自分の書いた教材を、AIに"買った読者のフリ"でレビューさせたら、痛いところを的確に突かれた話
AIに媚びられた経験はある。でも、AIに刺されたのは初めてだった。
いま自分は、AI活用の教材を6部構成・全84レクチャーで書き上げようとしている。リリース前の腕試しに、Gensparkへ7ファイル丸ごと投げつけて「属性の違う3人の購入者になりきってレビューしろ」と雑に命じた。返ってきたのは、A4で20枚を超える、キャラの立った3人分の"痛いレビュー"だった。
しかも、その3人が指摘してきた弱点は、全部、自分がうすうす気づいていて見ないふりをしていた箇所だった。
この記事で開示するもの
正直、書き手として痛かった。でも痛かったからこそ、共有する価値があると思ったので、この記事では出し惜しみせずに全部見せる:
自分がGensparkに投げた 雑なプロンプトの原文(本当に一文の殴り書き)
その雑プロンプトを、AIが どう要素分解して読み取ったか の事後解剖
出てきたレビューのハイライトと、刺された箇所
これから教材を出す人/プロンプトを鍛えたい人のための ハッシュタグ設計
「完成形のプロンプト」を見せる記事は世に溢れている。この記事は逆をやる。雑投げの原文と、それでも動いた理由を並べて見せる。
1. 実際に投げた"雑プロンプト"(原文ママ)
見せる。恥ずかしいけど見せる。原文はこれだ。
「とりあえずいろんなことにAIを使ってみて便利さは理解できているけど、もっと便利に使えるんだろうなと思っているビジネスパーソン&フリーランスが、各部それぞれ1000円〜2000円程度で購入して読んで、勉強になったところやよくわからなかったところなども含めた詳細なレビューをお願いします。属性の違う三人分」
以上。句読点の位置もあやしい、一文で殴り書いた依頼である。
しかもファイル7個添付。「これ全部読んでレビューして」という、いわゆる 雑プロンプトの見本市 みたいな投げ方をした。

にもかかわらず、返ってきたのは A4換算20枚超、キャラの立った3人分のレビュー だった。年齢、職業、AI歴、予算感、口調まで違う3人が、それぞれ全部で7冊分を読み込んで、章ごとに褒めと苦言を並べてきた。
指示していない情報が、勝手に埋まっていた。 なぜそうなったのかを、これから解剖する。
2. 雑プロンプトの"要素抽出"——AIは何を読み取ったのか
自分の教材でもさんざん書いていることだが、プロンプトとは 確率分布の誘導装置 である。良いプロンプトとは、AIの内部にぼんやり広がっている無数の候補群を、狙った方向へ絞り込むための"条件の束"だ。呪文ではなく、条件設定。
雑に見えた自分の一文も、AI側から見れば、ちゃんと5つの条件が詰め込まれていた。順番に開けていく。
要素①|役割(Role):「複数のペルソナを演じろ」
「ビジネスパーソン&フリーランス」「属性の違う三人分」
たった数語だが、この指定は非常に強い。「一人の万能レビュアー」ではなく 「複数の個別ペルソナを立てろ」 と命じている。しかも「属性を分散させろ」と。AIはここから、「会社員/管理職/個人事業主」という3軸を自動で立てにいった。
もし「レビューを書いて」だけだったら、たぶん一人の平均的な感想文が返ってきていた。「三人分」という数字と「属性の違う」という制約が、多視点化を強制した。
要素②|コンテキスト(背景):一番効いていたのはここ
「とりあえずいろんなことにAIを使ってみて便利さは理解できているけど、もっと便利に使えるんだろうなと思っている」
これが実は、5要素の中で一番効いた。購入者の"心理状態"を先に指定しているからだ。
✗「AIを全く知らない初心者」
✗「AIをバリバリ使いこなすエンジニア」
○「便利さは分かってる。けど頭打ち感がある」
この一文が、レビューの温度感を全部決めた。3人ともキャラは違うが、全員が"我流に頭打ちを感じている層"として書かれている。背景の一文が、出力の性格を規定する——これは自分の教材の第2部で丸ごと1章使って書いていることで、期せずして本人が実演することになった。
要素③|指示(動詞):3つ並べたのが効いた
「購入して読んで、詳細なレビューをお願いします」
「感想を書いて」でも「要約して」でもなく、「購入して」「読んで」「レビューして」。動詞が3つ並んでいる。それぞれ違う視点を呼び出す動詞だった。
「購入して」 → 価格の目線が入る
「読んで」 → 内容に踏み込む
「レビューして」 → 主観の表明を含む
さらにコンテキストで 「各部それぞれ1000円〜2000円程度で購入して」 と価格帯まで明示していた。これで「価格に対する満足度」という切り口が自動的に立ち上がる。実際、返ってきたレビューには全部の章に「価格満足度」の見出しが付いていた。書いていないのに立った項目である。
要素④|入力データ:ファイルで渡したのが正解だった
教材の第1部〜第6部(+ 第5部A/B)のMarkdownファイル7個を添付
これは動詞ではなく手段の話。添付ファイルという形で、"レビュー対象そのもの"を境界線つきで渡したのが効いた。
もしプロンプト本文の中に全文コピペしていたら、AIは「どこからどこまでが指示で、どこからが対象か」を区別するのに苦労していたはず。ファイル単位で分かれていたことで、AIは章立てや構造まで正確に把握できた。
教材の中でも「境界線のないプロンプト」の危険を書いているのだが、ここも本人が身をもって実証していた。
要素⑤|出力形式:ゆるいが両論を強制
「詳細なレビュー」「勉強になったところやよくわからなかったところなども含めた」
出力形式の指定は緩い。文字数もフォーマットも指定していない。それでも、たった一箇所だけ強い制約を置いていた。
それが 「勉強になった」と「よくわからなかった」の両方を含めろ、という指定である。
これで、褒めだけのレビューを書くルートは封じられた。AIはヨイショだけしていられなくなり、必ず苦言を混ぜにいく。結果、痛い指摘が3人分×7冊分、大量に返ってきた。
では、指定しなかった要素は?
正直に言うと、以下の項目は自分は一切指定していない:
文字数
各人の職業・年齢・性別
出力の構造(見出し/表/総評の有無)
「必読/推奨/後回し」のような優先度スコア
章ごとの評価テンプレート
これらは全部、AI側が勝手に補完した。しかも整合性を保ったまま補完した。
これは"良かった"のか"危なかった"のか、両面ある。
✅ 良かった点:仕上がりの完成度が高かった。人間の編集者が入ったような構造になっていた。
⚠️ 危なかった点:再現性が低い。同じプロンプトを明日投げても、同じ品質は出ない可能性が高い。
教訓:本番運用に載せるなら、この"抜けていた要素"を全部埋めるのが正解。今回は"雑投げでどこまで走るか"の実験だったから、あえて空欄で通した。1回勝負のアイデア出しなら雑投げでいい。定期運用に載せるなら、要素は明示的に固定する。この線引きが、プロンプト運用の分かれ道になる。
3. 返ってきたレビューのハイライト
3人はこう組まれてきた。
A:32歳・SaaSマーケター/会社員
我流ChatGPTユーザー。予算感は「全部買っても1万円弱ならOK」。関心は業務直結の実践知。B:54歳・製造業の営業部長
自分より部下に使わせたい。予算は「業務に効くなら全部買う」。関心は組織展開と部下育成。C:41歳・フリーランスのデザイナー兼ライター
一人でキャパを伸ばしたい。予算はコスパ最優先。関心は生産性と単価アップ。
年齢/職業/組織サイズ/AI歴/予算感まで、全部AIが自動で立ててきた。指示していないのに、である。

刺された指摘、共通で3つ
痛かった箇所は、3人が別々の視点から言っているのに、なぜか同じ弱点を指してきた。
「第3部と第5部Aは、"AI教材"を期待して単品購入すると、テーマのズレを感じる」
これは実は自分でも気づいていた。第3部(思考技術編)と第5部A(リーダーシップ編)は、AI教材というよりビジネス基礎教養に寄っている。「通し読み前提の教材」として売るべき、という指摘は的確すぎた。「第2部と第3部は一気読みには量が多い。日を分ける前提を明示すべき」
第2部が18本、第3部が28本。合計46本を"数日で読める"と暗黙に前提していた自分の甘さを、読者目線から突かれた。「具体ツールのスクショが少ないのは"陳腐化させない設計"として正しいが、初学者にはハードル」
これは信念と実用性のトレードオフを衝いてきた。「原理は腐らない」という自分の設計思想は正しいが、その代償を初学者が払わされている、という視点。
3人とも別の切り口から、同じ弱点を撃ってきた。これは1人のレビュアーでは発見できなかった構造的な弱点で、"多視点化させた効果"がここに出ていた。
刺さったポイント、共通で3つ
一方で、褒められたポイントも3人で一致した。
「原理 → 5要素 → 依頼技術」の伏線回収構造
第1部で書いた原理が、第2部でプロンプトの5要素として展開され、第5部Bで"人にもAIにも通じる依頼の技術"として着地する——この構造を3人全員が「他の教材にない」と評価してくれた。第4部の3層モデル(モデル×文脈供給×実行機構)
「新ツールが次々出る現状で、陳腐化しない評価軸」として全員が高評価。第5部Bの"AIエージェントを部署として設計する"
会社員/管理職/フリーランス、立場が違うのに全員が「新しい発想だった」と書いた。
痛いところは全員が痛がり、刺さるところは全員に刺さる。3人ペルソナで撃たせたことで、"個人の好み"を超えた構造的なフィードバックが得られた。これは一人称のレビューでは絶対に得られなかった情報である。




レビュー本文は、教材リリースと合わせてnoteのどこかで全文公開する予定。
4. この実験から抽出できる"雑プロンプトの5原則"
雑に投げたのに、なぜ動いたのか。逆に言えば、雑に投げるならこの5点だけ押さえておけば、たぶん動くという骨がある。
# 原則 今回の投げ方 1 心理状態のコンテキストを一文入れる 「〜と思っている人」 2 役割を複数にする 「属性の違う三人分」 3 動詞を並べる 「買って」「読んで」「レビューして」 4 数字を一つだけ入れる 「1000〜2000円」 5 良い面と悪い面の両論を強制する 「よかったところと、わからなかったところ」
全部、教材の第2部で書いていることだ。教材で書いている原理が、教材のレビューを作らせる時にもそのまま効いた——一番きれいな自己証明になった気がしている。
そして5つを見て気づいてほしい。呪文はどこにも入っていない。「ステップバイステップで」も「あなたはプロの〇〇です」もない。心理・役割・動詞・数字・両論の5点だけ。プロンプトエンジニアリングと呼ばれるものの正体は、たぶんこれくらいシンプルだ。
5. で、教材はいつ出すのか
もうすぐ出す。
具体的なスペックはこう:
全6部+第5部A/B(実質7分冊)
全84レクチャー
各部1,000〜2,000円想定
全部買っても約10,000円
タイトルの通り「テクニックの暗記本」ではなく 「原理から自分で応用できるようになる本」 を目指した。プロンプト集は3ヶ月で腐るけど、原理は腐らない、という賭けをしている。
Gensparkに指摘された3つの弱点は、リリース前に反映する予定:
通し読み前提であることを、購入導線側で明示する
各部の推奨読了ペースを目次に併記する
初学者向けの補助ガイド(ツール別セットアップ)を別途用意する
続報のnoteでは以下を一気に出す:
レビュー全文(A4換算20枚超)
目次全体(84レクチャー分)
発売日と購入導線
書き上がるまで、もう少しだけ待っていてください。痛いところは、痛いうちに直したい。
最後に:この記事自体、AIに書かせて自分が編集した。教材の中で書いた「AIは補助者である。実施してよいことと、してはならないことがある」という原則を、この記事の制作でもそのまま踏襲した。AIに書かせる、AIにレビューさせる、AIに整えさせる——でも、最後に何を出すかを決めるのは自分である。それが崩れた瞬間、たぶんこの教材の意味は消える。
書き上がったら、また告知します。
そういえば書きあがって、有料記事で販売しようと思ってたんだけど無料にしました。画像とか修正したいとこも多いし、そういった意味で保守していくのも重たいので(どんどんやりたいこと増えてく)、作りきったことを経験値に変えたいと思います。
よかったら見てやってください。
