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取調室に弁護士は入れない? 逮捕されていないと方針選択が難しい

こんにちは、弁護士の髙野です。

「警察から電話が来ました。明日、署に来て話をしてほしいと言われています。行かなければなりませんか。」警察から連絡を受けて法律相談の来る方はとても多いです。そしてこの段階の判断こそ非常に重要です。

身体拘束されていないなら、取調べは断れます

実際に対応に困るは、その時点では身体拘束されておらず、取調べに行くのかどうか自体の判断に迷う場面です。
多くの方は、警察から呼ばれたら行かなければならないと思っています。しかし、そうではありません。身体拘束されていない被疑者は、取調べのための出頭を拒むことができます。これは、刑事訴訟法が明確に定めています。

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

刑事訴訟法第198条第1項ただし書

逮捕も勾留もされていない段階では、取調べはあくまで任意です。警察から電話が来た、呼出状が届いた、来て話してほしいと言われた。そういうことがあっても、絶対に「行かなければならない」ことにはなりません。
実際には、義務がないのに、義務があると思って出向いてしまう人がとても多いです。

ではすべて拒否すれば問題解決…?

では任意なのだからすべて拒否すればいいのでしょうか。そう考えるのは少し物事を単純に考えすぎです。

刑事弁護の基本的な考え方としては、捜査段階に情報を与えることや、証拠を作らせることは悪手です。それを貫くなら、出頭を拒むことが最善。しかし、ここで出頭を拒否するということは、ある大きな不利益が生じるリスクを高めます。それは身体拘束、つまりは逮捕・勾留です。

勾留の要件は次のように定められています。被疑者段階の勾留でも、刑事訴訟法第207条第1項により、刑事訴訟法第60条第1項の要件が準用されます。

1 被告人が定まつた住居を有しないとき。
2 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

刑事訴訟法第60条第1項

取調べに出頭しないことが、2や3を推測させる、というように、捜査機関がこちらに不利に取り上げるリスクはどうしても生じてしまうのです。
この場面での判断は本当に難しいです。基準があるわけではありません。例えば、任意に出頭したとしても、事件の性質、重大性から、ほぼ確実にいずれ身体拘束を受けるような事例であれば、相談者(依頼者)の方の覚悟が決まっているのであれば、出頭を拒否することもあります。

しかし、多くの場合は「もしかしたら任意に出頭すれば逮捕勾留は免れる可能性がある事案」であり、多くの方は「身体拘束のリスクを受け入れて出頭を拒否する覚悟まで決まらない」でしょう。

出頭のうえ話をしても、供述調書の作成を拒むことは出来る

このような事情から、取調べには行く判断をしたとします。しかし、取調べに行き話をすることと、その内容を供述調書という証拠に残すことは、別の問題です(なお、取調べに行って黙秘する、という選択肢もなくはないですが、それであれば最初から出頭拒否のほうが良いと思っています。)。刑事訴訟法第198条第3項 は「被疑者の供述は、これを調書に録取することができる」と定め、同条第5項 は署名押印の拒絶を認めています。

出頭拒否と同じように、捜査機関の意に沿わないこととなるので、上記逮捕勾留のトリガーとならないとは言い切れません。
しかし、取調べには現に行っているわけですし、話もするわけなので、出頭拒否に比べれば、そのリスクは下がっていると言えそうです。一方、供述調書は一度作ってしまえば最後までその影響は残ります。
このようなメリットとデメリットを比べると、調書は作らないという判断をすることはとても多いです。

とても大きな問題が弁護士が取調室に入ることが出来ないこと

ここで、もう一つ大事な点があります。
現時点で、弁護士が取調べに一緒に入ることを認める定めがないということです。取調べの場に弁護士が同席し、その場で質問を止めたり、言い方を正したりする一般的な仕組みまでは、現行法上ないのです。
極々稀に、事前に頼めば同席を許してくれることもあるようですが、私自身はこれまで1回しかなく、一般的に同席が許されているということはありません。

しかし、上でお話したとおり、逮捕勾留されていない状態での取調べは任意です。したがって、常に取調室に拘束されるというわけではありません。もし取調べで困ったことがあれば、弁護士に相談したいことを告げて、取調室を出ればよいのです。取調室の外で待機している弁護士のところに行き、どのように話したら良いのか、調書に署名してよいのかを相談することは、法律上、まったく問題なく出来ることです。

弁護士が取調室に入れないなかで、同行当日にどのような支援ができるのかは、実際の同行経験をもとにこちらで詳しく説明しています。

しかし、現実には…

これまでにこのようにアドバイスをして、警察署で待機をしたり、いつでも電話を取ることの出来るようにして待っていたことは何度もあります。実際に外に出てきて相談して戻っていくことも何度もありました。

一方で、取調べを終えた後、依頼者から「弁護士に相談したいと行ったが出してもらえなかった。」「『こんなこと相談しなくてもわかるだろ。』『いつまで経っても終わらない。』と言われた。」と聞くことも少なくありません。このようなことがあれば、すぐに捜査機関に抗議をし、もしその際に供述調書が作成されてしまっているのであれば、後にその証拠能力を争えるように備えておくことになります。

FAQ

Q1. 警察から呼ばれたら、必ず行かなければならないのですか。

A. いいえ、必ずではありません。
逮捕や勾留がされていなければ、取調べへの出頭は任意です。刑事訴訟法第198条第1項ただし書により、出頭を拒むことも、出頭後に退去することもできます。

Q2. 取調べに行ったら、調書には署名しなければならないのですか。

A. いいえ、別の問題です。
取調べに行くことと、供述調書を作ることは同じではありません。調書は後まで影響が残るため、署名押印は慎重に判断すべきです。

Q3. 取調べの途中で弁護士に相談したくなったら、相談できますか。

A. 本来はできます。
身体拘束されていない任意の取調べであれば、弁護士に相談したいと伝えて取調室の外で相談することは可能です。もし出してもらえなかった場合は、その経過を弁護士に伝えることが重要です。

まとめ

警察から連絡が来た段階では、多くの方が「もう従うしかない」と思いがちです。しかし、実際にはその時点でいくつも別の選択肢があります。だからこそ、呼出しを受けた時点で、まずは今の立場と今後の見通しを整理し、どの対応が最も不利益を小さくできるのかを考えることが大切です。

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