見出し画像

【毎週ショートショートnote】「タイムスリップ」「コップ」

ガラスの破片を拾いあげると、陽の光を受けて輝くそれにビジョンが映った。
「何でわかってくれないの!」
彼女はテーブルに乗っていたものを払い落とし、泣きながら家を出ていった。
お気に入りのコップも割れた。
思えばこれも彼女が誕生日プレゼントで僕にくれたものだ。嬉しくて嬉しくて何かを注ぐたびに彼女に想いを馳せていた。笑った日。怒った日。泣いた日。破片のひとつひとつに彼女との思い出が映し出される。
破片の中に飛び込むことができれば過去に戻ってやり直すことが出来るかもしれない。なんて。
それにこれを片付けてしまったら、彼女との思い出まで捨てることになりそうで。
そう思うと掃除の手が止まった。
破片のひとつを握ってソファーに横たわる。いつもより陽の光を眩しく感じるのは気のせいか。
一体どこで間違えてしまったのだろう。
破片を握った拳に力を入れると手と心が痛み出し、激しくなる鼓動とは裏腹に意識が遠のいていく。
やがて目が覚めるとその日は——。
(410字)


こちらに参加しています。

前回のお題「初めての」「鬼」

次回のお題「株式会社」「のおと」

以下、今回の本文作成に至るまでのアイディアめも。

アイディアの羅列
タイムスリップ:過去、現在、未来、時間遡行、
コップ:紙、ガラス、プラ、飲み物、糸電話、警察、

アイディアの組み合わせ
振られて戻ってやり直す:ガラスのコップ。割れた破片に映る記憶。後悔。やり直したい意思表示止まりでやり直せるかどうかは濁す。

いいなと思ったら応援しよう!

春乃はじめ 頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となり次の作品となる。