【小説】メンズエステのめぐみさん⑮
15話 美咲と愛(1/2)
「渡辺さん、本当はこういうのやってないんだからね?」
「すみません。でも童貞には刺激が強すぎです、、、」
これがまさしく事故というものだろう。
「私のTシャツ汚した責任は重いから。」
「はい、なんでもします、、」
「じゃあ、その気になっている人の名前を教えてよ!」
笑いながら聞いてみた。
「美咲さん。今田美咲さんって言います。」
「え、、いまだみさき?」
「はい。」
「ちなみに背はどのくらい?」
「うーん。多分160センチに行かないくらいじゃないですかね?」
身長も当てはまる。でも、160センチくらいの人は多いし、今田も美咲もよくある名前だ。
「出身は?」
「え?もしかして知り合いですか?」
「いいから答えて!」
「確か東北って言ってた気がしたけど、どこだったっけ。。」
「宮城って言ってなかった?」
「あ!宮城って言ってました!仙台から3時間はかかる田舎って!」
美咲だ。多分私の知る美咲と一致している。
私の大学時代の唯一の親友であり、そして、めぐみを作った人。
渡辺は不思議そうな顔で私を見ている。
「渡辺さん、もしよかったら私と連絡先交換してくれない?」
「僕はいいんですが、、、」
渡辺の目線が壁に移る。
壁には「キャストのスカウトや連絡先の交換はしないでください。」とでかでかと書いてある。
「私も普段はしないんだけど、どうしてもなの。私も渡辺さんも他言しなきゃばれないから!」
めぐみは強引に渡辺の手を引き、半強制的に連絡先を交換した。
【めぐみさん、本当に美咲さんに聞くんですか?】
渡辺からメッセージが届く。
【うん。もしも、違う美咲だったら空気悪くしちゃうかも、、そしたらごめんなさい。】
【わかりました。】
めぐみとして接客した渡辺は、なんと、旧友の美咲のことを好きだったことが判明した。
渡辺には、美咲との関係性は大学時代の親友かもしれないとだけ伝えた。
そして、渡辺を経由して愛と会うことができないか。と聞いてもらうことにした。
渡辺にはとても失礼なことをしているとは承知の上だ。
でも、それ以上に私は、美咲と会わないといけないのだ。
【美咲さんに、愛さんを知っているか聞いたら、こんな感じで返信が来ました。】
渡辺は、メッセージとともに、やり取りをスクリーンショットしてくれた。
~~~~~~~~~
【懐かしい!愛ちゃんとずっと会ってないな~。渡辺さんはなんで愛ちゃん知ってるの?】
【愛さんとは、友人の友人で!最近一緒にご飯を食べる機会があったので!愛さんは美咲さんと会いたがってましたよ。】
【そっかー。何年会ってないんだろ。私も会いたいな^^】
~~~~~~~~~
渡辺は想像よりうまくやり取りをしてくれていた。
【めぐみさん、この後どう返信すればいいですか?】
【会う段取りを組めますか?夜ならいつでも空けられるようにしてますので。】
時刻は24時を回っていた。
【めぐみさん!OKもらいました!次の金曜日の19:00に恵比寿でご飯って話になりました!】
スマホの通知を見て、そのまま目を閉じた。
金曜日、定時になっても作業を続けている私に、課長が声をかけてくる。
「あれ、鈴木さん今日は早く帰らないの?」
帰り支度をしている課長が声をかけてくる。
いつもだったら既にめぐみの時間なので、まだPC作業を続けていることに驚いてるようだ。
「はい。今日はこの後友人と食事があるので、少し来週の準備をしてから帰ろうかと。」
「そうなんだ。普段は定時に帰っちゃうから誘わなかったけど、この後みんなのお食事会なんだ、鈴木さんもって思ったけど残念だな~」
少しひきつりながら笑う。
普段から私に対する課内の評価があまりよくないのは知っていた。
ほとんど定時で帰り、飲み会はもちろん、お昼も弁当だからランチ会にもほとんど参加しない。
ノリが悪くて、お高くとまっている人と裏で言われていることは知っていた。
でも、仕事は最低限やっているので直接何かを言われることもない。そして、私としてもこの扱いには慣れていた。
また、機会があったら参加させてくださいと課長に伝える。
どうせこないのにねと誰かが私に聞こえるように言った。
今日は、課の飲み会だったのか。
妙に気を使わせちゃったかなと少し反省する。
しかし、こればかりはしょうがない。切り替えて作業の続きを行う。
時刻を見ると、18:30になっていた。
よし、出るか。
PCなどを片づけ、タイムカードを打刻し、会社を後にした。
今日指定された、イタリアン居酒屋は、、隠れ家的な佇まい。
そして、恵比寿駅から徒歩3分という好立地なこともあり、一見さんは間違いなく気軽に入ることはできないだろう。
しかし、実はリーズナブルで、1人6,000円もあればお腹いっぱい食べられる。
この店は、私と美咲が初めて夜職で得たお金で来たお店でもあった。
10分前にお店の前に着くと、既に渡辺が店の前にいた。
「渡辺さん、今日はありがとう。」
「ん?あ、あ!めぐみさん!?私服だと一瞬誰かわかりませんでした。」
渡辺はしどろもどろしている。
「渡辺さん、めぐみとか言ったら友達のていじゃなくなるでしょ?
愛でも愛さんでも愛ちゃんでもいいから名前で呼んでもらわないと。」
「す、す、すみません。じゃあ、愛さんにします!なので、メンズエステに行ったことは言わないで下さい!」
「わかってるよ。それより先に入ってない?私寒くて」
わかりました!と緊張しながら渡辺はお店に入る。
「赤坂で19:00から3人で予約してます。」
渡辺は店員に話している。
赤坂美咲。彼女とついに会うのだ。
最後にあったのは、大学2年の12月。それから会ってないので、5年?6年?も会っていないのだ。
渡辺と私は、個室に案内された。店内は金曜日ということもあって、いつもより人が多いようだ。個室でも声が漏れている。
それから、待つこと3分、
「お待たせしました~。」
懐かしい感覚だ。誰にでもまるで太陽のような明るさで接するこの感じ。
「愛ちゃん、久しぶり。」
彼女はそう言うとにっこりと笑った。
16話に続く(7月15日18:00に公開予定です。)
