#343: 美容院は予約するのに、なぜガソリンスタンドは飛び込みなのか?全国1位の裏にある「僕たちのDXの考え方」。
みなさん、こんにちは。富山の平均年齢56歳の古いガソリンスタンドで、社員さんと共にDXや地域活性化に挑戦しているnobuです。
前回は、僕たちが運営する富山の店舗が、ネット予約サイト「timy」で全国1位(最優秀店舗賞)を獲得したという嬉しいご報告をさせていただきました。


この記事や、僕が毎月書いている「月刊ガソリンスタンド」の連載、また県内外で登壇させていただいているセミナーなどでは、DXやAIについてお話しする機会が多くなっています。
そうした発信を見てくださっている方々には、もしかすると「あのガソリンスタンドは、デジタルを強力な武器にして戦っている」というイメージが植え付けられているかもしれません。
しかし、全くそんなことはありません。
もし僕たちが「デジタルを武器にして戦っている」としたら、それは単なる「見せかけのDX」に過ぎないと僕は思っています。
今回は、全国1位という結果の裏側にある、僕たちの思考プロセスと「本当のDXの考え方」についてお話しします。

「チラシペタペタ」は正しくないからやめた
デジタル戦略と今言うと聞こえはいいですが、僕たちのスタートは、折り込みチラシと店頭にチラシをペタペタ貼るくらいのものでした。
しかし、ある時気づいたのです。これは色々な意味で「正しくない」と。 折込チラシはやたらとコストがかかる割に、本当に興味がある方には届きません。
店頭のチラシペタペタはとにかく見栄えも悪いし、情報過多の「提供者目線」でしかありませんでした。正しくないのです。
だから、コストもほとんどかからず、興味のある方に迅速に届けることができるSNSなどが適役だという結論に至りました。最初から「SNSはみんなやっているから、うちもやろう」という理由で始めたわけではありません。
現状を疑い、どうすればお客さまに正しく届くのか。そういう「思考と試行」を繰り返した結果、SNSを使い、データは共有ドライブに格納し、社内規定も刷新され、今の仕事のスタイルが確立されてきたのです。

お客さまも進化させる。「飛び込み」からの脱却
今回全国1位をいただいた予約サイト「timy」についても全く同じです。 僕はこの記事で「全国のSSもtimyやデジタルツールを導入すべきだ」と言いたいわけでは決してありません。
大切なのはツールを導入することではなく、「お客さまはそれで安心できるのか?」を徹底的に考え、思考し、試行することです。
そもそも、美容院に飛び込みで入る人は少ないですよね。
なぜこれが、ガソリンスタンドでできないのか?
当初、この話をすると「今は飛び込みのお客さまがほとんどだから、予約制にすると困る人が出る」という意見もありました。
でも、僕は全くそうは思いませんでした。当時は「飛び込み」という選択肢しかないのだから、飛び込みが多いのは当たり前なのです。でも美容院はそれでうまくいっているし、レストランも居酒屋もそうなっている。
予約で来店されることが基本となれば、賢いお客さまは絶対に「待たずに自分のペースで来店できる方が良い」と感じてくださるはずです。至っていないのは、お客さまではなく、僕たちです。
もちろん、いくら便利なネット予約の仕組みを作っても、ただ待っているだけでは勝手にお客さまは使ってくれません。「ここから予約できますよ」と認知していただき、迷わないように教えてあげる必要があります。
だからこそ、最初の章でお話しした「SNS」での発信が絶対に必要になるのです。 チラシをやめてSNSに切り替えたのは、この予約システムへのスムーズな道筋(リンク)を、お客さまのスマホへ直接届けるためでもあります。
ツールを単独で入れるのではなく、お客さまを快適に案内するために繋ぎ合わせる。これが僕たちの考え方です。
実際、今はtimyでのネット予約が基本形となっています。ネットの操作がわからない方も、電話で予約を入れてから来店されたり、一度店頭に来て予約枠を確保してから改めてご来店いただいたりしています。
そこに不満は生まれません。これで良いのです。提供する側が正しい環境と導線を整えれば、お客さまもまた、より快適なサービス利用へと進化していくのです。

誰一人、デジタルが得意な人はいない
そもそも「DXをやる」という言葉自体が、非常に曖昧だと僕は思っています。僕たちは「DXをやろう」と肩肘を張っているわけではありません。
ただ純粋に、お客さまが快適に弊社のサービスを使えるように変化してきているだけなのです。
よくITエンジニアを専属でヘッドハントしたり、SNSが得意な熱量高い主婦を一人入社させ、その人を中心にデジタル戦略を実行して・・・みたいなこともイメージするかもですが、そういうことも全くしていません。
増員することなく、
僕が代表になる前からいるメンバーが、僕が代表になって無茶苦茶なことを言い始めてやり始めたことを、そのメンバーが愚直にやってくれています。
実際、僕のガソリンスタンドのメンバーたちに「うちはDX推進が進んでいる会社だよね?」と聞いても、おそらくピンとこないはずです。
彼らは自分たちがデジタルツールに詳しくなったつもりもないはずです。
もっと言えば、僕のチームメンバーはすべからく、自分のことを「デジタルが苦手だ」と今でも思っています。誰一人として、デジタルが得意な人はいません。
しかし、高度なデジタル戦略を実行し、全国一位にまでなっています。
システムに振り回されることなく、目の前の「お客さまのための仕事」が確実にできています。
お客さまに安心し、喜んでもらうために、自然な形で各種デジタルツールが現場に滑り込んできただけだからです。
これこそが、僕が拙著にまとめた「ちょうど良いDX」が創り出す世界線そのものなのです。
▼拙著『ちょうど良いDX』はこちら
全国1位という結果を生み出したのは、見せかけのデジタル武装ではありません。「お客さまは安心できるのか?」という問いに向き合い続けた、僕たちの泥臭い思考と試行の積み重ねなのです。
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