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ケニア・日本発HAKKIが世界に提示する「真面目さを仕組みにする」金融モデルとは!?〜アフリカ・モビリティファイナンス戦国時代 Vol.2〜

アフリカでは今、モバイルマネーと配車アプリを起点に、金融そのものの形が大きく変わりつつあります。

銀行口座を持たない人々が、決済や送金だけでなく、融資や保険にまでアクセスできるようになり、フィンテックはすでに生活インフラの一部となっています。

前回のVol.1では、ナイジェリア発Mooveが、最初からグローバル展開を前提に設計されたモデルによって、アフリカから世界の都市インフラへと進化していった過程を整理しました。

今回取り上げるHAKKI GROUP(旧:HAKKI AFRICA)は、同じくカーファイナンスを提供するフィンテックスタートアップです。

ケニアでは、M-PESAや配車アプリの行動履歴をもとに独自の信用評価を行い、中古車マイクロファイナンスを提供してきました。

さらに、黒字運営とOPEX圧縮を着実に行いつつ、日本の金融機関等からの資金を活用している点も特徴です。


2. 「信用が残らない」市場で勝つ、HAKKI GROUP

Mooveが「都市インフラ」へと進化する道を選んだ一方で、HAKKI GROUPは、黒字運営と回収可能性を前提に事業を展開してきました。

その選択は、同じDrive to Own型モビリティ・ファイナンスでありながら、スケールや評価額の最大化を前提とせず、黒字運営と回収可能性を重視するという、異なる前提条件と運営方針を取ってきたことを意味します。

HAKKI GROUPの事業は、結果として、どこまで速く広げられるかではなく、ドライバーの生活に何が残るかという観点で設計されてきたことが分かります。

画像引用元:HAKKI GROUP Official Website

その背景には、アフリカのモビリティ市場において、長年放置されてきた構造的な課題があります。

アフリカのモビリティ市場における課題の1つは、「車を買えないこと」そのものではありません。より本質的なのは、どれだけ真面目に働いても、信用も資産も残らない構造が長年放置されてきた点にあります。

ケニアでは、多くのタクシードライバーが銀行融資に必要な書類や担保を用意できず、個人オーナーから車を借りて働く形が一般的でした。

月額にすると約3万9,000円、年では40〜50万円規模のレンタカー代を払い続けても、車は自分のものにならず、信用履歴も形成されません。

HAKKI GROUPが挑んできたのは、この「働いても信用が残らない市場構造」そのものです。

同社は、Drive to Own型のモビリティ・ファイナンスを通じて、信用・資産・生活改善が連動する仕組みを、現地オペレーションとして成立させてきました。

2.1 創業の原点|“誠実な努力”が評価されないことへの問題意識

HAKKI GROUP代表の小林嶺司氏は、学生時代にアフリカを縦断した経験から、「選択肢に恵まれた日本人と、可能性から断絶されている人々との差」を強く意識するようになったと語っています。

ケニアのタクシードライバーは、日々安定した収入を得ており、決して怠けているわけではありません。

しかし、その努力は既存の金融システムでは評価されず、次のステップにつながらない。この構造に対する違和感が、「人の人生を大きく変える金融をつくれるか」という問いにつながりました。

HAKKI GROUPが掲げる「誠実な努力が報われる社会」という言葉は、理念ではなく、事業設計そのものに組み込まれています。

記事引用元:「株式会社HAKKI AFRICA」は「株式会社HAKKI GROUP」へ商号変更 新経営体制の下、さらなる事業拡大を目指す

2.2 中核モデル|信用スコアリング×中古車ファイナンス×資産化

HAKKI GROUPの中核は、独自の信用スコアリングを用いた中古車マイクロファイナンスです。

ドライバーは、レンタカーを借りるのとほぼ同水準の月額支払いを続けることで、約3年半後に車両を自分の資産として保有できるようになります。

画像引用元:HAKKI GROUP Official Website

この仕組みによって、あるドライバーは可処分所得が月約4万4,592円から約8万4,840円へと増加しました。借入前の貯蓄が約3,850円だったのに対し、完済後には約65万円相当の車両資産を保有する状態になります。

単なる「ローン」ではなく、信用の形成と資産化を同時に実現する設計である点が、このモデルの本質です。

そしてHAKKI GROUPは、この仕組みを「理論」で終わらせることを選びませんでした。

2.3 データの源泉|M-PESA×配車アプリ行動履歴を信用に変える

HAKKI GROUPの信用スコアリングは、ケニアで広く使われているモバイルマネー"M-PESA"の利用履歴を含むデータを基盤としています。

日々の入出金や送金履歴からキャッシュフローの安定性を読み取り、さらに配車アプリ上の行動履歴を組み合わせることで、ドライバーの稼働実態を評価します。

またオペレーション関連システムを独自開発しており、返済管理にかかるコストを削減し、貸し倒れや盗難のリスクに備えています。

これは、Vol.1で扱ったMooveの「走行・収益データを信用に変える」という発想と同じ方向性にありますが、HAKKIの競争優位性は、まさに金融とオペレーションを一体で設計している点にあると考えられます。

2.4 Boltとの関係|フリートマネジメントで「回収可能性」を高める

2024年に締結されたBoltとのパートナーシップは、HAKKI GROUPの戦略を象徴しています。この提携は、単なるドライバー数の拡大にとどまらず、稼働率や収益性の向上につながるものです。

どのエリアで、どの時間帯に走ればより効率よく稼げるのか。フリートマネジメントを通じて運用効率を高めることで、ドライバーの収入が安定し、結果として返済の確度も高まります。

HAKKI GROUPは、配車プラットフォームを単なる顧客獲得チャネルではなく、回収モデルを成立させるための重要なパートナーとして位置づけています。

2.5 日本から資金を引く意味|低金利調達と黒字運営が生む競争力

アフリカ現地で車両ファイナンスの原資を調達することは、極めて難しいのが現実です。

金利水準が高く、通貨リスクも大きいため、長期・低利の資金を確保しづらい構造があります。

HAKKI GROUPの競争力を語るうえで欠かせないのが、日本の金融機関からの資金調達です。同社は平均年利約7.1%という低金利で貸出原資を調達しています。

この調達は、日本企業だから実現したわけではありません。日本の金融機関が重視するのは、「黒字であること」、もしくは「黒字化への明確な道筋」です。

HAKKI GROUPは創業期から回収を最優先し、黒字運営を継続してきました。さらに、機械化・自動化によって固定費を競合の約4分の1まで圧縮しています。

その結果として、2025年にはシリーズCで総額27.1億円を調達し、累計調達額は49.0億円に達したと発表されています。

画像引用元:HAKKI AFRICA、シリーズC 総額で27.1億円の資金調達を実施

プレスリリースでは、今回の資金調達を受けて、さらなる海外展開を進める方針が示されています。

ここに、黒字運営と低金利調達、そして競争力が一本の線でつながる構造があります。

2.6 多国展開|インド・南アフリカ、そして「GROUP」への商号変更

HAKKI GROUPは、ケニアで構築したモデルをもとに、インドと南アフリカへ展開しました。いずれの国でも、進出から数カ月で単月黒字化を達成しています。

2025年9月には、「株式会社HAKKI AFRICA」から「株式会社HAKKI GROUP」へと商号を変更しました。

これは、事業がアフリカ地域に留まらず、グローバルに展開していく段階に入ったことを示す動きです。同時に、IPO準備を見据えたガバナンス強化のため、新たな役員体制も発表されています。

さらに、タイでの立ち上げに向けた動きも進んでおり、HAKKI GROUPは「現地で回収が成立するモデル」を別の新興国市場へ横展開しようとしています。

2.7 インパクトの現在地|完済者・可処分所得・影響人口を数値化する

HAKKI GROUPは、自社の社会的インパクトを感覚や理念ではなく、数値として開示しています。累計貸出額は35.1億円に達し、すべての顧客が完済した場合、約25.4億円規模の資産形成に寄与すると見込まれています。

すでにローン完済者は63名に達しており、完済者においては平均で約3万4,750ケニアシリング分の可処分所得増加が確認されています。

さらに、ドライバー本人だけでなく、その家族を含めて生計に影響を受けた人数は、約4万6,908人にのぼります。

これらの数字が示しているのは、「人生を変える金融」という言葉が、定性的なスローガンではないという事実です。

重要なのは、これらのインパクトが、一般的なマイクロファイナンスとは異なる性質を持っている点にあります。

多くの小口融資は、返済が終われば関係も終わり、借り手の手元に資産や信用は残りません。結果として、同じ状況から再び借り入れを繰り返す構造に陥りがちです。

一方で、HAKKI GROUPのモデルでは、完済と同時に車両という明確な資産が手元に残ります。加えて、返済実績そのものが信用履歴となり、次の金融アクセスへと接続されていきます。

つまり同社が生み出しているインパクトとは、一時的に資金を供給することではなく、「完済後も残り続ける信用と資産」を積み上げることです。

これは、所得を一時的に増やす支援ではなく、人生の選択肢そのものを増やす金融だと言えるでしょう。

2.8 おわりに|HAKKIが示す“真面目さを仕組みにする”という戦い方

Mooveがグローバルスケールを前提にモデルを設計してきたのに対し、HAKKI GROUPは、現地で回収が成立するオペレーションを、段階的に積み上げてきました。

信用を測り、貸し、管理し、回収し、資産として残す。その一連のプロセスを、真面目に、愚直にやり切ること。この姿勢そのものを、事業の競争力に変えています。

同じDrive to Own型モビリティ・ファイナンスでも、どこに軸足を置くかで企業の姿は大きく変わる。HAKKI GROUPは、「真面目さを仕組みにする」という、もう一つの勝ち筋を示していると言えるでしょう。

Mooveは、Drive to Own型モビリティ・ファイナンスを、最初から「グローバル都市インフラ」として設計しました。一方でHAKKI GROUPは、スケールや評価額よりも先に、現地で信用と資産が確実に残るオペレーションを磨き上げる道を選びました。

同じ「働きながら車を所有する」という仕組みでありながら、どこに価値を置き、何を最優先するかによって、企業の姿はここまで変わります。

では、この二つの極のあいだに、第三の解は存在しないのでしょうか。

次回取り上げるのは、欧州発のモビリティ・フィンテックであるGoCabです。

GoCabは、グローバル展開を志向しながらも、資産回転率とユニットエコノミクスを徹底的に重視するという、また異なる設計思想を持っています。

アフリカ発、そして新興国市場を起点に、「Drive to Ownはどこまで世界の金融インフラとなり、どこまで事業になるのか」

シリーズ第3回では、GoCabのビジネスモデルを通じて、この戦国時代におけるもう一つの勝ち筋を読み解いていきます。

情報参照元


アクセルアフリカについて

『日本とアフリカ諸国を繋ぎ、社会課題解決型ビジネスを共創することで、アフリカの持続的成長に貢献する』をビジョンに日本企業のアフリカへのビジネス進出や現地での事業開発をサポートする日系コンサルティング会社です。

ケニアに事務所及びコミュニティハウスを持ち、アフリカの主要国をカバーしています。アフリカでの事業展開についてお悩みの方はぜひお気軽にご連絡ください。

Africa Quest.comでも連載中!


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