せりふ三題噺) 重大なコンプライアンス違反
はらとけいさんの企画に参加しました
せりふ三題噺
セリフ「気合い入れてこ!」
お題 ゼラニウム、団子、耳
小学校の担任になってから、まだ数年だが
夏休みの自由研究は驚く程に偏りが少ない。
去年は『LEDの電球は点けっぱなしだと
何日で切れるか』という研究があった。
夏休み当日から8/31まで
点けっぱなしにしていた結果
『切れなかった スゴイ』と、
まとめられていたが、そもそも箱に
40000時間と書いてあるわけだから
改めて調べる必要性はない。
ただ、親が煩いから満点を点けた。
他の児童から
『電気のような満点が点いた』と
言っていると、耳にしたが
電球の寿命と同じく
数年でその気持ちが消えないようにと願う。
去年は『普通の団子と、みたらし団子は
どちらが日持ちするのか?』という
研究をした子もいた。
結果、どちらも変わらないらしいが
『買った日に食べた方が美味しい』
と、まとめられていた。
翌日の団子は固くなるのが常識だから
そりゃ当然だろうと思ったが
やはり親が煩いから満点を点けた。
他の児童から
『団子のような満点が点いた』と
言っていると、耳にしたが
団子のように、すぐ固くならず
柔らかい発想を保ってほしいと願う。
今年は『ゼラニウムの寿命は?』
という研究が提出されている。
偏りは少ないと冒頭で述べたが
今の児童はやたらと寿命が気になるらしい。
勿論、満点をつける予定で
『ゼラニウムのような満点が点いた』と
言っていると耳にするのだろうが、
この毎回毎回
告げ口をしてくる児童の研究は
まさかの『コンプライアンスの必要性』である。
しかし、これこそ満点を点けておかないと
親も子も何を言ってくるか分からない。
ところが、後日
そのコンプライアンスの親から
名指しで電話があった。
『全員満点とはおかしくないですか?
コンプライアンス違反ですよ』と。
電球や団子やゼラニウムよりも
担任の寿命が早く尽きそうだ。
「気合い入れてこ!」
私はコンプライアンス親子の待つ
教室のドアの前で唾を飲み込んだ。
手には斧。
彼等の寿命を絶ち切って
私の担任としての寿命も終わる。
