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「事故物件、浄化いたします。」第5話

☆5☆

 裕司が勤務するのはベルセレナマンションだけではない。近隣のマンション3棟と雑居ビル1棟の清掃も兼務している。
 裕司が配属される前に勤務していたベテラン管理員がもともと担当していた業務で、午前中はベルセレナ、午後は日によって違う現場に出向く。今までいたベテラン管理員は、ちょうど7月に家族の介護が必要になり、八月から介護休暇をとることになった。幸か不幸かタイミングが合ったため、裕司の異動がすんなりと決まったのだった。

 11月中旬のある日、裕司は昼食を済ませたあとで、ベルセレナマンションから徒歩5分のところにあるユニコーンマンションへ出向いた。エントランスの奥にある管理人室の鍵を開けようとしていたとき、背後の自動ドアが開いた。
(入居者の方には元気よく挨拶、挨拶!)
 裕司は振り返りながら、
「こんにちは!」
 と笑顔で声をかけた。挨拶を受けとめたのは女性二人。
「こんにちは…あっ」
 と返事が返ってきたが、最後の「あ」のイントネーションがおかしい。よく見ると、女性二人はベルセレナマンションの小沢親子だった。
(なんでこちらに?いや、別にいいけど……)
 裕司は内心、疑問が湧きつつも、
「いやぁ、奇遇ですね。私、こちらでも勤務させてもらっているんですよ。管理会社が同じつながりって、意外と多いんですよね」
 と、訊かれてもいないことをしゃべる。
 真理亜は、母親と裕司を交互に見ているが、まるで小犬が飼い主を見るような視線だ。何か言いたそうにしていながら、でも、母の様子を伺うような。
 母の百合亜は、裕司をしっかりと見た。いや、裕司の見るというよりは、裕司の後ろを見ているような視線だ。
「管理員さん、いつもお仕事ご苦労様です。冷えてきましたね、どうかお体に気を付けて」
 百合亜は、表情を崩さず軽くお辞儀をして、エントランスの奥へと進んで行った。
 その後を追うように真理亜も小走りでついて行く。通路の突き当りで思い出したように後ろを振り返ると、裕司に向かってちょこんと頭を下げた。
 一人残された裕司のもとを、先日よりも、また一段と冷えた秋風が吹き抜けていった。
 

第6話へ続く:https://note.com/brainy_clover264/n/nf1149a9f35eb

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