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【書評】 プリニウス

よくテレビや雑誌などで
「死ぬまでに一度は見たい絶景」
みたいな企画があるが、もしも私が
死ぬまでに一度は読んでみたい本を
選ぶとしたら、それは
"アルマゲスト" か "博物誌" であろう。

どちらも前時代(それも相当前)の
遺物でしかないが、当時の世界で
少なからぬ影響を与えた本を読んで
その時代を生きた人々の
世界観に触れるというのは
なんともロマン溢れるものである。

マンガ「チ。-地球の運動について-」を
キッカケにアルマゲストに興味を持ち、
ゲーム「世界樹の迷宮Ⅲ」をキッカケに
博物誌に興味を持った。

元々 読書も歴史も好きではあるのだが、
趣味を通じて こうした新たな出会いが
生まれるのがなんとも面白い。


伝言ゲームと想像で成り立つ世界

博物誌を著したプリニウスが
生きたのは紀元1世紀。

かつてはインターネットはおろか
動画も写真もあるはずもなく、
記録と言えば テキストかイラストのみ。

とりわけ記録の大半は
文章によってのみ残されるわけで、
それらを読む者は その言葉から
説明される対象を
想像することしかできない。
さながら伝言ゲームである。

だからこそ時に現代人から見れば
おかしくて笑ってしまうような
想像をすることがあり、
それによって さらに世界の記録は
混沌としていく。

その様の一端を描いたのが
この作品といえる。

人間だからこそ描き起こせるもの

歴史好きとしては本を読む度に
当時の世界に思いを馳せるのが
楽しみであるわけが、やはり文章から
想起されるものには限界がある。

そこをいくとイラストというのは
視覚的にイメージが掴みやすく、
さらにマンガという
ストーリー性が加わることで
そこに描かれる者たちが
より生き生きと見えてくるものである。

最近は生成AIによって動画も
簡単に作れるようになってきたが、
こうした過去の時代の空気感を描くには
まだまだ人間に一日の長があると思われる。

それはAIの学習材料となる
写真やイメージが、
近現代ほどにインターネット上に
溢れていないためであろう。

史料を元に紐解きイメージを起こす
マンガ家やイラストレーターの
先生方には、この作品を読んだだけでも
畏敬の念を禁じ得ない。

もうひとりの主人公

プリニウスと並んで描かれているのが
同時代を生きた皇帝ネロである。
教科書や授業では "暴君" と
習った人も多いだろうが、
この作品の中では通説とは異なった
独特の魅力を放って描かれている。

記録に残っていない部分は
事実を確かめようがないが、
分からないからこそ
逆に想像を楽しむ余地がある。

本作は記録のない部分については
作者の解釈や想像によるところも多いが、
同時掲載されている
ふたりの作者の対談を読むことで
何が史実でどこが創作なのかを
掴むことが易しくなっている。

暴君と呼ばれた皇帝が何を考え、
どのように生きたのか。

ローマ皇帝を描いた
マンガ作品というものは
学習ものを除けば
そう多くないものだから、
より生き生きとしながら同時に苦悩する
ネロの姿を見ることができるのだ。

その男、好奇心の塊につき

それにしても
プリニウスの好奇心の強さよ。

ウェスウィウス山の噴火に襲われた
街を救うために向かった彼は、
最期の最期で地球の壮大さを
身をもって思い知りながら死んでいく。

世界中を旅して
見聞を広めてきたからこそ、
そのどんな動植物や学問をも一蹴する
噴火というエネルギーの大きさを
理解できたのであろう。

私はプリニウスほどの偉大さも知識量も
持ち合わせてはいないが、
彼の最期の言葉には
共感と共に胸を打たれるものがある。

知を深めることを楽しみ
生き甲斐とした人生は、
きっと幸せに満ちていたに違いない。

私も彼のような遥かなる
知的探究の旅に出てみたいものである。
といっても、私は本を通じて
既にその願望は
半分叶えているようなものであるが。

こんな人にオススメ!
・古代ローマの空気感を感じたい人
・プリニウスや博物誌に興味がある人
・古代ローマ時代の伝承や世界観を覗いてみたい人

こんな人には合わないかも…
・テルマエ・ロマエが感性に合わなかった人

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お読みいただき、
ありがとうございました。


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