2-6 制約と受け入れ条件:完了を先に定義する
金曜の夕方、AIが作った下書きをコピーして、見出しを付け直し、箇条書きを文章に直し、トーンを整える。気づけば30分——「AIで時短」のはずが、仕上げ直しの時間は誰にも見えないまま積もっていきます。
これはあなたの使い方が下手なのではなく、AIの仕様を誰も教えてくれなかっただけです。
答えは、仕組みにあります。
◆この話が復習になる人:受け入れ条件(合格ライン)を毎回言語化して渡している方。その場合は2-7_検証可能な中間成果へ。

このレクチャーのゴール: 守る条件と合格基準を先に決め、AIの出力を採用できるか客観的に判定できる。
完了の条件を先に定義しない依頼は、AIの「それらしい完成形」で返ってきます。制約と受け入れ条件が、手直しを消します。
5問目は、何を守り、何を避けるかです。期限、文字数、使用禁止情報、変更してよい範囲、確認が必要な事項を指定します。「数値は資料から引用し、推測で補わない」「顧客名は匿名化する」「結論は変えず、表現だけ整える」のように、越えてはいけない境界を明確にします。
6問目は、何ができたら受け入れられるかです。まず利用場面に必要な内容を合格条件にします。「3案の費用と導入期間を同じ基準で比較できる」「読み手が次の担当と期限を確認できる」。そのうえで、文章、箇条書き、表、JSON、既存テンプレートなど、利用先に合う形式を指定します。
形式だけでは合格基準になりません。長さ、必須項目、並び順、根拠の示し方も必要に応じて加えます。「400字以内」「結論の後に根拠を示す」「各案に出典を付ける」のように、完成後に確認できる言葉で書きます。トーンは、2-2で決めた読み手と利用場面から導きます。
定型業務では、受け入れ条件をテンプレートに埋め込みます。見出し、必須項目、確認欄を固定すれば、毎回ゼロから条件を書かずに済みます。ただし、枠を埋めただけで採用しないよう、内容面の合格条件も併記します(この話は2-15と第5部で再登場します)。
最後に、依頼を実行する前に6問を一度通します。目的と利用場面、根拠、操作、制約、受け入れ条件がつながっていれば、出力後の修正理由も特定しやすくなります。全部を長文で書く必要はありません。判断が分かれる箇所だけを明示します。
ミニ実演
✗「稟議書を分かりやすく直して」→ どこまで変えていいか不明で、結論や金額まで書き換えられる。
✓「稟議書を整えて。守る条件:結論と金額は変えない/固有名詞は原文のまま。合格条件:A4×1枚、結論→根拠→費用の順、上長が3分で可否を判断できる」→ 越えてはいけない線と、完成の基準が両方はっきりする。
制約(守る線)と受け入れ条件(合格の線)は、書いた瞬間に「採用してよいか」を自分で判定できるようになります。

保存版・完了を先に定義する
制約は、守る条件・禁止事項・変更可能な範囲として書く
受け入れ条件は利用場面で必要な内容から決め、形式は利用先に合わせる
6問は長文化の型ではなく、判断が抜けている場所を探すチェック
着手前にこれを決めれば、冒頭の"金曜夕方の見えない30分"が消えます。
やってみよう: 定期的に作っている文書を1つ選び、「守る条件を3つ/合格条件を3つ」書いてからAIに依頼し、出力をその条件で判定しましょう。型はこちらです。
【守る条件】〔3つ〕 【合格条件】〔3つ〕。これを満たす形で〔依頼〕してください。最後に、各合格条件を満たしたか自己チェックして示してください。
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