「事故物件、浄化いたします。」第6話
☆6☆
裕司が担当するマンションのある街から電車に乗って30分。駅に降り立つと、裕司は大きく深呼吸をした。以前は、家のある街の空気だと思うと安堵したものだが、今ではそんな安心感はない。
駅前の牛丼屋に入り、定食を頼む。やがて供されたご飯をかきこみ、みそ汁を飲んだところで心の奥から声がする。
(これを食べたいんじゃない)
そんな自分の無意識に湧いてきた声には聞こえないふりする。店を出た後はコンビニで発泡酒を一つ買い、自宅マンションへと歩いて帰った。
鍵を開け、扉をひらく。家の奥には窓があるが、すでに陽は落ち、室内の闇は濃い。
「ただいま」
小さな声で闇を呼ぶ。
慣れない。新しい仕事には慣れてきたけれど、この帰宅する瞬間だけは、慣れることができない。
玄関扉を後ろ手で閉めて、鍵をかける。そのまま、背中をドアにあずけると、崩れるように座り込む。
(まだ帰ってこないのかい)
胸ポケットに入れていたスマホを取り出し、待ち受け画面を明るくする。はじけるような笑顔でピースサインをしている女性が二人、映っている。
(さくら、みゆ)
スマホの画面のところどころが、円形に歪み始めた。ぽつ、ぽつ、と。裕司の流す涙が落ちていた。
(会いたいよ、恋しいよ……)
裕司はスマホを持った腕で膝を抱き、そこに顔を埋めた。
