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#2:『DXを”導入”しなかったから、うまくいった』── 小さなアナログガソリンスタンドの大きな変化への道筋

”「DXをやらなきゃ!!」と焦って、勧められたITツールを導入したけれど、結局誰も使いこなせなかった――。”
地域の経営者のみなさまとの会話で、また、各種セミナーの後の懇親会などで、これまで何度も耳にしてきた言葉です。

たしかに、DXはどの業界にとっても避けて通れないキーワードです。
でも、“DX導入”することが目的なんでしょうか?

うちのような、社員5名、平均年齢56歳、しかも地方の古いアナログなガソリンスタンドのような会社にとって、当時、「DXを導入する」なんてことは、現実的にも心理的にも、あまりにハードルが高すぎました。

だから僕たちは、DXを“導入しない”ことからスタートしたんです。

変えたのは、ツールではなく考え方
与えたのは、操作マニュアルではなく、責任と明確な評価
結果として、ITツールは「いつの間にか使われていた」ものであり、課題解決のために滑り込んできたものでした。
そして、「導入した覚えはない」が、企業風土が変わっていきました。

気づけば、残業は80%削減され、新しいアイデアが現場から自然に出てくるようになり、SNSを使って自分たちでお客さんに想いを届けようとする文化すら芽生えていました。

これは、DXを“しなかったからこそ”うまくいった、とも言える、小さな実験の記録と考察であり、僕が発信している、”ちょうど良いDX”という考え方です。


もしあなたがーー
DXを進めたいが、どこから手をつけていいかわからない
ツールの導入に失敗した経験がある
人が育つ組織を作りたいと悩んでいる
と感じているなら、きっと何かヒントになるはずです。

もしあなたがーー
❎ 最新のDXツールの比較や機能レビューを求めている
❎ 大企業向けの戦略的DXの話を期待している
❎ 専門用語を駆使したハイレベルなテックトークを求めている
という場合には、この記事では物足りないかもしれません。



■ DXって本当に必要?と感じた、ある違和感

「DXってなんか、結局“ITツール導入ゲーム”になってないか?」

これは、僕が地方の古いガソリンスタンドを引き継いだとき、地域の事業者さんと会話している中で感じた違和感でした。
もちろん、デジタル技術を使って効率化や変革を図るいわゆる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の意味も意義も十分理解しています。
僕自身、大手通信キャリアで5Gや無線技術の研究開発に携わっていたので、ハイテクには慣れているため、その辺の肌感覚はあったと思っています。

でも、ガソリンスタンドの現場はまるで違いました。
社員は全員で5名。平均年齢は56歳。ITリテラシーも低い。
しかも僕自身は、横浜に住みながら会社のある富山のこのガソリンスタンド拠点を“フルリモート経営”しようとしていたわけです。

そんな中で、「よし、DXだ!まずはツール導入からだ!」なんてやったところで、うまくいくはずがありません。

実際、最初は「LINEもメールもやらない」「手書きの方が早い」と言われることもありました。
当然です。長年やってきたやり方があるのです。
それを否定するのも何か違和感・・・
「DX」は、便利どころか“面倒で不可解なもの”に見えるだけだったと理解しています。

でも、何かを変えなければならないという直感だけは、強くありました。

“このままじゃいけない”という空気は、僕だけでなく、社内のどこかにも確かに漂っていたんです。


■ まず変えたのは「考え方」だった

だから僕は、「DXを導入しよう」とは言いませんでした。

代わりに始めたのは、「小さな責任を任せること」。
具体的には、社内の経営課題を“プロジェクト (PJ)”として社員に割り振り、そのリーダーを任命することを実行しました。

例えば、シフト管理の効率化や接客の満足度向上、在庫棚卸しの見直しなど。
どれも、ツールを入れればすぐに解決するようなものではありません。
でもその問題を、自分の頭で考え、改善しようとするプロセス自体にこそ意味がある。
「どうしたらもっと楽になるか?」という視点を社員一人ひとりが持ち始めた時、初めて“DXの芽”が生まれると思ったのです。

このプロジェクトには給与規定も結びつけました。
「手当」という形で責任を可視化することで、役割と成果がちゃんと評価される仕組みを整えたのです。

チャットツールを使い始めたのも、この延長線上でした。
まずはZoomのチャットから。慣れてきたらSlackへ。最終的にはGoogleチャットに落ち着きました。
無料で、無理なく。興味が湧いたら次のステップへ。
そんなふうに「使いたくなる環境」を整えることが、最大の“DX導入”だったのです。


■ 「うまくいった」の正体は、“ちょうど良いDX”だった

気がつけば、残業は80%削減され、SNSでの情報発信も社員たち自ら提案するようになり、僕が言わずともチラシよりもInstagramで告知することの効率の良さも理解し、自主的に発信活動が通常業務になりました。

導入した覚えのないDXが、社内で自然に根を張り始めていた。

外から見れば、たいしたことではないかもしれません。
でも、僕たちにとっては大きな進化でした。

“無理に導入したもの”ではないからこそ、自然に定着した。
“変わりたい”という内側からの想いが先にあったから、ツールが“後からついてきた”。

そう、DXは“目的”ではなく“結果”だったんです。


■ まとめ|「DXを導入しない」という選択肢

僕が伝えたいのは、「DXを導入しなくてもいい」ということではありません。むしろ、DXは必要です。絶対に。

でもそれは、“高価なツールを導入すること”ではない。
“変わる理由を一緒に考えること”です。DXを導入するという目的ではなく、以下の#1の記事にしたように、問題をチームで解決するプロセスとしてDXが入り込んでくるわけです。

社員が自分の頭で考え、自分の手で課題を解決する仕組みをつくること。
その結果として、「このツールがあると便利かも」と自然に手が伸びる。
それが、僕が体験した“現場で本当に効くDX”の姿でした。

DXを導入しなかったから、うまくいった。
というより、「DX導入しようとしなかった」から、自然に根づいた。
僕たちが愚直に行ってきた改善は、「DX推進」ではあるが、「DX導入」ではなかったと言えるかと思います。

そんな小さな変革の実験記録でした。

DX化がうまくいかないと悩んでいる経営者のみなさま。
「何を入れるか」より先に、「誰と、どうやって取り組むか」をみんなで考えてみると変化を起こせると思います。


この記事で述べている内容は、以下の拙著に詳細に記載しております。
この考え方と僕たちの実践してきた経験については、本書の中で、”ちょうど良いDX”と呼んで、現在もセミナーなどで発信したりしています。
インタビュー形式でさらっと読めますので、ぜひ、読んでみていただけるとうれしいです!


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