円安・エネルギー高・食料品高という複数のコストショックの同時継続+積み重ねという最も典型的な発生経路による経済学的には打ち手なしの最悪パターンです。
「物の値段が高いのに給料が上がらない」という実感は、すでにこの入口に差し掛かっている状態を意味します。
▼日本のスタグフレーション【図解】:
-コストショック(単発):
原油価格の急騰、円安による輸入コスト上昇など
一時的な価格上昇 → 収束すれば元に戻る
-コストショック(積み上げ):
円安継続 × エネルギー高 × 食料品高 × 人件費上昇
↓
-企業が価格転嫁を繰り返す
↓
-消費者の実質購買力が継続的に低下する
↓
-需要が冷え込む
↓
-景気後退とインフレが同時進行
↓
-スタグフレーションの定着
▼「成長期→成熟期→衰退期→混乱期」という経済周期周期:
スタグフレーションは衰退期に起こりやすい現象とされています。
では、日本経済は今、どの段階にいるのか?
失われた30年、実質賃金の長期低下、少子高齢化による内需縮小など、一部を並べただけでも「成長期」「成熟期」と答える根拠を見つけるのは非常に難しいと言えるでしょう。
日本では今、現実問題としてスタグフレーションが発生・進行中です。
さらに、経済周期の必然的な帰結として起きている現象です。
◾️第2節:インバウンドが「大きな経済効果」を生んでいた構造
インバウンド需要が日本経済にもたらした効果は、コロナ禍からの急速な回復から直近で言うと2024年の消費額は約8兆円、2025年は大阪・関西万博の開催などを背景に消費額は約9.5兆円と過去最高を更新。

数字で見れば一目瞭然で、インバウンドは日本経済の大きな収入源です。
特に飲食・宿泊・交通・小売の分野でインバウンド需要は地方経済を支えてきました。
京都・金沢・沖縄・北海道のような主要観光地だけでなく、愛媛の道後温泉や神戸の有馬・城崎温泉といった地方都市も、インバウンド需要を前提もしくは想定した事業投資を行ってきました。
しかし、インバウンド需要による経済効果が大きいほど、インバウンド消滅によるダメージも大きくなる構造的な矛盾も存在します。
つまり、インバウンド需要が「副収入」ではなく「本業」になっている事業者にとっては死活問題になるのです。
-インバウンド依存度が高い地域・業種
↓
-インバウンド需要が消滅した時
↓
-代替する国内需要がない
↓
-即座に経営危機・倒産へ
◾️第3節:「安くて美味い日本」も成立しなくなる
訪日外国人が日本を選ぶ理由の一つは「クオリティが非常に高い」「しかも非常に安い」という価格競争力です。
特に、インバウンド需要で圧倒的に大きいのは「日本の食文化」です。

さらに、円安により、その魅力と競争力をさらに高めてきました。
しかし、スタグフレーションが1年後、3年ごと深化すれば「超安くて美味い」を成立させてきたコスト構造自体が崩壊します。
▼スタグフレーションによるコスト構造崩壊:
-食材・エネルギー・人件費などのコスト上昇
↓
-飲食店は値上げせざるを得ない
↓
-「安い日本」という前提が崩れる
↓
-外国人が感じる割安感が消える
↓
-インバウンドの来訪動機が弱まる
▼コストショックに耐えられない事業者の倒産:
-コスト増大 + 価格転嫁の限界
↓
-利益率の急低下
↓
-キャッシュフローの悪化
↓
-廃業・倒産
↓
-インバウンドが来ても「店がない」状況
そもそも、外国人のお客様が訪日しても、お目当ての飲食店や宿泊施設がなければ日本に来る意味がありません。
このように、スタグフレーションによって需要と供給の両面から、インバウンド消費の基盤そのものが崩壊します。
◾️第4節:インバウンド頼みの地方都市のリスク
インバウンド需要が消失すれば、まずは地方都市が最も深刻なダメージを受けます。
東京、大阪のような大都市圏には多様な産業基盤がありますが、観光依存度の高い地方都市になると、インバウンド需要を代替する経済基盤が少ないからです。
時代も、対象も違いますが、似た構造をご存知の方もいるはずです。
1980年代のバブル期に爆発的な人気を誇った山梨県・清里です。
都市部からの観光客という外部需要を前提に、ペンション・カフェ・リゾート施設が破竹の勢いで乱立しました。
しかし、バブル崩壊で外部需要が消滅して、過剰投資の回収は不能となり、廃墟とシャッター街だけが残りました。

-インバウンド需要の消失 | 都市部からの観光客(清里)
↓
-飲食・宿泊・小売の売上急減
↓
-雇用の喪失
↓
-地域経済の収縮
↓
-税収の減少 → 自治体財政の悪化
↓
-倒産・失業ラッシュ
さらに、清里とは決定的な構造的な違いがあります。
清里は「バブル崩壊」という急激なショックで需要が一気に消えました。
しかし、今回のスタグフレーションによる供給側の崩壊は、じわじわとサイレントキラーのように進行して、気づいたときには手遅れになる深刻でそこはかとない悪質さが存在するのです。
「バブル崩壊で一つのブームが終焉」という生温い話ではありません。
地域の経済インフラ自体が機能不全に陥るという話です。
コロナ禍でインバウンドが消えたとき、地方観光地が短期間でどうなったかは実証済みだと思います。
スタグフレーションによる経済構造を"死"に至らしめる「膵臓がんのような経済の重病」は、コロナ禍のような一時的なショックとは違い、政策の打ち手がなく回復しない可能性が大きい最悪の症状なのです。
◾️第5節:円安だしインバウンドは減りません?
「いやいや、円が弱いほど日本は外国人にとって割安でしょ?だから、インバウンド自体は減らないでしょ?」
確かにそうですが、致命的な間違いがあります。
・正しい: 円安は確かに日本の価格競争力を高める。外国人の購買力が相対的に上昇し、来訪動機は維持される。
・致命的な間違い: 外国人が来ても、そもそも店が潰れてたら意味なし。
-円安でインバウンド需要は維持
↓
-スタグフレーションで供給側が崩壊
↓
-飲食店・宿泊施設・小売が倒産
↓
-日本に来ても店がないという状態
テレビも無え、ラジオも無え、クルマもそれほど走ってねえ、ピアノも無え、バーも無え、お巡り毎日ぐーるぐる・・
こんな某有名な歌詞も笑い話では済まされなくなります。
需要があっても供給がなければ、消費は発生しませんので経済効果は期待できません。
スタグフレーションは、インバウンド需要の「受け皿」を破壊するのです。
◾️第6節:私たちは何をすべきか?|発想の転換
スタグフレーションは、日本国内の消費基盤をサイレントキラーのように侵食・破壊する「経済における最悪の病気」です。
スタグフレーションは、インバウンド需要の受け皿を破壊して、地方都市の経済インフラを機能不全(死)に至らしめます。
この、日本の社会構造に起きている政策では打ち手なしの最悪な状況に対して、私たちが取り得る選択肢とは何でしょうか?
インバウンドを「待つ」のではなく「攻め」へ、この発想の転換が必要だと著者は確信しています。
実際に、日本の商品・サービスは世界で圧倒的に高い評価を得ています。
東南アジア、南アジア、欧州、米国、中東など、どこの国へ行っても「メシ、モノ、サービスも日本のレベルには敵わない」と本気で思います。
実際に、ジョージア現地の顧客から日本のフランチャイズ加盟を打診されるほど、日本食・日本ブランドへの需要は現実のものとして存在しています。
円安は輸出ビジネスにとって追い風です。
日本国内で消費基盤が縮小するなら、海外市場に売る側に回ることが合理的ですし、著者は以下を実際にやっています。
ジョージアなど東欧や中央アジアへの輸出ビジネスです。
やっているからこそ分かりますが、超有効な選択肢です。
ジョージアは小国ながら経済成長が現在進行形で続く市場ですし、経済周期で言うところの「成長期」である根拠がいくつも揃っています。
ジョージアの"リアル"は、以下を参照してください。
日本製品・日本食・日本文化への需要も高まっています。
フランチャイズ・食品輸出などの可能性もこれから大きく拡大するのではないかと踏んでいます。
また、ジョージアは人口400万人にも満たない小国なのに、弊社パートナー企業もそうですが「流暢な日本語を話す有資格の若者」が多いのです。
つまり、ジョージアはじめ東欧や中央アジアは日本製品・日本食・日本文化を輸出するにはうってつけの市場だと著者は見ています。
輸出ビジネスを始めるにも、現地の金融インフラへのアクセスは参入の入口であり必須条件です。
現地の銀行口座を持つことは、資産の円依存からの分散と同時に、日本製品・日本食・日本文化を輸出する経済基盤になり得るのです。
日本は、スタグフレーションの深化は絶対に避けられません。
私たちには、発想の転換が必要だと思います。
「外国に対する偏見」「外国人への恐怖」を語っている場合ではなく、日本国内の経済基盤が構造的に縮小するなら活路は外にある
そんな「発想の転換」が、本記事をきっかけに起きることを願っています。
日本国内の金融経済基盤を前提としたビジネス・資産設計には、構造的なリスクがあるという認識が、次の一手に大きな影響を与えます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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